俺が臨也のことが好きなん
 だと気づいたのは、臨也と
 のセックスに慣れきってし
 まって間もなくのことだっ
 た。

 普段は晒さない真っ白肌や
 そこに浮かぶ桜色の綺麗な
 尖り、快感を拾うと上がる
 高い声。縋るように伸びる
 腕は、いつだって俺の胸を
 締め付けた。愛しい、愛し
 くて欲しくてたまらない。
 けれどこの行為に意味など
 なくて、あったとしてもた
 だの性欲処理。ならばせめ
 て、臨也の全てを俺で満た
 したかった。一瞬でもいい
 、あいつの頭の中が俺だけ
 になればいい。そんな身勝
 手な考えで、初めて嫌だと
 叫ぶ臨也の言葉を無視して
 奴の中に射精した。それは
 すごく気持ちがよく、とて
 も幸せな瞬間だった。

 けれど、


 「…………ぅっ、ひっ、く
 、うぁ、あ、くっ…、」
 「――――…っ!?」


 臨也が、泣いた。
 今までどれだけ殴ってもヘ
 ラヘラと笑みを絶やさなか
 った奴が、ボロボロと子供
 のように大粒の涙を零した
 。それは俺にとってひどく
 衝撃的で、ショックでもあ
 った事実。泣くほど嫌がら
 れるとは思っていなかった
 。

 泣いてる途中、臨也は女が
 どうとか子供がどうとか言
 っていたが、それはしゃく
 りあげるせいで断片的で、
 意味としてはよく分からな
 い。とにかく泣き止んでほ
 しくてそっと臨也を抱き寄
 せた。だけどそんなのはき
 っと都合のいい言い訳でし
 かなく、俺はただ臨也を抱
 きしめたかった、それだけ
 なのかもしれない。どさく
 さに紛れてひどく汚いこと
 をした…だけなのかもしれ
 ない。

 少し前までのムードなんて
 あったものじゃない。暫く
 は泣きっぱなしだった臨也
 もやがて涙が枯れたのか、
 すんすんと鼻を啜る音だけ
 が後に残った。


 「………泣き止んだかよ」
 「………………………」
 「あ゛ー…その、わる、か
 った。中に出したのも、勝
 手に…、抱きしめたのも」


 少しの沈黙の後、臨也は「
 いい」とだけ呟くと、中に
 放った精液もそのままに服
 を拾った。まさかそのまま
 帰る気なのだろうか? そ
 れはさすがに憚られて、こ
 んな状態で別れることも、
 俺の我が儘でしかないが嫌
 だった。
 咄嗟に臨也の腕を掴むと、
 奴はそれが意外だったのか
 小さく肩を揺らした。


 「おい、待てよ。帰るなら
 風呂に」
 「いい。後処理なら一人で
 出来るし、シズちゃんにこ
 れ以上情けないとこ見られ
 たくもないから」


 こういう時、女じゃないか
 ら楽だよね。孕む心配もな
 いしさぁ。そう言って、臨
 也は自嘲気味に笑う。それ
 は、ひどく違和感を感じる
 笑みだった。


 「女って、なんだよ」
 「そのままの意味さ。俺は
 男だから面倒臭くなくてい
 いよねってこと。俺が女だ
 ったら、シズちゃんは俺と
 セックスなんてしないだろ
 ?」


 なんだ、こいつは、何を勘
 違いしている。臨也が女だ
 ったら? なんでそんな、
 ありもしない話を…。
 わけが分からないと困惑し
 ている俺を余所に、臨也は
 一人、喋り続ける。それは
 まるで自分にそう言い聞か
 せているかのように。


 「俺が、女、だったら……
 俺との子供なんて、御免だ
 ろ?」


 子供? その言葉が妙に引
 っ掛かる。女だとか子供だ
 とか、一体なに、を……あ
 あ、なんだ。馬鹿か、俺は
 。簡単な話だったんだ、こ
 んなにも。馬鹿か、


 「馬鹿か手前は。男だとか
 女だとか関係ねぇだろ。そ
 もそも好きでもねぇ奴と何
 回もこんなことするかよ」
 「……は? いや、なに、
 言って……だって性欲処理
 だろ? こんなの。シズち
 ゃんにとって俺はそういう
 」
 「だから、ただの性欲処理
 ならその辺の店に入るって
 の。俺は手前だからこうい
 うことしてんだ。手前だか
 ら――臨也だからだよ。男
 とか女とかは関係ねぇ、臨
 也だからするんだ」


 臨也の瞳が驚いたように大
 きくなって、またくしゃり
 と歪んだ。臨也の瞳から雫
 が零れ落ちる瞬間、俺は臨
 也を再び腕の中に閉じ込め
 た。これ以上、好きな奴の
 泣き顔なんて見るのなんて
 ごめんだ。


 「……泣くなよ」
 「だって、そんな…、ぅっ
 、うそ、ついてまでさぁ」
 「っ嘘じゃねぇ!嘘じゃ、
 ねぇんだよ……。好きだ、
 手前が」


 こうして口にして初めて、
 どれだけ俺が臨也のことを
 好きだったのかを思い知ら
 された。好きで、好きで、
 苦しいくらいに。愛しいと
 いう感情がこんなにも大き
 くなっているなんて知らな
 かった。きっと、この関係
 すらも壊れてしまうのが怖
 くて、知ろうともしなかっ
 たんだ。


 「だって、俺男だし……、
 シズちゃ、だって」
 「だからンなことどうでも
 いいっつってんだろうが!
 俺は手前だから好きなんだ
 、男だろうと女だろうと、
 手前だからこんなこと言っ
 てんだ!いい加減分かりや
 がれ!!」


 言っていることは誰が聞い
 ても赤面するような内容で
 、一気に執着心が込み上げ
 てくる。臨也はそろそろと
 顔を上げ、涙で濡れた瞳で
 俺を見た。シズちゃん顔赤
 いよ、なんて言われたら返
 す言葉もなくて、ただ心中
 で手前のせいだと文句を言
 った。


 「………手前は、どうなん
 だよ」
 「俺は……俺も、本当に嫌
 いな奴なんかとはこんなこ
 と、しない。シズちゃんだ
 から……かな、」


 未だに目元を潤ませたまま
 へにゃりと笑う臨也は可愛
 くて、不覚にも大きく心臓
 が跳ねた。不意打ちで、反
 則だ、そんなのは。

 後で覚えてろよと笑いなが
 ら、とにかく今は好きだよ
 と形作った唇にキスを落と
 す。


 それは、俺と臨也との、初
 めてのキスだった。







 ――――――――――――


 ごめんなさい、途中で力尽
 きましたoyz




 (20110407)
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