『神様って、存在すると思
 う?』


 それは、人が生まれてから
 死ぬまでに一度は聞かれ、
 考えることだ。

 神様の存在の有無、それは
 人がヒトと名付けられる前
 から――つまりは古代から
 様々な学者や哲学者達の間
 で考えられてきた。けれど
 どんなに頭のいい奴でも、
 どんなに考えが深い奴でも
 、皆最後には口を揃えてこ
 う言うのだ。

 「解らない」と。

 それは悪魔の証明と同じで
 あり、見たものは誰もおら
 ず仮に見たとしてもその信
 憑性は限りなく薄くなって
 しまう。たった数人の戯言
 など、民衆に一蹴されて終
 わりだ。

 ……だが、もしも本当に神
 様がいたとしたら。そい
 つはきっと人間が大好きに
 違いない。好きで、好きで
 、愛しているに違いない。
 それは人間を支えているこ
 の地球よりも、ずっとずっ
 と深く――…。






 * * *





 「君が平和島静雄くん、だ
 よね?」
 「ぁあ゛?」


 街中で突然声をかけられ振
 り返ると、そこには真っ黒
 い人間が立っていた。真っ
 黒な髪、真っ黒な服装。唯
 一赤い瞳は、綺麗なのに黒
 の中だと怪しく光る。まる
 で闇そのもののような――
 悪魔のような、すべてを吸
 い込む、漆黒。
 確かに俺の名前は平和島静
 雄だが、目の前のそいつに
 見覚えはない。元々友人と
 呼べる人間は少ないので、
 少なくともこいつが街中で
 ばったり会って挨拶を交わ
 すような仲ではないことは
 確かだった。……だとした
 らまた喧嘩がどうのという
 やつだろうか。

 俺は人より少し…いや、か
 なり力が強い。そのせいか
 敵視してくる奴も多く、街
 中で喧嘩を売られることな
 んてしょっちゅうだった。
 そういう輩は大抵が一回殴
 ってやれば懲りるのだが、
 俺自身暴力が嫌いなことも
 あってできれば喧嘩なんて
 したくない。もしかしたら
 こいつも、「そういう輩」
 なのか。だとしたら喧嘩に
 なる前にさっさとこいつか
 ら離れた方がいい、それが
 お互いのためだった。


 「やぁっと見つけた。まさ
 か日本の、しかも東京にい
 るとは思わなかったよ」
 「……誰だ、手前は」
 「ん、俺? んーっと、じ
 ゃあ折原臨也。臨むに也で
 、イザヤってどうかな」
 「どうかな、って……知る
 かよンなこと」


 早く話を切り上げたくて適
 当にあしらえば、折原臨也
 と名乗った人物は「静雄く
 んひどーい」と口を尖らせ
 た。男のくせにその様はひ
 どく似合っていて、よく見
 れば顔も整って色も白い。
 こういう奴が女子にモテた
 りするんだろう……が、俺
 とは一切関係ない上、出来
 れば今後とも関わり合いに
 なりたくない人種であるこ
 とに変わりはない。早くこ
 いつから離れろ、そして忘
 れるんだという警告が、さ
 っきから煩く鳴り響いて止
 まなかった。


 「折原臨也……うん、自分
 でもなかなか気に入ったよ
 」
 「そうか、そりゃよかった
 な。じゃ、」


 善は急げ。俺はくるりと方
 向転換すると、元々歩いて
 いた道を進みだした。奴と
 は今後二度と会うことはな
 いだろう。この広い東京だ
 、会ったとしても今回みた
 いに軽くあしらってさっさ
 と通り過ぎればいい。ただ
 いま、俺の日常。


 「ちょっと待ってよ! な
 に早々とどっか行っちゃっ
 てるのさ」


 進みだした……のだが、そ
 れは何者かに袖を掴まれた
 ことで見事に阻まれること
 となった。誰にってそれは
 言うまでもなく――…。


 「…………おい、何しやが
 る」
 「俺の自己紹介が終わる前
 に静雄くんが行っちゃうか
 らだろ。人の話は最後まで
 聞きなさいって、最近の人
 間は習わないのかな?」


 まあ俺は人じゃないんだけ
 どねとよく分からないこと
 を口にする電波野郎に、益
 々俺の警戒心は強まった。
 警告は警報に、その度合い
 を変える。早く、早く逃げ
 ろ。でないと……


 「俺の名前は折原臨也」
 「………………」




 「君達人間が言うところの
 “神様”ってやつさ」




 …ほらみろ、面倒臭いこと
 になっちまったじゃねぇか
 。







 ――――――――――――



 ここまで読んで下さってあ
 りがとうございました!

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 お気軽にどうぞ^^



 (20110405)
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