……寝苦しい。重たい目蓋を抉じ開ける瞬間の倦怠感が全身を包む。
真っ暗な天井がぼんやりと脳裏に焼き付いた。
「……ん、」
新八は、寝返りのため身体を捻る。
「……ン……?」
……違和感。上手く寝返りを打つことが出来ず、次に新八は、朧気な意識の中身体を起こそうと試みる。
「まだ、だァめ」
夜の帳に溶け込み、鼓膜を揺さぶる、甘い声がする。
とん、と胸を押されると、不安定な新八の身体は、またシーツの上に跳ね返された。
……何だろうか。下半身の辺りに気配を感じる。
漸くはっきりと覚醒してくる意識が先ず感じ取ったのはそれだった。
しゅるり。次に耳に届いたのは、何か布切れ同士が擦れ合うような、そんな音だ。
今度こそ、新八は寝かされたシーツに肘を付き、ぐっと力を込め上半身を起こす。
「……えっ……?」
今宵は月が、やけに明るい夜だった。
何故か、開け放たれた窓から射し込む月の明かりに浮かび、新八の網膜に焼き付いたのもの。
「な、な、えっ……!?」
新八は目を見開いた。
「あら、もう起きちゃった?つまんないなァ」
見知った顔が、言葉を失った新八を見下ろしている。
真っ白な肌を月明かりに晒し、その豊満な二つの実りさえ包み隠すことなく、そこにある。
「ぎっ……!!」
反射的に、新八は声を上げた。
意識が混濁し、上擦った悲鳴染みた声で、彼女の、名前を叫んだ。
「銀子さんッ……!!?」
銀子、と呼ばれた彼女は、そんな新八の様子に恍惚な笑みを浮かべ、返す。
「うん、そうだよ?」
新八の脚の間に膝を割り入れ、膝を立て新八を見下ろす。
銀子は、薄紅の唇で形の良い弧を描くと。
腰のベルトに手掛け緩めながら、シーツに手を付き新八に覆い被さった。
新八は銀子に為されるがまま、言葉を吐くことも身動ぐことも出来ない。
これは、夢か……?
何故、自分は、彼女は、こんな―――
あまりにも、脈絡なく訪れた展開に思考回路が焼き切れている。
しかし、新八が呆然としている間にも、銀子の行為は止まらない。
銀子の唇が、頬に、額に、耳に唇に、落とされる。
始めはまるで子供をあやす行為のような優しさで。
しかしそれは次第に熱を帯び、本来の性行動へと変わっていく。
「あっ……」
首筋をべろりと一筋、舐められた。
新八が思わず声を上げると、銀子はニヤリ、と目を細める。
銀子は唐突に、新八の手を取った。
その手を、自分の乳房へと押し付ける。
「……なあ、知ってる?」
下乳房へと、脇腹へと臍へと、ゆっくりと滑らせていく。
「クリトリス、ってあるじゃん?」
そして、緩めたベルトの隙間から、そこへと誘っていく。
「ここってさ、女のぺニス何だってさァ」
「……ね、触ってみてよ」新八の指を操り自らそこを刺激すると、銀子は身を震わせ、あ、と吐息を漏らす。
「……つまりさ、この欲望は、男、ってことなんじゃないのかなあって」
上気した頬。
欲に濡れた瞳で銀子は告げた。
「私はねえ、新八。お前を犯したいの。目茶苦茶に。男みたいに」
そう、言い放った銀子は立てた膝を新八の股ぐらに擦るように押し当て、両手をシーツに縫い付けた。
新八に、衝撃が走る。
ああ、自分は、今からこの可憐な彼女に犯されるのだ、と。
銀子の手により乱暴に剥がされていく自分の寝巻き。
下半身を下着ごとずり下ろされる。
「……かァわいい」
露わにされたそこに銀子の手が触れ、指で裏筋をするりと撫でられた。
「こんなにして、期待しちゃって、悪い子」
熱に浮かされた、銀子の艶かしい呼吸。
「全部ブッ飛ぶくらい、気持ち良くしてやるよ」
そう言って一度、二度、銀子はそこを扱くと、顔を埋めた。
…………。
目を覚ました。覚ました途端に、嫌な違和感に見舞われた。
「……」
新八は、身体を起こす。
噴き出した汗でベタついた身体に、早朝の冷たい空気が触れて体温を冷やす。
……新八は更にかき始めた冷や汗で、それを上塗りしていく。
下半身に押し寄せる違和感にサアっと血の気が引いていく。
新八は、両手で顔を覆った。
―――なんて夢をみているんだ、僕は……。
自分がここまで欲求不満だったとは……。
「うわあああああ」新八は呻きながら頭を抱え、兎に角、取り合えず姉上が起きる前に急いで洗濯を済ませてしまわなければ、と。慌てて蒲団を出る。
慌てるあまり敷布団のシーツに足を取られバランスを崩すと、盛大にずっこけ部屋の戸をぶち破りその音に姉である妙が飛び起きてやって来るのは、これから一分程、後の話になる。
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すみませんでしたaaaaa(:3_ヽ)_