※温いですがR18です
















 「んや!あっ、ふぁあ、ア
 、ッ!」
 「……っは、」


 放課後の閑散とした教室に
 二人分の熱い吐息が混ざる
 。静雄が前後に腰を動かす
 度に、揺さぶられている臨
 也は言葉にならない嬌声を
 上げ、下にしかれている机
 がガタガタと五月蝿く音を
 立てた。不安定な机の上で
 もお構いなしに突き上げる
 静雄に、臨也は過ぎる快楽
 から逃れるように腰を引く
 も、机という小さな空間で
 は大して意味はなく、静雄
 に再び腰を打ち付けられれ
 ばそれまでだった。臨也は
 仕方なしに逃げるのを止め
 、正常位で自分を攻め立て
 る人物の背中に腕を回す。
 体全部で快感をあらわにす
 る臨也に、静雄は一段と埋
 め込んだ自身を大きくさせ
 た。

 放課後といってもまだ太陽
 の垣間見える時間帯。誰が
 来てもおかしくないような
 状況で、静雄は必死に理性
 を掻き集めてこうなってし
 まった経緯を思い返した。


 『シズちゃんって童貞?』
 『あ゛?』


 それはこんな会話から始ま
 った。いつもの追いかけっ
 この終着点であるこの教室
 で、臨也は唐突にそう切り
 出した。どう答えていいか
 分からず黙っていれば、相
 手はそれを肯定とみなした
 のか、童貞童貞とからかう
 ように繰り返す。


 「……手前は、どうなんだ
 よ」


 自分にそういった経験がな
 いというのが事実であるだ
 けに強いことは言えず、口
 からは情けなく掠れた声が
 漏れた。臨也は元からその
 質問が来ることを予想して
 いたのか、その口元をクツ
 リと歪ませて言う。


 「童貞には教えてやんなー
 い」
 「っ、てんめ、」
 「ねえシズちゃん、俺がさ
 、」

 ――…筆下ろし、してあげ
 ようか?

 その様はひどく妖艶で、俺
 は無意識のうちにも喉が鳴
 るのを感じた。けれど同時
 に、一つの真実に行き当た
 る。

 (こいつ……、慣れてやが
 る)

 誘い言葉や表情から、臨也
 が“そういうこと”に慣れ
 ているのだと容易に想像が
 できた。なぜだかそれが無
 性にイラついて、気づいた
 ら俺は臨也の体を机に――
 ―…


 「ちょ、と、ちゃんと集中
 ……してよ、ね、っ」


 現実逃避したくても目の前
 の光景がそれを許してくれ
 ず、さらにわざとらしく臨
 也が内壁を強く締め付ける
 ものだから、思わずくっ、
 と息をつめた。


 「童貞は童貞らしく…っ、
 がっついてればい、んだっ
 あぁあ、あっ、」
 「……っクソが、これで、
 満足か、よ!」
 「ふっ、ぅあ、はぁっア、
 ん……っと、もっと、シズ
 ちゃぁ、ああア!!」


 悔しいことに、臨也の中は
 ありえないほど気持ちが良
 かった。身体の相性がいい
 、というのか、腰を奥に進
 ませれば熱い内壁が吸い付
 き、引き抜こうとすれば逃
 がすまいと絡みつく。初め
 て味わう快楽に、俺は無我
 夢中で腰を打ちつけた。


 「――…っあ、イ、ク!シ
 ズちゃ、ぁん、おれもうっ
 」
 「イけ、よッ!」
 「ひゃああ、ンっ…ズちゃ
 、おれ、……き、しずちゃ
 んが、ぁっあああ――――
 …ッ!!」


 行為の途中で見つけた臨也
 のいいところを思い切り突
 き上げ、同時に腹につくほ
 ど勃ち上がった臨也の自身
 を扱いてやれば、臨也の放
 ったものが俺と臨也の制服
 を白く汚した。イった時の
 締め付けに耐え切れるはず
 もなく、けれど中に出すの
 も憚られて瞬時に自身を引
 き抜けば、臨也のそれに俺
 の精液が混ざった。
 その時ふと思い至って臨也
 の額に張り付いた髪をはら
 ってやる。と、臨也はなぜ
 だか、怯えるようにビクリ
 と跳ねた。


 「臨也、手前さっきなんて
 言ったんだよ」
 「……俺は何も言ってない
 。シズちゃんの聞き間違い
 だろ」


 こんなはずじゃなかったの
 に、と未だ呼気の荒いまま
 言い放って臨也はそっぽを
 向いてしまう。
 その横顔は情事後のせいか
 、はたまた沈みかけの夕日
 のせいか、ひどく赤かった
 。







 * * *





 走る、疾走る、授業中で誰
 も歩いていない廊下をただ
 ひたすらに。

 (――…畜生! なんであ
 いつはいつも、)

 「それ」を聞いたのは、つ
 いさっきだった。友人の新
 羅に、そうなんだと教えら
 れたのだ。


 『臨也に女性の…ましてや
 男との経験なんてないよ』
 『臨也はいつだって、自分
 の気持ちを表に出さないか
 ら』
 『不器用なんだよ、君と同
 じでね』


 あの時臨也は、何も言って
 いないないと言った。まる
 で言ってしまったことを後
 悔するかのように、恥ずか
 しそうに顔を赤らめて。
 もしも新羅の言うとおり、
 初めてだったとしたら。
 その上で、俺にけしかけた
 のだとしたら。

 (なんで手前はそうなんだ
 よ!臨也ッ、)

 奴も俺も不器用だというの
 なら、尚更聞かなくてはい
 けない。そして、俺も答え
 なくてはならない。強情な
 あいつのことだから、きっ
 とすぐに胸中をあかすなん
 てことはないだろうが、そ
 れでも俺は聞きださなくて
 はいけないのだ。


 かかとの潰れた上靴がパタ
 パタと音を立てる。
 階段を上りきって曲がった
 先、俺はようやく目的の黒
 髪を見つけた…――。










 (20110326)
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