大切なのはハートの大きさです(攘夷と新八/完結篇ネタ)
2014/02/07 06:50

※2000%捏造な完結篇ラストからの新八くんと攘夷の皆様(ほぼ総督さん)のお話です



「……何処までついてくんだろうね、アイツ」


俺の一歩後ろを歩く銀時がぼやいた。
前を歩く桂と坂本は何も応えることなく、足を進めていく。
俺は、前衛と同じく歩みを止めずチラリと背を振り返った。
俺たちが歩く、森を切り開き作られた林道。俺達以外に人影は無い。
……ガサ。ガササ。
そんな人気の無い林道の木陰に、気配が一つ。
先ほどからしつこく付きまとうその気配に、俺は仕方なく足を止める。
すると銀時、更にそれに気が付いた前衛の二人もその歩みを止めた。


「……オイ、」


俺は声を上げた。
草場の気配がガサリ、と一際大きく揺れた。
俺達はこの期に及んで息を潜めようとするそいつを、黙して眺め続けてやった。


「……」


一向に立ち去らない気配と沈黙に、先に根を上げたのは向こう側だった。
林の高木の幹の後ろから、そいつは覗き込むようにひょこりと顔を出した。


「……あの……」


……弱そう。そんな第一印象ばかりが先立つような男である。
眉尻を下げショボくれた顔が、それをより一層際立たせている気がする。


「あの、すみません、ほんと、すんまっせん……」


そいつは頻りに詫び言を繰り返しながら、縋り付くような眼をして此方を見ている。
……仲間になりたそうにこちらを見ている、ってか……?
確か、コイツは未来からやって来たとか言う、あの酒のオッサンの一味だったハズだ。
先程の一連の流れは、高みから見物させていただいてはいたが、……まさか、本当に独り取り残されていたとは。
あの原作者もなかなか酷なことをするなと。

俺は、取り立てて何か特別な感情を抱くことはなく、そいつに語りかけた。


「おい、俺たちに何か用か」


……まあ、正直察しは付いているのだが?このままでは一向に話が進まないような気がしてならないので仕方がない。
俺が問うと、そいつは身を潜めていた木陰から身を乗り出し、俺たちに歩み寄ってくる。


「あ、あのォ……す、すみません……僕……」


怖ず怖ずと口籠りながら、口許に愛想笑いを浮かべる。


「僕、あの、実は、帰り道がわからなくなってしまったと言いましょうか……帰り方がわからなくなってしまったと言いましょうか……」


そいつはチラリ、と銀時に視線を向けた。
助けを求めるような、眼差しを注ぐ。
当の銀時はというと、そいつを無表情でジッと眺めているだけだ。
背中に視線を返すと、坂本は相変わらずニヤ付いた顔をして顎を擦っているし、桂は得体の知れない相手の素性を吟味するように眉を潜めている。
俺は再び相手に向き直る。
沈黙が流れ、みるみるうちに男の顔は曇っていく。
……そろそろ泣き出すんじゃあないか、コイツ。
俺がそんなことを考えた時、黙り込んでいた銀時が突然口を開いた。


「……良いんじゃない?連れてってやれば」


その言葉に、俺は銀時の顔を見る。


「お前何言って……」


「良いんじゃん別に。コイツ敵じゃないっぽいし、助けてやったら」


そう言って銀時は向こうへと歩み寄る。


「お前、名前は?」


「え、あ……し、新八です、志村新八……」


「ふうん。新八、ね、」


「新八、……志村新八」銀時は、そいつの名前を繰り返し呟いた。
俺は、銀時のそのらしくない措置に僅かに面食らっていた。
コイツは昔から、自ら好んで他人を懐に迎えるような奴では決してなかったハズだ。
幼い頃からコイツを見てきた俺や桂は、それをよく知っている。
桂に視線をくれると、桂も同じように俺を見て、この状況に困惑している様子だった。


「……よっしゃ、ついて来いよ、新八」


銀時は、新八、と名乗ったそいつの胸元を一度ぼすりと拳で打つと、先陣を切って歩き出した。
軽く足音を鳴らし、妙に機嫌よく歩く背中が、正直、不気味でならない。


「……ッ!は、ハイッ!ありがとうございます、えっと、ええっと、……」


「銀さんっ!」新八、が、晴れた表情をして銀時の名をそう呼んだ。
……その一言に籠められていた、敬愛の情念。一瞬端から聞いていただけも、まざまざとそれが伝わってしまう程の。
俺は、新八を見る。
新八は「よろしく、お願いします!」と、俺達へと一礼を寄越す。


「……」


背後で坂本が「おお!コッチこそよろしゅう頼む!」と無駄にデカい声を張上げ、桂がふっ、と息を漏らす。
俺は、といえば。
小さく溜め息を溢すのだった。
……銀時の手前勝手は、何もに今に始まった事ではい。
今さら、どうこうと口を挟むのも七面倒くさい。
責任は全て銀時に取らせておけば良いのだし。俺は知らん。


「……言っておくが、俺たちに出来るのは多少の飯と寝床を提供してやれるくらいだからな。後は、自分で何とかしろよ」


俺が念押しすると、新八は拳を握り締め「ハイッ!」と息巻いて返事をする。
……本当に分かってるんだろうなあ、コイツ。
俺は再び、溜め息を吐く。
そんな俺の様子も浮かれて見えていないのだろうか。
新八は歩みを進め距離を詰めてくる。


「本当に、ありがとうございます!えっと、……高杉、さん?」


やや見下げられる形で、俺は新八と向き合うこととなった、……………………。


「―――あ、そういやさぁ、新八って今いくつくらいなワケ?俺たちとおんなじくらいなのか?」


突如、銀時が振り向きもせず新八に問う。


「えっ?僕ですかァ?今は二十一ですけど……」


「それが何か?」新八は首を傾げながら応えた。


「へえー、もう二十歳過ぎてんの。なんだ、俺たちより年上なんじゃん。お前、童顔ってよく言われるだろ」


「えっ?あ、はあ……?」


イマイチ会話の要領を得ない様子で、視線を宙にさ迷わせている。


「それに歳の割りには背丈も小さいよなあ、な、そう思わねえ?…………………高杉くん?ねえ、俺の話聞いてる?ね、高杉くん?」


……くるりと、タップでも踏むような軽快さで銀時が振り向いた気配。


「……………………あ、ごめん」


……コイツ、ほんといつか殺したい。


「ええ?こう見えても昔に比べて結構身長伸びたんだけどなあ……標準くらいはあると思うんですけど……」


相変わらず、新八は俺の様子などお構いなしに会話を流していく。


「……ま、とにかく行こうぜ。俺、実は二日酔いで頭痛ェんだよ。腹も減ったし」


「ね、低杉くん。あ、いっけネ間違えたァ。高杉くゥん」考えるより先に、その人を小馬鹿にした銀時のニヤケ面に渾身の飛び蹴りが炸裂した。






(ブルータスお前もか!!!!)


__________



その後新八くんは無事に帰ることが出来たとか出来なかったとか……(:3_ヽ)_



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