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 4月といったら何だろう。

 エイプリルフール、桜、色
 取り取りの花、入学式、新
 しい季節……恋の始まり、
 とか。ああ、なんて俺らし
 くない。もう中学生じゃな
 いんだから、春に夢見るこ
 となんて何もありはしない
 のに。きっと高校でも同じ
 だ、中学と同じような三年
 間。待ってるのは薔薇色の
 学園生活なんかとは程遠い
 進路や就職のことばかり。


 「つまんないなぁ」
 「随分と薮から棒だね。い
 つもの人間観察はどうした
 のさ」
 「最近は面白い観察対象が
 いないんだよ」
 「いいことじゃないか」


 何がいいことじゃないか、
 だ。友人が鬱々としている
 というのに、お前はその横
 で呑気にお昼ご飯かよ。セ
 ルティが作ってくれた?
 そうかそれはよかったねこ
 の眼鏡野郎。

 春、新しい季節。
 何かが始まる予感だとか、
 胸躍る日々だとかを期待し
 ていたわけじゃない。正直
 そんなものにはこれっぽっ
 ちも興味がない。ただ、


 「ここまで何もないんじゃ
 、流石につまらないよね」


 教室に響く女子の恋愛話や
 男子の小学生みたいなくだ
 らない会話、グラウンドで
 は運動部の昼練で賑わって
 はいても、そのどれもが耳
 を傾ける程のものではない
 。つまらない、流れていく
 だけの雑音。


 「ふむ、つまり臨也は、生
 活に何かしらの刺激が欲し
 いと」
 「近からず遠からず、かな
 」
 「恋愛でもすれば?」
 「してるさ」
 「もちろん“人間”以外に
 だよ」
 「論外だね」


 食べ終わったのか弁当を片
 付け始めた友人――岸谷新
 羅とのこの会話も、今日で
 三度目となるもの。つまり
 、今日だけで最低三回、俺
 は「つまらない」と呟いて
 いることになる。我ながら
 相当うざい奴だ。


 「あっ」
 「なに」
 「いや、臨也の暇潰しにな
 るかどうかは分からないん
 だけどさ、多分もう少しし
 たら…」


 新羅が何かを言いかけたと
 き、廊下から「いぃぃざぁ
 ぁやぁぁあぁ!!」という
 地の底から響き渡るような
 怒声が轟いた。新羅はほら
 来たというような顔をする
 と、早々に被害の被らない
 位置に行ってしまう。薄情
 な奴め。


 「静雄くん、お昼のこの時
 間になるといつも君に会い
 に来るからさ」
 「気持ち悪い言い方するな
 。それだとまるで、あいつ
 が好きで俺に会いに来てる
 みたいじゃないか」


 近からず遠からずだよ。新
 羅がそう言ったのは聞こえ
 ないフリをしよう。俺は袖
 口からナイフを取り出すと
 窓の近くへと下がる。もし
 もの時に窓から飛び降りて
 逃げるための措置なのだが
 、出来ればしたくない。あ
 れやると制服にいっぱい桜
 の花びらが着いちゃうんだ
 よね、すぐ下にあるの桜の
 木だから。

 バタバタと煩い足音が近づ
 いてくる。怒気を含んだ声
 が先よりも強く鼓膜を震わ
 せる。


 教室の扉が破壊された瞬間
 、確かに俺は笑っていた。







 退屈なんて

 (案外、些細なことで吹き
 飛ぶんだ)
 (まるで桜の花びらのよう
 に)





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 ここまで読んで下さってあ
 りがとうございました!

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 (20110405)
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