Re. | ナノ
4

進級し、3年になった。
母の月命日、母の眠る墓に向かえば、花が供えられている。花と墓の状態を見れば、今日、誰か来たことに他ならない。母が死んで、4ヶ月。母の死を知り、手を合わせたい、と言った母の知人がいないわけではないが、月命日ではあるが、来るのか、と聞かれると困る。たまたまこちらに来る用事があった、と言われればそれまでだが。違和感を感じて、観察する。

「あ、花……」

違和感の正体だ。基本、花屋で売られている供花は菊が多い。私は母がそれを味気ない、と言っていたのを知っているから、いくつかの切り花をまとめてもらい、供花にしている。で、現在挿してある供花、正直言おう、私の花の選び方に似ている。違う点は、元からあった供花に手を加えたのだろう、菊の割合が少し多いところ、季節の花を選んでいないところ、母が好きだと言っていた花の割合が私より多いところ。――まさか。思い至ったことに、と狼狽える。……落ち着こう。ひとまず、その花に足りていない季節の花を加え、墓を参る。帰宅して、遺したままの母の日記帳を手に取る。父が死んだのは、17年前か。丁度、17年前の日記を探し、一度覚悟を決め、日記を開いた。


――聞いたことがある。おはかまりにいかないの?と。少し驚いたような母は、あの人は、お父さんはあそこにはいないもの、と言っていた。……そういうことか。

行き着いた結論は、父は生きている、ということだった。あの花は父が供えたもの。恐らく、先月から今月の間に、母の死を知ったのだろう。では、なぜ父が死んだことになったのか。これに気付いたのは、トージョのことがあったからだ。トージョは、自衛官だったが事故死扱いでSR班という秘密部隊にいたとか。それを辞め、お嬢の兄、キャスパーに勧誘され、色々あってお嬢の私兵になった。

その父は、自衛官だった。母の日記にそう、記されていたから違いない。亡霊となってもなお、国のために尽くしているであろう父に会いたいと、思った。……遠回りかもしれない。間に合わないかもしれない。それでも、私は可能性がある道を歩もう。別の国とはいえ、一度出来たことだ。辛いことは沢山あるが、覚悟は、決めた。自衛官になる。


来る三者面談、いや、私の場合は二者面談だが、そこで漸く志望校を決めたことを伝え、防衛大学校だと伝える。驚く担任は、女では厳しいこともあるがいいのか、と聞かれる。頷く。覚悟はできている。その様子を見た先生は頷く。先生も出来る限りのことをしよう、と言ってくれた。

先に帰って勉強してる、と言った二人にも報告しよう。そう思って、今日はヒロの家。と書かれたメールに今から向かう、と送って、学校を出た。

「防衛大……自衛官になるのか」
「うん」
「梨杏がそう決めたなら、そうしたらいいよ。あ、梨杏、そこの計算違う」
「あっ」

消しゴムで消しながら、二人の夢は叶う?と聞く。叶うだろ。と言うゼロくんに対してヒロくんは心配そうだ。ゼロくんの成績よりは低いがヒロくんの成績も普通に上だ。私は、前世の記憶がある分、その分、成績は上位だが。お互い頑張ろう、と勉強の後は体力作りと称して走り込みをした。


無事、二人の入校が決まり、漸く私の入校も決まった。全寮制なので、家のあれこれを処分する。すべてが終わったら、この家で過ごすのも悪くはない、と思いながら、整理をした。

「ほんと何も無くなったな」
「……ひとまずは人に貸すよ。空き家だったらきっと良くないし、他に家を買うときはどうするか決める」

この辺りは交通の便がいいから、と言う。段ボールが二つと大きなキャリー。鞄。それが私の今の荷物だった。段ボールはゼロくんとヒロくんの家にお願いして、押し入れに入れてもらう物だ。大半はアルバムや写真、そんな類いだ。母の日記はこれを機に全て捨てた。母という関係はあれど、秘密にしたいことはいくつでもあるだろう。たった1年を読み返すだけでも、知らない母がいたのだから。

[Prev] | [Next]
Back
Contents
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -