だって春ですし(土新土/本誌ネタ)
2014/03/27 03:53

※先週までの本誌ネタです。コミックス派の方はご注意くださいませ!





いくら時間を進めてみても、一向に固く閉ざされた土方さんの拳が緩まることはなかった。
……ほんと、この人の電池一つへのこの執着どうなってんの?嫌がらせなの?馬鹿なの?
そろそろ、この僕でさえ溜め息の一つや二つや十や百、出てくる頃合いである。
今は、もう何順目かの土方さんの寝顔をぼんやり眺めている。


「もうさァ、何なのコイツ、ほんと何なの」


うんざり、と顔をしかめながら銀さんは土方さんの寝顔を見下ろした。


「あー、何かコイツの顔見てたら余計腹立ってきちゃったなー」


「オォイ、神楽ァ」銀さんは、先ほどからズカズカと部屋中を家捜し回る神楽ちゃんを呼んだ。


「銀ちゃーん!見て見てコレ!マヨまみれ引き出しの隙間から見付けたヨ!ホメテ、ホメテ!」


「ええ、ちょっと!?神楽ちゃん」


燦々と輝く大きな瞳を湛え、神楽ちゃんが胸を張って掲げているのは、通帳と印鑑だった。


「おお神楽、良いもん見付けたじゃねェか。まあ、だが今はそれは懐に仕舞っとけ」


「そんで取り合えずコイツそこの木に吊るすの手伝え」チョイチョイ、と銀さんが手招きをする。


「うおー!いつかの仕返しアルな!任せるアル!」


言われた通り通帳と印鑑を懐に仕舞うと、俄然意気込む神楽ちゃんだった。
銀さんは、口笛を鳴らしながら何処から出してきたのか、土方さんの体に縄を通し始める。


「ちょっとちょっとォ、何やってんのアンタらァ!ストップストッープ!」


「何だァ、ぱっつあん邪魔すんのか。良いじゃねェか。せっかくなんだしお前もコイツに対する日頃の鬱憤晴らしとけよ」


ひ、日頃の鬱憤と言われても……。


「今はそんなことやってる場合じゃ、」


「そうネ新八!いっつもマヨまみれの×○☆で☆△●☆@▲◇……」


「うわああああ神楽ちゃんンンン!!!!一体何処でそんな下品なこと覚えて……」


僕は神楽ちゃんのそのとんでもない発言を慌てて遮ると、そこで、銀さんに視線を向ける。
銀さんは、流れるような仕草で僕から顔を逸らした。


「……」


頬が膨らみを帯びたと思えば、ぷすっ、と息を噴く。
……僕は、部屋の角に置かれた高級そうな大柄の壷に意識を向けた。
僕はその壷へと歩み寄る。
コレをこの天パの頭に一発叩き込んでやれば、少しはマシにならないだろうか、と見下ろしていると。
「あ、そうだァ!オイ神楽、食堂だ!世界を救う前に先ず腹ごしらえだァ!腹が減っては何とやらっつってなァ!」危険察知の勘が働いたのか、銀さんは土方さんを放り出し、足早に縁側を駆けていった。


「アッ!待ってヨ銀ちゃんわたしもー!!」


その背中を、放り出された土方さんをさらに踏み付け、神楽ちゃんが追っていった。


「……」


バタバタと騒がしい足音が遠ざかり、部屋に残された僕は、深い溜め息を一つ溢し土方さんへと向き直った。
乱れた床を直し、土方さんを引きずって寝かし直すのは結構骨が折れた。


「……」


散々弄ばれたせいか、この場合は元々の寝相のせいなのか。着崩れていた着流しに手を掛ける。


「……」


着崩れて胸元から露出した肌色が、目を奪う。
ごくり、と喉を鳴らしてしまう。
僕は大きく頭を振り、その邪な感情を振り払おうとした。
……が。


「……うっ……」


一度、その衝動に気付いてしまいこの状況を意識すればする程に、僕の健全な春(しゅん)は、泥沼と化していく。


「おーい新八ィ、聞いてくれよォ。コイツらったらよォ、人様の税金でなかなか良いもん食って……」


……そして、この最悪のタイミングでの、銀さん再登場である。


「……何してんの」


咄嗟にうずくまった僕を見下ろし、何かを察する銀さんだった。


「……トイレ、向こうにあったけど」


「……ど、どうも」


僕は、中心を両手で抑え込みながら、不安定な足取りで厠へと向かう他なかった。




__________



「……若いって大変ね」


このあと副長はイラァ…ってなった坂田にさらに踏み踏みされます。



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