*臨(→)(←)静←サイケ
 *サイケがドッペルゲンガ
  ーな話









 この世界には、自分と同じ
 容姿の人間が3人いるらし
 い。それらは自分とほぼ同
 じ生活を送り、自分とほぼ
 同じ性格で自分とほぼ同じ
 思考を持つ。ドッペルゲン
 ガーという名で知られるそ
 いつらは、会ったが最後、
 自分と成り代わってしまう
 のだとか。

 だが、こんな世迷言を信じ
 る者は少ない。こう言って
 しまっては何だが、俺だっ
 て信じていなかった。

 “そいつ”に会うまでは




 「やあ臨也くん、はじめま
 して」




 自分と全く同じ容姿に同じ
 声。ただ違うのは身を包ん
 でいる服が俺とは正反対の
 真っ白なコートだというこ
 とと、目を引く蛍光ピンク
 のヘッドフォン。同じ容姿
 と言えどもにっこりと邪気
 無く笑うそいつは、俺と似
 ていても全然違う雰囲気を
 醸し出していた。


 「……誰だよ、お前」
 「だれ? それは野暮な質
 問だよ、臨也くん。おれは
 君じゃないか」


 名前が同じだと分からなく
 なっちゃうから、おれのこ
 とはサイケって呼んでよ。
 そう言ってそいつ――サイ
 ケは、にっこりと笑った。

 首無しライダーに人を乗っ
 取る妖刀、最たる物はドッ
 ペルゲンガーか。理解はし
 がたいが、この状況を前に
 しては認めざるを得ないだ
 ろう。


 「で、そのサイケが俺に何
 の用かな? まさかただ挨
 拶しに来たってわけじゃな
 いんだろう?」
 「もちろんだよ。あのね、
 おれはね、臨也くんの代わ
 りになってあげようかと思
 って来たんだ!」
 「………代わ、り?」


 未だにこにこと笑みを崩さ
 ないサイケに、初めてゾク
 リと鳥肌が立った。まるで
 恐怖心のようなそれ。あの
 金髪の化物にすら抱いたこ
 とのない感情が、理解出来
 ない圧力となって全身にの
 しかかる。

 まずい、逃げろ、早く、こ
 いつから
 脳が発する警告通りにジリ
 ジリと後ろに下がる俺に、
 サイケはもう一度、今度は
 決定的な一言を言い放った
 。


 「臨也くん―――…静雄く
 んのこと好きなんでしょ?
 」
 「――――……ッ…!?」


 にこにこ、にこにこ。その
 表情は否定を許さない。例
 え俺が違うと言おうと、サ
 イケはそれを認めはしない
 だろう。最初にこいつが言
 ったようにサイケが俺なら
 、俺の感情もつまりはこい
 つのもの…ということなの
 かもしれない。だがもしそ
 うだとすると、サイケが言
 っていた“俺の代わり”と
 いうのは……。


 「そうだよ。静雄くんに告
 白も出来ない、喧嘩ばっか
 りでなぁんの進展もない臨
 也くんの代わりに、おれが
 静雄くんに告白するの!
 おれが臨也くんと代わって
 あげる! だからね、臨也
 くんは――…」


 “もう、いらないんだよ”

 その言葉を聞くよりも先に
 、俺は走った。どこに、な
 んて分からない。とにかく
 あいつから離れなければ。
 殺されるなんて話じゃない
 、文字通り“消される”俺
 という存在がなくなる。


 「はぁ…っ、はっ、どうな
 ってんだよ……!」


 どれだけ距離を離そうと拭
 えない不安感、焦り。どん
 なに走っても後ろを振り向
 けばすぐ傍に蛍光ピンクが
 映るような気がした。


 「臨也くーん、どこ行くの
 ?」
 「っ……!」


 ほらみろ。俺自身の荒い息
 に混じって、俺と全く同じ
 声が囁きかける。声に振り
 返れば、案の定すぐ近くに
 ある不気味さを増した顔。
 “そいつ”は、もう手を伸
 ばせば俺に触れられる距離
 にいた。


 「臨也くん、つーかまーえ
 たー!」


 そしてついに、その手が俺
 に――…




 「――――…臨也ァ! 手
 前また性懲りもなく池袋に
 ……あ゛? 何してんだよ
 」




 その時

 聞き慣れてしまった怒声が
 そこに響き渡った。直後に
 覗いた金髪に、一気に安堵
 が込み上げる。気づけばそ
 こまで伸びていたサイケの
 手もサイケもいなくなって
 、まるで最初から何もなか
 ったかのように、そこには
 おれ一人だった。


 「っ、シズ、」
 「ぁあ? なんだ手前、な
 んて顔してやがる」


 余程情けない顔をしていた
 のか、向こうも戦意喪失し
 たようで煙草に火をつける
 。見慣れたはずのその姿が
 今はありえないくらいにか
 っこよく見えて、それまで
 のこともあってか躊躇いも
 なくその胸に飛び込んだ。
 ずっとしたくてたまらなか
 ったことが出来た……やっ
 と。今なら言える気がする
 よ、ずっとずっと言いたか
 ったことを、君に。


 「おっおい! 手前何しや
 がる、はな……」
 「好きだよ」
 「なっ……!」
 「好き、ずっと君が好きだ
 った」


 ――…好きだよ。ほらね、
 できた。
 そうやって暫く待っている
 と、ふわりと肩に手が乗る
 感覚。それが彼の答えであ
 ることだなんて一目瞭然だ
 った。

 ほら、出来たよ――…“臨
 也くん”


 「おれ、静雄く…シズちゃ
 んのこと、だぁい好き!」


 そう無邪気に言い放って、
 折原臨也だった人物はにっ
 こりと笑った。









 ――――――――――――


 どこのホラーだよ(笑)

 途中から書いてる本人もわ
 け分かんなくなっちゃいま
 したてへぺろ☆




 (20110417)
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