はるうらら(土新/小ネタ)
2014/04/09 03:34

※今年も桜が綺麗に咲きました小ネタです。




「今年も桜、綺麗に咲きましたよ」


春の麗らかな陽差しに照らされた縁側は、明るく暖かな空気を溶かしている。
ただ、時折吹く風はまだ僅かに冬季の冷たさを残し、淡い桃色の花弁を散らつかせている。
「そうだな」頷くこともせず、目の前の風景から眼を逸らさず、それだけ、土方は応えた。
新八は、そんな土方に横目を向け、手に持った湯呑みの縁を意味もなく指でなぞった。
……未だに、二人きりになると少しだけ緊張してしまう。
お互いの肩同士が触れ合うにはまだ少し距離が足りないが、それでも、肉眼でも眉尻の僅かな表情まで確認出来るような距離に、二人はいる。
ほんのりと熱を感じる頬に、掠める大気の筋が心地好かった。
新八は、視線を桜の枝の天辺へと向けると、はらりと風に煽られた花弁の内の一枚を視界に捉え、それを追いかけてみた。
すると風向きは穏やかに向かい風へと変わり、その新八の一枚は、下降しながらひらひらと引寄せられるようにこちらの方へと向かってくるようだった。
新八の眼は、その軌跡を追い続ける。
その花弁は、二人の間、土方の頬を掠め、開け放たれた障子の敷居を潜り、畳の上に静かに降着した。
……その静かになった花弁が、新八の視界に入ることはなかった。
新八の眼は、静止している。
新八の視線の先で、緩い向かい風に身を委ねるように目蓋を閉じる土方の口元が、小さく弧を描いている。
土方は薄く長い吐息を吐き、目蓋を上げた。
何枚もの桜の花弁が、新八の目の前を踊るようにすり抜けていく。
土方の首が傾ぐ。
新八が、ひゅっ、と息を飲む。
土方の目線が、新八に注いだ。
かと思えば、土方の腕が伸びてくる。
全てが一瞬の出来事に、身構えることも出来ないまま、新八は土方を見詰めていることしか出来なかった。
……。
新八の髪を鋤いたと思った土方の指に乗っていたのは、一枚の花弁だった。
その一枚も向かい風に煽られ、あっという間に室内へと飛ばされていった。


「……」


……。
土方は何か言葉を交わすこともなく、また黙って桜の幹に向き直った。


「な……」


新八は頬から顔全体、耳の裏にまで通い始める熱を感じ、土方から顔を逸らした。


「なんか、言ってくださいよ……」


「……なにかって、なんだよ」―――そう言って紅潮させた土方の横顔に、新八は気が付くことが出来なかった。




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桜「くらえ、リア充共!桜吹雪じゃあ!」




\ お幸せにの…… /



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