※波臨です。










 「―――…くしゅん!」


 事務所と言うには広すぎて
 、自宅と言うにも広すぎる
 、そんな他よりも少し大き
 い室内に一つのくしゃみが
 響き渡る。一度きりかと思
 われたそのくしゃみは、し
 かし当人の予想に反して2
 度3度と口をつく。くしゅ
 んくしゅんと鳴り止まない
 騒音に痺れを切らしたのか
 、彼の秘書として働く女性
 ――矢霧波江は持っていた
 書類を乱暴とも取れる動作
 でデスクに置いた。


 「煩いわ」
 「仕方ないじゃないか、こ
 の時期はどうしても――…
 くしゅっ」
 「この時期?」
 「杉、が、っくしゅん、ふ
 ぇっくしゅ!」


 家主――折原臨也の途切れ
 途切れの言葉で理解したの
 か、波江は「ああ、花粉症
 ね」と言い捨てて、そのま
 ま仕事に戻ってしまう。優
 秀すぎるが故の波江の行動
 に、波江さんは冷たいなぁ
 と臨也は鼻声で返した。


 「上司の体調なんて私には
 関係ないもの」
 「上司、なんだから…、も
 っと心ぱ……くしゅん」
 「耳障りね」
 「波江ひど…へっくち!」


 いくら空調完備の整ってい
 る臨也のマンションといっ
 ても、全ての花粉を一瞬に
 無害のものとしてしまうわ
 けではない。特に今年の花
 粉は例年よりも勢いが強く
 、そのことが臨也を更に悩
 ませていた。


 「波、江ぇ…、てぃっしゅ
 とっ、て」
 「……まったく、随分と情
 けないのね。それでも無敵
 で素敵な情報屋さんなのか
 しら?」


 くしゃみのし過ぎか、はた
 またそれも花粉症のせいな
 のか、赤い瞳を潤ませなが
 ら舌足らずに言う臨也に呆
 れながらも、波江はティッ
 シュを置いてやる。臨也は
 小さく礼を言ってからずび
 び、と鼻を噛んだ。


 「あ゛ー……ありがと」
 「顔、赤いわね。熱もある
 んじゃないの?」
 「ん? ああ、確かに頭ぼ
 ーっとするかも。でも多分
 くしゃみのし過ぎだから、
 大丈夫だよ」


 そう言ってへにゃりと笑っ
 た臨也に、波江は勢いよく
 顔を逸らした。波江さん?
 と未だ舌足らずに問うてく
 る臨也は気づかないが、そ
 の顔は赤く瞳も潤んで、と
 ても可愛く、それでいて扇
 情的でもあった。


 「えーっと……波江?」
 「…貴方、早くそれ治しな
 さいよ」
 「ごめんって、そんなに煩
 かったかな?」


 ごめんね。もう一度だけ謝
 った臨也の言葉を遮るかの
 ように、波江は言葉を畳み
 掛ける。


 「耳障りなの」
 「それは分かって」
 「仕事にも支障をきたすわ
 」
 「っ、だからごめんって言
 っ…――」
 「早く、治して」


 貴方、顔と声だけはいいん
 だから、鼻声なんて勿体な
 いわよ。
 そう最後に小さく付け足し
 て、波江は今度こそ仕事に
 戻る。言われた臨也は暫く
 ぽかんと波江を見つめた後
 、くしゃみとは別の理由で
 一気に顔を朱に染めた。

 反則だ……っ。呟いて顔を
 伏せてしまった臨也に、主
 犯者は密かに、確信的な笑
 みを浮かべた。







 花粉症

 (臨也)
 (……なに)
 (顔、赤いわよ)
 (――…っ! 花粉症のせい
 !)







 ――――――――――――


 花粉症なのは私の方です(
 笑)
 生まれて初めて花粉症にな
 りましたよちくせう!

 初の波臨でした。書いてて
 すごく楽しかったです^^
 !




 (20110414)
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