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3

幼馴染み、と言っては過言ではない仲の二人と共に中3になった。進路をどこにするか、と聞けば、この地域から電車で1時間弱かかる有名進学校の名がゼロくんから出る。

「実は私もなんだー」
「え、まじか。俺もだ」
「梨杏は何したいんだ?」
「んー、まだ決まってないんだよねぇ」

ゼロくんとヒロくんともうそろそろ10年が経つ。ヒロくんには死んで欲しくない、という気持ちが大きくなった。どうすれば、ヒロくんが死なずに済むのか、それを考えて、一つ対策は講じてあるが……それで、銃の引き金を引くことなく、終わるのか、その心配がある。私なら、経験があるから『組織』に潜入できる。2年間、天才武器商人を騙すだけの力はある。が、警察が同期3人を送り込むだろうか。そもそも、だ。事細かなことは覚えていないが、確か二人は公安だが所属は違ったはず。ここから、知識と照らし合わせると、警察庁と警視庁の公安と分けられる。と、なれば、一つの組織から2人同時にスパイを送り込むのは出来ない。まあ、どんな組織であれ、基本内偵は一人だ。そこにサポートがいる可能性はあれど、3人は無理そうだ。だから、どう

「梨杏?」
「……あ」
「おーい大丈夫か?急に立ち止まったんだから驚いたんだぞ」
「何になろうって考えてたら、足を止めてたみたい」
「今すぐ決めなくていいだろ」
「だって、二人は警察になるって決めてるのに」

幼い頃から警察になるんだー!と言って、今もその努力を怠ることなく励んでいるのだ。……なんというか、応援してるだけじゃな、とかそう思うのだ。

それが決まることなく進学した高校。そろそろ受験生かぁ、と既に志望先を警察学校に目指した二人を応援しながら、さてどこにしようか、と考えていた時期だった。授業中に私の名を呼んだ学年主任は酷く狼狽えていた。


「貴方のお母さんに間違いありませんか」
「――はい」

交通事故で即死、だそうだ。昼から仕事だった母は、通勤中の道で突然暴走した車に引かれたらしい。その運転手は心筋梗塞を起こしており、事故の際に死亡。被疑者死亡のまま、送検するという。

安置された母をボーッと見ていると、夕方だった。一度、霊安室から出て、売店で水を買う。

「君が、矢嶋梨杏ちゃん?」
「はい、そうですが……。どなたでしょうか」
「私、矢嶋有未様から、矢嶋梨杏様宛に遺書を託された者でございます。私は、弁護士の河合乃愛と申します」

遺産相続から、親戚の話。高校生であるから一人暮らしでもいい、とかかれている。あの家は、父が死んだ際の保険で支払われた持ち家で、好きにするといい、と書かれている。母の死、遺書、それを見ているのに実感が無く、その日帰宅して、漸く独りを実感して泣き崩れた。

親戚は、いたとしても遠縁しかいなかったらしい。私も知らない人なので、母が死んだこと、通夜と葬式の日程を手紙で送った。しかし、母を慕う人は多かった。職場の同僚、友人、幼い頃から世話になっていたという患者、様々だ。母は幸せだっただろうか。遺影を見ながら、問い掛ける。……返事は当然返ってこない。……どうか、父と私を見守っていて、と思っていた。


喪を明け、学校に復帰し、数週間後に試験が始まり、春休みを迎えた。遺品整理中に、塞ぎ込んでいるんじゃないか、と心配した幼馴染み二人に大丈夫だよ、といいながら、遺品整理中なの、と言うと、二人の表情に翳りが見える。

「辛いけど、大丈夫。そんな顔しないで」
「……もしよかったら、俺も手伝っていいか」
「え?」
「俺もいいなら手伝う」
「でも」
「触ったらダメなものは触らない。梨杏が独りで寂しい思いをするなら、俺も一緒にいる。独りじゃない」
「たち、だろ?ゼロ」

それに力仕事なら任せとけ、というヒロくん。

「……ありがとう、二人とも。じゃあ、手伝ってくれる?」

ああ!と二人が声を合わさった。

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