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5

夏休みと言われる時期になったら、戻ってくるよ、と言って、入校した防衛大。ゼロくん、ヒロくんとは、消灯した後に連絡をやり取りしているし、同室の先輩方にはよくしてもらっている。訓練?男に戻りたいと何度思ったか。というぐらいにはきつい。ひたすらにきつい。

で、なんとか夏期休暇を迎えた。メールのやり取りで2週間の滞在は予定してある。といっても2人に会えるのは、土日だけらしいが。外泊届と外出届を出してきた!とヒロくんに言われ、感謝した。

東都駅。長旅お疲れ様。と振り返って言ったのは、ヒロくんだ。久しぶり、とゼロくんが言う。

「ちょっと髪、伸びた?」
「あー、切ってなくてな?」
「そういう梨杏は短いな」
「邪魔だからね」
「梨杏の目が見えるし、俺は好きだよ」
「あ、ありがとう」

突然であるが、少し私の容姿の話をしよう。私の髪は黒だ。焦げ茶でもない黒。しかしながら、目の色は、琥珀色だ。光の角度から赤に見えたりたまに緑がかることもある。幼い頃にゼロくんの色を誉めたが、ゼロくんは特に私の目の色が好きらしい。それを誉められむず痒くなる。

「じゃあ、帰るか!」

そう言われ、諸伏家の車が目の前にある。

「免許取ったんだよ。俺もゼロも」
「私は来年ぐらいに取るつもりだったのに」
「まあ、それまでは帰ってきたときの足にしてくれ」
「そうする」

車に乗り込む前に視線を感じたような気がして、首を傾げる。梨杏?と聞くゼロくんに何でもない、と言って、車に乗り込んだ。諸伏家と降谷家に1週間ずつお世話になるため、頭を下げる。逞しくなったわね!というヒロくんのママさん(厳密に言うと親戚らしいけど)に、頑張ってますから、と言う。遅めの昼食をいただき、二人から警察学校での話を聞いていると、門限が迫ってきたようでまた来週、と手を上げられるので、それに応じた。


母の墓参りをして、高校の女友達やら色々と会い、迎えた土曜日。
10時に待ち合わせなので、10分前に行けるよう待ち合わせ場所に向かえば、すでに二人がいる。携帯を開ける。9時48分だ。いつからいたんだ、と思いながら、談笑しているイケメン二人に近づく。

「お、早いな。梨杏」
「おはよう」
「……おはよう。早いな、って二人こそ何時に着いたわけ」
「さっきだ、さっき」

絶対嘘だ、と思いながら、そういうことにしておこう、と口を閉ざす。

「で、結局何するか決めたか?」
「うん、スパイ映画の新作!今上映されてるらしくて」
「お、いいな。んじゃ、とりあえずそれにするか」
「スパイ映画か。確かそのシリーズ好きだったな」

ここから近い映画館はあそこだな、と言うゼロくんに、んじゃ行くか、と言うヒロくん。近いのか聞けば、徒歩10分ほどで着くらしい。へえ、とこの近辺を知らないので、案内を任せる。で、7分ほど経って、足を止めた。その後ろの気配も止まった。……やはり尾行されている。

「梨杏、どうした。疲れたか?」
「いや、そうじゃなくて……」
「熱中症?」
「あ、そういうのじゃないんだよ!なんとなく背後から視線を感じるような、尾行されているような」

ストーカー?と怪訝そうに顔を上げて周囲を確認したゼロくんが、あっ、と言う。

「ちょっと待ってろ」
「う、うん?」
「あー、あいつら……」

ポンと頭に手を置いて、ゼロくんが歩く。つけていた相手を見つけたらしい。……というか、ヒロくんも知っているようだ。

「ストーカーじゃない?」
「おー、同期の奴ら」
「へえ……あ、捕らえた」

こちらが気付いたことを気付いたらしい二人の同期達は逃げようとして、一人、ゼロくんに首根っこを掴まれ、こちらにずるずると連れてこられる。ゼロくんは凄く笑顔だ、なお目は笑っていない。

「いて、ちょっと降谷痛いって!」
「萩原だ」
「え、うん」
「俺とヒロの同期。俺たちをつけていた連中の一人だ。後二人いる」

ストーカーじゃないが、灸を据えなければいけないな。と言うゼロくんは、視線を感じたらまた言ってくれ、と言う。

「で、何で萩原は俺たちをつけたんだよ」

映画の上映時間がわからないから、ともう見えている映画館へ歩きながら、ヒロくんは萩原氏に聞く。

「だって!あの降谷が外泊届け出した!その前後の週も外出届け出してるし……!そしたら先週、松田と遊びに言ってる時に、同じ車に乗り込む降谷と女の子!」

彼女だと思って!スクープだ!と思って、と言う萩原氏。もう朧気な記憶だが、見かけたことがあるので、そういうことだろう。……この人も死ぬのか。いや、そんなことをさせない。そう思って自衛官になったけど、遠回りかもしれないけど。

俺もいたんだけど、とこめかみを掻くヒロくんに、その子とどういう関係!とびし、と指して言われる。その子、とは私である。

「勘違いさせて申し訳ないけど、私は二人の幼馴染みです」

そうして、名乗る。幼馴染み……と呟いて、ゼロくんとヒロくんを見た萩原氏が名乗った。

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