年甲斐もなく青春してみた結果がコレです(土新土)
2014/02/14 00:42

たまたま、朝のワイドショーでそんな話題をしていたから、と言うわけではないが。俺はいつものたばこ屋で煙草を頼むついでに、カウンターの上にこれ見よがしに、と売られていたそれを、一つ摘まんで手のひらに乗せた。


「……ふっ、毎度」


婆さんは、何やら意味深な笑みを此方に向けながら、差し出した代金を受け取った。
俺は……チッと舌をならし、婆さんを横目で睨み付けその場を後にする。
より一層、笑みを深めひらひらと手のひらを振りながら俺を見送る婆さんは無視だ。
俺は背中を丸め煙草を懐に仕舞う。
そうして片手をポケットに突っ込んだ。
相変わらず、賑わうどころか少々喧しい歌舞伎町の巡回は、しかしこれと言って大きな事件はなく。たまに昼間から飲んだくれた酔っ払い共の喧嘩の仲裁程度、の仕事を淡々とこなしてそろそろ折り返そうかという頃。


……俺は、サッと身を翻し狭い一本路地に身を隠した。


「……」


俺は我に返る。
息を潜めながら通りすがる人波に振り返った。
と、まさに俺の目の前を過る、その特徴的と云えなくもない、形の整った丸い頭。
此方に気が付くことはなく、ほんの一瞬のうちに通りすがって行く。
思いがけない遭遇に心臓が跳ね上がったのも束の間、俺は、急いで路地を抜けた。
突然薄暗い路地から姿を現した俺に数人の通行人が訝しむような視線を向けるが、今は気にしている時ではない。


(……なァにが、『思いがけない』って?)


俺は、その背中を追い掛けズンズンと足を進める。
足音を立てる。己の存在を主張するように。


「……?」


背後から間近に迫られ、流石に気配に気が付いたらしいその頭が、振り向いた。


「……へっ?てか、近ッ!!」


的確なツッコミを入れられ、距離を取られた。


「び、びっくりしたァ……何やってんスか、土方さん……」


……ほんと、何やってるんだろうな、俺。

面と向かって問われ、自身に問い掛け、改めて今の自分の滑稽さ加減を実感する。
今凄く、手近な電柱で自分の頭をかち割りたい気分だ……。
俺が恥ずかしい葛藤を脳内で繰り広げる間にも、―――新八は、俺を怪訝な表情をして見詰めてくる。
上手く掛ける言葉を見付ける事が出来なかったので俺は、一歩前進して距離を詰めるとポケットに突っ込みっぱなしだった拳を取り出し、新八の頭に乗せた。


「……??」


諦めた、というよりは、もう開き直った。
俺は新八の頭の上で拳を開き、振動を伝えないよう、そろりと手を放した。
疑問符まみれの顔をした新八が、両手を頭に置いた。
身動ぐと落下しそうになるそれを、手のひらに掴み下ろす。


「……えっ?」


手のひらを見下ろししぱしぱと瞬きを繰り返すと、俺へと視線を返す。


「えっ、……えっ!?ええッ……!?」


「……あばよ」


俺は背中を向けた。
……あばよって、あばよって……ないわァ……今の俺、ほんと、ないわァ……。
後悔の海に身を投じ、いっそ酸素不足で死んでしまえたら俺は楽になれるのに。
これだから、あわよくばとか期待したり、慣れないことなんてするもんじゃないんだ!

俺は本能的に、早足でその場を逃げ出すことしか出来なかった。


「あ、あ!あの!」


新八が、声を上げる。


「あ、ありがとうございます!あの、大切に食べます!!」


俺は振り向く。
新八は、それを大事そうに胸元に握り締めている。


「…………さっさと食っちまえェ!!」


―――そんなもん!!


俺は人目も気にせず、吠えると走った。





(セイントデイに弾け飛ぶ青春は)


__________



「アッ……スッゴい溶けてる……チ●ルチョコ……」



ストーカー予備校生の実力。



|





「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -