これじゃない(小ネタ/ネタバレ)
2013/12/12 04:11

※突然の、今週までの本誌内容の小ネタです。コミックス派の方はどうぞご注意くださいませ!-=三ФωФ)ピュピュピューン!!!!





何か、違うなあ。
土方は目の前に広がる薄味な夕食に箸を付けながら思う。
まあ、何か、というか、何もかもがおかしくなっているのは、自分自身のことだ。

……相変わらず薄味で質素な筑前煮だな。……美味いが。

ただ、そろそろマヨネーズの味が恋し過ぎて箸を持つ度に卵と酢と油への愛と共に、涙まで込み上げてくるので辛い。
子供に隠れて夜な夜なこそこそとマヨネーズを求め冷蔵庫の中身を物色する生活も、そろそろ虚しく感じ始めてきたし。
甘辛く煮込まれた人参を咀嚼しながら土方は眉を潜めていた。


「……何かありましたか、社長」


ソファの正面で共に夕食をつついていた新八が、鋭く瞳孔の開き気味な眼をして土方に問い掛けた。


「お口に合いませんでしたら、作り直しますが?」


眼鏡をくい、と上げながら、新八は言う。
その様子に、さして落ち込んでいるとかそういう雰囲気はなく。
ただ「それが務めですから」と言わんばかりに淡々としている。


「……いや、いい。これで」


土方はそう新八を制すと、炊き立ての白米を口に含んだ。
「そうですか」新八が応え、まるで事務的な会話が終わると、それきり食卓には沈黙が降りた。

土方は行儀悪く口に収めた箸を甘噛みしながら考える。
……やっぱり何か、違う。
新八と同じように自分の隣で食卓を囲む神楽を盗み見る。
そちらもまた、行儀良く黙々と、茶碗に大盛りの白米と筑前煮を交互に口に運んでいる。
……お前も、そんなキャラだったっけ?
土方は僅かに肩を落とし、また新八に目をやった。

……分かっている。いや、正確には少し想定外だった。
というか、正直自分は悪くないんじゃないかと思っている。
確かに先に財力をチラつかせ手綱を取ろうとしたのは誰でもない、土方自身の振るまいではあったのだが。

それにしたって、だ。

―――効果覿面過ぎるだろうが、この金の亡者共ォォォォ……!!

この腐れパーマは、一体どれだけとんでもないろくでなし野郎だったのだろうか。
情けないやら、新八や神楽への同情心やらで土方は頭を抱えて泣きたくなった。

ばちっ、と新八と視線が合う。
土方は複雑な心境で新八を見る。
そんな土方の面持ちに、新八は箸で米を掬いながら小さく首を傾げた。


「……」


土方は茶碗を傾け、米を口いっぱいにかき込んだ。
咀嚼仕切れず膨らんだ頬に、さらに筑前煮を無理矢理押し込む。
新八は目を丸くして土方を見た。
神楽も恐らく、隣でそんな顔をしている。

……土方とて、こんな風に共に暮らす日々を、夢見ていなかったわけでは決してなかったのだ。が、

―――でもやっぱり何か違うっつうか、……いやなんかもう全然、違うんだよォォォォ……!!


と、流石に詰め込み過ぎで喉を詰まらせる土方に「社長!?」と新八と神楽が飛び上がる。
そんな二人を横目に土方は、早く元の身体に帰りたい、と。心の底から強く願っていた。




__________


何か、思ってたのと違ったらしい。




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