数日前から、あいつにはほとほとイラついていた。俺を避けているのは明らかで、まるで見せ付けるように門田にくっつきやがる。約束の日曜日には当然のように家に来ない、電話をしても“電源が入っていない”のアナウンスが流れるだけ、家に行っても奴の双子の妹に「イザ兄ならどっか行ったよー」と言われ、それだけでも俺の怒りはピークに達していた。逆に、物にあたって破壊しなかったのを褒めて欲しいくらいだ。
 だがそこまではまだよかった。ギリギリ理性を保って、破壊衝動を抑えることが出来ていた。けれど奴が池袋で他の男と話しているのを見た時、

俺は初めて自分の中でプツリと、何かが切れる音を聞いた。







* * *






「いっ、た…、痛い、シズちゃ、……ぅあっ!」
「うるせぇ」


痛い痛いと抵抗する臨也を無理矢理家に連れ込んで、自室のベットへ放り投げる。ベットがクッションになったはずだから臨也の言う「痛い」とは俺が引っ張った腕の事なのだろう。どちらにしても知ったことではないが。
臨也を放り投げた後、自分も臨也に覆い被さるようにベットに乗った。ぎょっと目を見開いた臨也の、頬の横に手をつくと二人分の重さにベットがギシリと軋んだ。


「ちょっとシズちゃ、待っ……んむ、」
「うるせぇ」


今さらこいつの制止なんて聞いてやる気は無い。余計なことしか吐かない口を、強引に塞いで犯した。必死に逃げようとする舌を絡め取り、息をする暇を与えないくらい深く濃く口内を陵辱する。最初は手足をばたつかせていた臨也だったが、酸素が足りなくなるにつれてその抵抗も赤子程度の物になっていった。このままだと、さすがに死ぬ。それを制止させるほどの理性はまだ残っていたらしい、最後にねっとりと唇を舐めた後口を解放した。途端、臨也は盛大に咳き込みだす。


「ひゅっぁ、げほッ! げほ、げほッ…っは、は……ぁ、し、ちゃ、ちあ…ちあう、違う、から」


何が。何が違うと言うのだろうこいつは。俺はまだ、何も言ってないのに。
あの日から臨也が俺を避けるようになった時、ほんの少しでも寂しいと思ったことも、門田に嫉妬したことも、俺がこうして無理矢理臨也を押し倒すに至った原因も全部言葉になんかしていない。していない、のに……臨也はまるで全て分かっているかのように「違うから」と言った。


「…嫌いに、なったのかよ」
「違う。違うよ……俺が好きなのはシズちゃんだけ、だから」
「っ、だったらなんで…!」
「最初は、俺の馬鹿みたいな嫉妬だった。…シズちゃんモテるからさ、女子が煩く騒ぐのが嫌だった。シズちゃんは俺のなのにって。でも…だんだん意地になって、どんどん可愛くなくなっていった」


ごめんね、臨也は言った。君がそんなに追い込まれているなんて知らなかった。そんな顔をさせたくなんてなかった……ごめん、なさい。何度も謝って、臨也はゆっくりと抱きつくように腕を回した。
久しぶりの温もりに思わず零れそうになったものをぐっと堪え、誤魔化すように臨也の肩に顔を埋める。懐かしい匂いだと思った。

それからどれくらい経ったのか。もうずっとこのままでいいと思い始めた頃、臨也はあやすように俺の頭を撫でながら耳元に口を寄せ、言った。


「…シズちゃん」
「…………ん」
「スる、の?」
「臨也が嫌なら、しない」
「はは、愛されてるなぁ」
「たりめぇだ」
「…嫌じゃないよ。シズちゃんだから嫌なわけ、ない。でも、その……久しぶりだから………優しく、してね?」


心臓が、きゅうっと縮む感覚。その言葉に答えるように、今度はできるだけ優しく甘い口づけを臨也の唇に落としてやった。







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次でラスト&R18になります!


(20111108)
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