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6

映画館につき、上映時間が10時55分とある。先に座席を取っておこうと、チケット売り場で座席を確保する。ちゃっかり萩原くんもチケットを取り、つつかれている。

「後30分、どうしよっか」
「確かそこに喫茶店あったよな」
「じゃあそこで」

そう決まれば映画館の目の前の喫茶店に入ろうとして、足を止める。ヒロくんとゼロくんが目を合わせて、頷いて、走る。

「えっ、忘れ物?!」
「……あ、うん。そうとも言う?」

……逃げるな!と言うゼロくんの声が聞こえた。その声が聞こえ萩原くんの顔がサッと青くなる。『忘れ物』が何であるかわかったらしい。

戻ってきたゼロくんは、萩原くんと同じように捕まった癖毛の男に、珈琲奢れよ、と言う。ゴチになりまーす。

苦笑いのヒロくんとその後ろの男、そして萩原くん。とりあえず入るか、とヒロくんが促すので、某喫茶チェーンに入った。


「で、梨杏ちゃんは、何処の大学なの?」

ヒロくんとゼロくんに挟まれたテーブル席。前には二人の同期、萩原くん、松田くん、伊達くん。ココアを飲んでいると、そう萩原くんに聞かれる。守秘義務でも何でもないし、それに二人がいる。メタ的なことを言うと、本当のことを言っても大丈夫なことは確信してる。

「防衛大」
「防衛大ってあの防衛大?」
「うん、防衛大学校」

降谷と同類か、とぼそりと、漏れた松田くんの声を聞き逃さなかった私とゼロくん。聞こえているぞ、とゼロくんが言う。

「どういうこと?」
「え、あ、いやあ。……ははは」
「はぐらかすな、松田」
「あれだろ。防衛大ってことは文武両道なんだろ?降谷みたいに才色兼備って言いたいんだろ」
「そう!伊達、よく言った!」
「……まあ、そういうことにしておいてやる」

じっと松田くんを見るゼロくん、ははは、と笑う松田くん。

「まあまあ、そういう話は寮で、な?梨杏もいるしやめとけ」

そう、だな。と漸く威嚇していたゼロくんが落ち着く。何か話題……と考える。あ。

「ゼロくん、ナイトバロンの新刊読んだ?」
「読んだ。終盤の――」
「待った!」
「……なんだ、松田。今から張り巡らされた伏線の回収確認をするんだが」
「俺もナイトバロンシリーズ読んでんの!新刊はまだ読み終わってないんだよ」

え、と4人――私と松田くん以外の声が合わさる。なんだよ、と松田くんが言う。ヒロくん曰く、柄じゃない、とのこと。

「松田はどっちかというと漫画の方がよく読んでそう」
「漫画も読む」
「じゃあナイトバロンの――編の中盤の――とか」
「あのシーンは何回も読み直した。何回読んでも伏線がぼろぼろ出てくるよな!」

あそこは騙された、と言う松田くんに私とゼロくんのスイッチが入る。

「あそこのシーンは――が――であって、それの伏線が最初の――シーンで描かれていて」
「はあ!?そんなこと書いてあったか?もっかい読み直さねぇと」
「――編は本当に驚かされたけど、私は――編が話の中では好きだなぁ」
「本当に梨杏は――編好きだな」
「――編と言えば、――が良かったな」
「……なあ、諸伏」
「何も言うな、萩原、伊達。ナイトバロンが発売された日に、買って次の日には、隈拵えて、二人で展開と伏線について話し合うのが、常だったんだ。まあ、こうなるよな」

松田が参戦するとは思わなかった、と言うヒロくん達3人の声は聞こえていない。

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