夢に溶ける。(完結篇小ネタ)
2014/01/10 07:21

※2000%捏造な完結編小ネタ第二段です┏(´⌒ω⌒`)┓イラッシャーイ…



夢が溶ける。


背景が白い。
ああ、自分は、死んだんだっけ。
ちゃんと、死ねたんだっけ。
暖かくも、寒くもない。
痛くもない。
悲しくもない。
ただ少し、寂しいかな。

笑ってみたら、案外上手く笑えた気がした。


「馬鹿だなあ、アンタは、相変わらず」


「……馬鹿だなあ」誰かが目の前に立ち塞がり影を落とした。


「ホント、バカみたい、バカよ、大バカ」


影は、もう一つ。

……馬鹿とは何だ、馬鹿とは。

知っているようで知らなくて、でもやっぱり知っている。その懐かしい罵倒の声が、全身に熱を通わすような、錯覚。

相変わらず、クソ生意気な餓鬼共だ。

両の手に、添えられたそれぞれの手。
―――銀時は見上げた。
昔からは想像も付かなかったほど、魔法でも使ったのような成長ぶりを改めて間近で感じ、溢れ落ちる微笑みを止められなかった。


「どうせアンタはまた、一人でどっかにいくつもりなんだろうと思って、仕方ないから、迎えに来てやりましたよ」


眼鏡を直す仕草が、妙に様になって貫禄を醸し出している。


「そうよ、もう、何処にも、一人でなんていかせてやるもんですか」


……いっちょ前に、標準語なんて使いやがって。
銀時は、添えられた二人の手を握り返した。
新八と神楽は、僅かに目を丸くする。
銀時は目を細める。すると二人の目頭がみるみる濡れぼそっていくのを見て、銀時は、また可笑しくて笑ってしまった。


「……相変わらず甘ちゃんだなァお前らは。良いか?いい大人ってのはなァ、涙はとっておきの時に出し惜しんで取っとくもんだ」


銀時は、ゆったりとした動作で両腕を持ち上げ、そして屈んだ体勢の新八と神楽の頭に、手のひらを静かに添えた。
試しに左右に撫でる仕草を取ってみるが、やはり感覚がないのが、少し寂しかった。
それでも、新八と神楽は、堰を切ったように涙を溢し始めるので。
銀時はギョッとして二人の温かくも冷たくもない滴を手の甲で拭ってやろうと押し当てた。


「あーあ、ダンナァ、駄目じゃねェですかい、幼気な青少年達泣かせちゃァ」


……と、また、聞き覚えのあるその声。


「ふんっ、五年経っても相変わらずグズ野郎だったみてえだなァ、てめぇは」


相変わらず剥き出しの敵意で、銀時を貶めるその台詞は。

銀時は、新八と神楽の、更にその向こうに視線を向けた。
先の二人分だけではない、いつの間にかまるで三人を取り囲むように、そこにずらりと並んだ人影。
……どいつもこいつも忘れられるはずのない、馬鹿共の、懐かしい顔。

……一人、どうしても目を引いてしまうのは。
自分と同じく、真っ白な病に犯されてしまった、少女の姿。
銀時の眉間に力が籠る。
「すまない」と、銀時が視線に込める前に、少女は微笑んだ。
銀時は目を見開く。すると、宙に浮いていた銀時の手が、再び二人の手に取られていた。


「……いきましょう、銀さん。みんな、待ってますから」


しゃくり上げながら、新八が言う。


「もう何も心配いらないから、銀ちゃんは、もう、一人ぼっちになんて、ならないから」


目蓋を真っ赤に腫らしながら、神楽は笑う。


「一緒に、いこう?」銀時の手を、二人が引く。

銀時は、腰を上げた。
白い世界に、立つ。
銀時の手を引いたまま、二人が歩き出す。
一歩前に歩く二人が振り向く。
新八が笑う。神楽が笑う。

笑って、くれる。

やがて立ち塞がっていた人影も、やれやれ、とそれぞれ銀時達に視線を向けると、背中を向けて、同じ方向へと歩き出した。

目が眩むほどの光が、全てを覆っていく。
銀時は、泣いていた。



夢が、蕩けていく。



__________



完結篇捏造夢落ち篇第二段-=三ФωФ)

五年後坂田のところにも、誰かがお迎えに来てくれたなら、と思いました。それが都合の良い夢だったとしても、最後くらい良い夢見たってバチはあたらないって。



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