10pである。

 何がって、そりゃ俺と奴と
 の身長差が、だ。別に悔し
 いだとかそんなことは思っ
 ていない。断じてない。た
 だ、少し不便さを感じるだ
 けだ。

 例えば、彼は仕事から帰っ
 てくると必ず後ろから俺に
 抱き付いてくる。それが料
 理中であろうと仕事中であ
 ろうと関係なく、必ず俺の
 右肩に顔を乗せ、「ただい
 ま」と言って笑うのだ。わ
 ざわざそんなことをしなく
 ても帰ってきたことくらい
 分かると言うのに、彼はそ
 うしないと帰ってきた気が
 しないのだと言う。まるで
 儀式のように。毎日、毎日
 。

 そこまではいい。何の問題
 もないし、俺自身口にして
 は言わないが嬉しかったり
 もする。けれど問題はその
 後だ。例えば君が料理中だ
 ったとして、そこに愛しい
 同居人が帰ってくる。そこ
 で同居人が可愛く甘えてき
 たりしたら、キスの一つく
 らい返してあげたいとは思
 わないだろうか? 思うよ
 ね、それが普通だ。だがこ
 こで問題になってくるのが
 さっきも言った身長差であ
 る。

 ……そう、届かないのだ。
 背伸びをしないと、俺の唇
 が彼のそれに触れることは
 出来ない。ああ、それはな
 んて――、


 「屈辱的だよね」
 「あ?」


 今日も今日とて帰ってきて
 早々に抱きついてきた同居
 人兼恋人に、思わずポロリ
 と本音が漏れた。彼は耳ざ
 とくそれを聞き取ると、何
 だ何が不満なんだと表情を
 曇らせた。ああ、馬鹿だな
 、そういう意味じゃないの
 に。


 「不満とかじゃなくてね。
 普通同じ男同士でさ、こう
 も身長が違うのを毎日のよ
 うに見せ付けられたら、少
 しは嫌な気持ちになったり
 しない?」
 「いいじゃねえか。それに
 手前の身長体格だと、調度
 俺の腕にすっぽり納まって
 いいんだよ」
 「そりゃシズちゃんは抱き
 枕の代わりに出来ていいか
 もしれないけどさ……」


 一応彼と同じ男である俺と
 しては、まるで自分がひど
 く弱々しい存在のように思
 えてしまって、あまり嬉し
 くないのである。そう、そ
 れは一種の対抗心に似てい
 るかもしれない。

 当然ながら、俺達が最初か
 ら恋仲だったのかと聞かれ
 ればそんなはずもなく、最
 初は今と正反対の殺伐とし
 た関係だった。顔を合わせ
 れば喧嘩ばかり。俺の場合
 は顔を合わせなくても彼を
 貶める計画ばかりを考えて
 いた。だから少しばかり、
 俺は彼に対して負けず嫌い
 になってしまうのかもしれ
 ない。


 「だって……これじゃキス
 もろくに出来ないし、シズ
 ちゃんの顔見るのにいちい
 ち顔上げなきゃなんないし
 、それだと首痛いし」
 「キスする時なら屈んでや
 るし、そん時に顔も見れん
 だろ?」
 「でも……、」
 「いいんだよ、俺の腕にす
 っぽり入るサイズの手前で
 」


 なんだそれ、ジャイアンめ
 。この横暴野郎。最低だ。
 言ったことはなかなか曲げ
 ないし、強引マイウェイだ
 し、いつも俺が振り回され
 るし。

 まあ……だけど、確かに抱
 きしめられた時に聞こえる
 彼の心地よい心音は、


 「……シズちゃんなんか死
 んじゃえ」
 「はいはい、愛情表現な」


 存外、嫌いではなかった。







 ――――――――――――



 クラゲ様への相互記念でし
 た!

 あばばば、あーちゃんはあ
 んなに素敵な文をくれたの
 に、私ってばなんて拙い…
 …!

 こんなのでよければ、受け
 取って下さいまし^^

 甘く……なってるかな、不
 安です。




 (20110403)
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