池袋。周りと比べても頭一
 つ分背の高いビルの屋上。
 そのフェンスの上に、一人
 の黒色の青年が立っていた
 。


 「いいもんだよね、こうや
 って高いところから街を見
 下ろすっていうのも。まる
 で人が微生物のようで、そ
 のくせゴミのように溢れて
 いる図っていうのは、支配
 欲とか掌握欲とかに関係な
 く心踊るものがある。人間
 誰しも、自らをいい地位に
 置いておきたいと考えるも
 のだからね」
 「……おい」


 一見青年の独白とも思える
 言葉に、一人の――同じく
 青年が、フェンスの上の青
 年に下から声を投げかける
 。青年は、黒色の青年とは
 違い、闇と同化することの
 ない明るい金色の持ち主だ
 った。
 金色の青年の乱入に気づき
 ながらも、黒色の青年はそ
 れを気にすることなく言葉
 を紡ぎ出す。


 「君はどうなのかな、シズ
 ちゃん。君はこうやって街
 を見下ろして、一体何を思
 う? 化物の君に、この世
 界はどう映るのかな。化物
 の君はこの世界をどう思う
 んだい?」
 「おい、臨也、」
 「俺はさ、逆なんだよね。
 他の奴らがどう思うかなん
 て知ったことじゃないけど
 、俺はこんな世界を見せつ
 けられて、人の小ささと多
 さを見せつけられて、世界
 の広さと自分の小ささをこ
 んな風に見せつけられたら
 さ、もういっそここから飛
 び降りて、世界の一部に溶
 け込んだ方が――」
 「おい!」


 シズちゃんと呼ばれた金色
 の青年は、臨也と呼んだ黒
 色の青年の言葉に思わず大
 声をあげた。黒色の青年に
 駆け寄ろうにも、何の拍子
 に黒色の青年が飛び降りる
 か分からない。その思いが
 、金色の青年の足を縫い付
 ける。


 「………………」
 「…降りろ、そっから」
 「なんでシズちゃんが俺に
 命れ」
 「いいから!…いいから、
 降りろ」


 風の強い外。暗闇の中、足
 場の危ういフェンスの上で
 危なげに揺れる黒色の青年
 に、金色の青年は今度は焦
 ったように声を荒げた。金
 色の青年の声音に気づいた
 のか、黒色の青年は口元だ
 けで笑う。


 「なーに必死になってんだ
 か。俺が死のうと、シズち
 ゃんにはどうでもいいこと
 じゃない。いや、寧ろ喜ぶ
 べきことなんじゃないのか
 な? まあ、君の珍しい姿
 も見れたことだし、君の言
 う通りに降りてあげるよ」
 「…………、」
 「さて、ここで質問なんだ
 けど、俺ははたしてどっち
 に降りるべきなのかな? 後
 ろか、それとも――前か」
 「―――…っ!」


 金色の青年の一瞬だけ安堵
 で緩んだ頬が、黒色の青年
 の言葉で再び強張る。黒色
 の青年は最初と変わらず金
 色の青年に背を向けるよう
 に立っていた。なのでこの
 場合後ろというのは金色の
 青年のいる方のことで、前
 というのはもちろん―――
 、


 「ねえ、どっち?」


 金色の青年は黒色の青年の
 ことが大嫌いだった。それ
 こそ殺したいほどに。けれ
 ど今は、黒色の青年に前へ
 降りてほしくない、そう思
 っていた。自らの気持ちの
 矛盾。金色の青年のそれに
 気づいていながら、黒色の
 青年はそう尋ねる。

 ひどく楽しそうに笑いなが
 ら。


 「言わないなら俺の好きな
 方に降りるけど」


 黒色の青年が答えを促す。
 金色の青年は促されるまま
 に考えた。
 今なら大嫌いで殺したくて
 仕方がなかった奴を殺せる
 。自分のたった一言で、そ
 れで全てが終わる。けれど
 心のどこかが警笛を鳴らす
 。やめておけと、そう促す
 ように。

 それから1分と経たない後
 に、金色の青年は答えを出
 した。







 → 前へ、
 → 後ろへ、







 ――――――――――――


 続きは後日書いて載せます
 ね。

 選んだ方によっては死ネタ
 になるので注意です。




 (20110106)
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