毎日寒いですがここで一つ僕の恋人を紹介します(土新)
2013/12/15 05:23

『ちょっとばかし、面倒見てくれねえか』
早朝、突然掛かってきた電話の内容に新八は目を丸くした。
電話口のその声は、ガラガラとしゃがれて渇いた声をしている。
「……風邪ですか?」新八が問い掛ける。
すると『ああ』と更に渇いた声が返ってきた。


話をざっくりと要約すれば。
「風邪を引いてしまったので今日一日、家を貸してもらえないだろうか」という話だった。
……風邪を拗らせて報告をくれるようになったことは別に構わないが、何故、わざわざウチに?
新八が首を傾げると、相手は少し戸惑った様子で、僅かに言い淀んだ。


『……俺が風邪を引いて、今まで大人しく寝られていた試しがない』


間を置いて苦々しく告げるその声に、新八は「……ああ、なるほど」と頷き苦笑を漏らした。


『……まあ、お前にも都合があるだろうし、無理にとは言えねえが……』


そこまで言うと、ゲホ、と咳き込んだ。

……新八は、誰が見ているわけでもなかったが、とりあえず一瞬考える素振りをした。


「……良いですよ?別に」


冷静でいようとする頭とは裏腹に、そわそわと擽り出す気持ちが向こう側に伝わらないようにと、極力抑えたトーンで新八は告げる。


「……仕方ありませんね。じゃあ今日は、僕もお休みもらいます」


指先で受話器から伸びるコードをぐりぐりと弄くって、徐々に落ち着きがなくなってきていることに新八は気が付いていない。


『……いや、別に、俺は今日一日寝床さえ貸して貰えたら……』


「はい?何でしょう?」


「―――土方さん?」……風邪のせいかなあ、ちょっと声が聞き取り辛いなあ。
折角盛り上がってきた話をそんなナンセンスな台詞で台無しにしようだなんて、それこそナンセンスの塊ですよ?
新八はコードを指に巻き付けながら、土方の返答を待った。


『……いや、何でもない』


……大人しそうな眼鏡に見えて、一度言い出したら聞かない奴だ、新八は。
電波の向こう側の土方も、勿論新八自身も、それを承知している。
予想するに難い土方の返事に、新八は頬を上げる。


「じゃあ、布団敷いて待ってますね?」


新八が態とらしく言うと、『……その言い方は何か色々語弊を生むからやめろ』と土方のツッコミが入る。


『……お前なんか、楽しんでねえ?』


咳き込みながら、やれやれ、と首を振る土方の姿が新八の脳裏に浮かんだ。


「そんなことありません。僕、すっごく心配してます、土方さんのこと」


「だから、……待ってますねっ」まるでデートの約束でも取り付けるかのように言う新八に、『……ほんとかよ』と、土方は返す。

……満更でもない。そんな表情を浮かべた土方の顔が、やっぱり新八の脳裏には鮮明に浮かんでいた。




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そんな僕の彼女を紹介します



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