!裏注意












 しくじった。それはもう、
 過去に類を見ない程に。


 「ぁっ……、はッ、くそ、
 」


 楽な仕事だと油断していた
 のかもしれない。こちらの
 情報を提供し、後は取引相
 手から情報に見合った金を
 請求して終わりのはずの、
 俺にしてみればやりなれた
 行為。
 途中まではスムーズに進ん
 だ。取引先である向こうの
 事務所まで出向き、軽い挨
 拶を交わしてから本題に入
 る。順調な、いつも通りの
 何の失敗もない取引……の
 はず、だった。

 ただひとつ失敗があったと
 すれば、それは何の警戒も
 せず、出されたコーヒーに
 口を付けたこと。


 「はぁ…っ、ぁ…っく、」


 そしておそらくコーヒーに
 含まれていただろう法外の
 物としか思えない薬のお陰
 で、俺は今こうして身体を
 疼かせる熱に耐えていると
 いうわけだ。

 勘違いしないでほしいのは
 俺が失敗したのは無防備に
 コーヒーを飲んでしまった
 ことだけであって、取引相
 手に犯されるというような
 自体には陥っていないとい
 うこと。身体の異変に気づ
 いた瞬間、そして取引相手
 の目の色が変わった瞬間に
 向こうには少しばかり怪我
 を負ってもらった。逃げる
 為だ、仕方がない。自業自
 得である。それに俺には一
 応、平和島静雄という恋人
 がいるのだから。仕方がな
 い。


 「ぃあっ、ふっ……ン、あ
 っああ!」


 だからこんな薄汚い路地裏
 で自身を慰めるという行為
 も、仕方のないことなので
 ある。ここまで逃げてきた
 だけでも上出来、我慢した
 俺を褒めてほしい。

 普段路地裏に響くことのな
 い水音は紛れもなく俺の手
 から発せられるもので、上
 下に扱く度に水音は大きく
 卑猥なものになっていく。
 最初は堪えていた声も今で
 は快楽を拾う度に高く上が
 った。


 「あっ、あ、…め、もぅ、
 イっ…ぁああア!!」


 一番気持ちいい先端の窪み
 を指で抉った瞬間、耐え切
 れずに欲を吐き出した。水
 から離れた魚のようにビク
 ンビクンと素直に打ち震え
 る身体に、内心で舌を打っ
 た。


 「く、そ…はぁっ……ぁ?
 なん、で、イった、のに」


 やっと終わった…。そう安
 堵したのもつかの間、身体
 の内を燻る熱は引いてくれ
 ず、寧ろ先よりも身体を疼
 かせる。足りない。こんな
 刺激じゃ全然足りない。も
 っと奥が熱くて疼いて仕方
 がない。


 「ああっ、あ、ゃだ、シズ
 ちゃぁ、あぅっ…ふぁ」


 嫌だ嫌だと思うのに、身体
 は正反対に欲に従順に勝手
 に動く。まだ前しか触って
 ないにも関わらず濡れそぼ
 った後孔は、ぐち、という
 淫猥な音を立てて俺の指を
 飲み込んだ。普段からシズ
 ちゃんとの行為で緩んでい
 るソコは、俺の指を2本3本
 と容易く食んでいく。


 「あぁあ…! ん、ふぁあ
 、しずちゃ、ひっ、あああ
 あ」


 彼の名を呼ぶ度にぞくりと
 した快感が背筋を走る。や
 がて見つけた前立腺をぐり
 っと押し潰せば、精器から
 は先程よりも少しだけ薄く
 なった精液が吐き出された
 。
 これで2回目の射精のはず
 なのに、萎えることを知ら
 ないペニスは尚も快楽を欲
 する。もっと、もっともっ
 ともっと…! 彼の大きな
 手でめちゃくちゃにこれを
 扱いて、疼いて仕方ないナ
 カを彼の太くて硬い自身で
 貫いて欲しい。そしてぐち
 ゃぐちゃに掻き回して、前
 も後ろも分からないくらい
 に犯して欲しい。指じゃ届
 かない奥に彼の熱い精液を
 たたき付けて欲しい。

 欲しい、彼が、シズちゃん
 が、


 「たりな、い…っ、しず、
 しずちゃ、ぁん、ふぇ、ぇ
 う…っ、」

 「手前はこんなとこで何し
 てんのかなァ? なあ、臨
 也くん?」


 ――――…その時、

 あまりの切なさにポロポロ
 と泣き出してしまった俺の
 耳に、天使のような、それ
 でいて悪魔のような声が届
 いた。閑散とした路地裏に
 響くその声だけで、俺の後
 孔はひくりと浅ましくひく
 つく。


 「あ、ぁアっ、シズちゃ、
 たすけ、足りない、のぉ…
 !」
 「おーおー、俺のいねぇ間
 に随分と楽しんでんじゃね
 ぇか。一人でするのはそん
 なに良かったのか? ぁあ
 ?」


 調度ビルとビルの隙間から
 顔を除かせた太陽が逆光と
 なって彼の顔を隠す。身体
 を苛む熱に耐えながらも見
 上げた彼の口元は、




 「堪え性のない悪い子には
 、きちんとお仕置きしねぇ
 といけねぇよなぁ」




 それでも分かるくらいに三
 日月に歪んでいた。










 ――――――――――――


 本番までいかなかった、だ
 と……!?

 もし要望があれば続きを書
 きたいと思います(笑)




 (20110412)
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