※ほんの少しだけ注意かも
 しれないです。







 「trick or treat! お菓
 子をくれなきゃ悪戯しちゃ
 うよ?」
 「そういえば今日はハロウ
 ィンか…道理で仮装してる
 奴らが多いと思った」
 「そんなことよりドタチン
 お菓子! お菓子頂戴って
 ば」
 「あー悪い臨也。飴しか持
 ってないが…いいか?」
 「全然OKだよ。さっすがは
 ドタチン!」


 そう、今日は10月31日。世
 間一般では“ハロウィン”
 と呼ばれ、仮装とお菓子を
 メインとすることで知られ
 る年に一度の行事の日だっ
 た。
 街はオレンジ系統の暖色の
 ネオンに彩り照らされ、街
 行く人々の中には被り物や
 装飾品を身につけている者
 も頻繁に見かける。特に子
 供達は大人にお菓子をせが
 み、大人も今日だけはとチ
 ョコや飴を買い与え、学校
 ではお菓子交換も目立つよ
 うな、そんな一日。そして
 それはここ、来神高校でも
 変わないことだった。


 「まったく、臨也は朝から
 あの調子だね。すれ違う生
 徒皆にお菓子をせがむんだ
 から…」
 「それでくれなかった奴に
 はナイフ向けて買ってこさ
 せてるんだってな。もうそ
 れカツアゲじゃねえかと思
 うんだが」
 「……そう思うなら何で臨
 也を止めないのさ。臨也、
 門田くんの言うことだけは
 素直に聞くから、あいつを
 止められるのって君だけだ
 よ?」
 「簡単に言うがな、見てみ
 ろ。あのお菓子を貰っては
 しゃいでる臨也を。あんな
 に嬉しそうに…」
 「(この親馬鹿め)」
 「それに俺じゃなくても静
 雄が何とかするだろ」
 「あー…うん……」

 「いぃぃざぁああやあああ!!」

 「ほら噂をすれば、だ。始
 まったみたいだぞ」


 ここ来神高校には、関わっ
 てはいけないとされる人間
 が数多く存在する。その断
 トツ上位二名の内の一人が
 先の話題でも上った折原臨
 也その人であり、もう一人
 が彼と犬猿の仲である平和
 島静雄だった。彼らの喧嘩
 は今まで死人が出なかった
 のが不思議とされる程の壮
 絶なもので、ある意味来神
 高校の名物とさえ言われる
 程である。
 そして生徒も教師も友人で
 ある門田や新羅までも知ら
 ない秘密が彼らにはあった
 。


 「もー、そんなに怒らない
 でよシズちゃん」
 「ふざけんなよ臨也てめぇ
 。なに俺以外の奴に笑顔振
 り撒いてありがとうなんて
 言ってやがんだ」
 「その嫉妬自体は嬉しいけ
 ど、今日くらい見逃してよ
 。ね?」


 そう、彼らは世に言う“恋
 人同士”だったのだ。


 「今日も明日も関係ねえ!
  俺はその誰にも彼にもに
 こにこすんのやめろって言
 ってんだよ」
 「いいじゃん今日くらい!
  それとも、シズちゃんが
 この学校の全校生徒分のお
 菓子を俺に買ってくれるの
 ? 無理だろ?」
 「はぁ? 何で俺がてめぇ
 にそんなことしてやらねえ
 といけねんだよ!」
 「ほら、シズちゃんは今日
 が何の日か知らないからそ
 んなこと言うんだ!」


 「だから何の日かとか関係
 ねえっつってんだろうが!
 」と叫びそうになるのを静
 雄はこめかみに血管を浮か
 べながら必死に堪える。こ
 のままでは埒が開かないこ
 とに気づいたのだろう、大
 きく深呼吸をすると、彼に
 しては珍しく真剣に考え始
 めた。


 (…今日って10月31日、だ
 よな…? 特別なことなん
 かあったか……そういえば
 今日はやけに派手な服着て
 る奴が多い気がする。それ
 に臨也の持ってる大量の…
 何だありゃ、菓子か……?
 それからこいつ朝から何か
 叫んでやがったな。トリ…
 トリックがどうとか)


 「――…ああ、ハロウィン
 か」


 やっと静雄がその思考に至
 り、臨也はわかってくれた
 のかとほんの少し表情を明
 るくする……が、


 「成る程なぁ。じゃあ臨也
 、トリックオアトリートだ
 」
 「……は?」


 次の瞬間には静雄に言われ
 た発音の悪い英語に疑問符
 をいくつも浮かべることと
 なった。


 「ハロウィンなんだろ?
 トリックオアトリートって
 ことは、てめぇは俺にお菓
 子をくれないといけねぇわ
 けだ」


 ならばと貰ったお菓子を一
 つ静雄に手渡せば、静雄は
 ふざけんなとそれを拒否す
 るので臨也はますます疑問
 符を増やす。


 「ごめんシズちゃん、意味
 わかんない」
 「あ゛? 誰がてめぇの貰
 い物を寄越せなんて言った
 。臨也本人が買ったお菓子
 を寄越せってことだろうが
 」
 「それ、人に物を頼む態度
 ? ていうか俺貰ったやつ
 以外にお菓子持ってないし
 」
 「そうか…だったら……」
 「な、に……?」

 「お菓子がないんじゃ、悪
 戯されても文句は言えねえ
 よなぁ?」


 ニヤリと静雄の口角が楽し
 そうに上がったのに対し、
 臨也は自分でも気づかない
 内に冷や汗を流した。













 「ひっ、やぁんっ…!も、
 許し、」
 「まだまだこんなの序の口
 だろ?」
 「……っこの、やぁあ…!
 !」

 お菓子をくれなきゃ、悪戯
 するよ?










 (20101031)
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