Re. | ナノ
1

覚えているのは、欲しい本を買って、歩行者天国を歩いていた。そこで響いた悲鳴、それに振り返れば目の前に車。暗転。

目を覚ませば転生していた。と、答えに行き着いたのが、4才の頃。知らない言語で話しかけられ混乱しないはずがなかった。状況に漸く理解が追いつき、そして、受け入れた。暴走車に巻き込まれた私を憐れんだのか知らないが二度目の人生なのだ。やりたいことをやって楽しもう。……しかし、この神は嫌がらせも好きなのだろうか。

「レナート」
「マードレ!」
「きゃーっ、なんてかわいい子なの!」
「確かに子どもはかわいいが……レナート、小さい頃はかわいいでいいが、大きくなったらかっこいいって言われる男になれよ」

……レナートは、私だ。しかし、男である。転生したこと、この地がイタリアであること、そこまでは受け入れた。しかし、男であるということ、それに絶句した。確かに、前世と言われる頃に、男になりたいと思ったことは何度かある。しかし、本当に男になってしまった。笑う。そうして、私……いや俺は近所の女の子にこの体の初恋に落ち、男であることを受け入れた。

前世を教訓に勉学に、スポーツ、体力作り、様々なことに積極的に励んだ。まあ、前世の因果もあり、コミュニケーション能力は最下点から徐々に上げようと奮闘中だ。したいこともないまま、小中を終え、高校。進学にしておくか、と漠然と考えていたら、両親に進学を渋られた。前世と変わらない年代なのだが、前世とどうやら世界が違うのだ、と知ったのは中学の頃だ。社会科目を受けていれば、前世よりも(もしかしたら日本で平和ボケしていただけかもしれないが)国際情勢はよくなかった。だからかしれないが、軍への勧誘がポストに何度か入っていた。

閑話休題、両親の提案は士官学校に行くことだった。大学に行くだけの金銭はないのだと、謝られた。士官学校なら、授業料も要らない、レナートならきっと立派な軍人になると、そう信じて両親は話す。その提案を受ける。何事も経験になる。死は怖い、が、もし戦争が始まることを考えても、軍人としての経験は活きるだろう。若いうちは軍人として国のために働くのも悪くない、と思った。ついでに給料の面もいい。退役したら日本に暮らしたい、と何年か後の夢を抱いた。

そうして、何度も嫌になるほどの訓練に耐え、俺はベルサリエリという部隊に配属された。狙撃兵の意味を持つその部隊の情報担当、上にボスニアの情報収集を命令されてから知り合ったソウ。俺の協力者家族を救ったソウに誘われ、軍を抜けた。確かに『こちら』の世界は楽しかった。そんな時だ、潜入を命令されたのは。CIAのスパイとして、ココ・ヘクマティアルの私兵になった。

それから2年。俺はお嬢について未だにわからない。しかし、何かを始めたのは、理解できた。そんな折だ、CIAからの殺し屋が来た。これは『オペレーション・アンダーシャフト』に則っていない。殺してしまえば、ココ・ヘクマティアル篭絡計画(オペレーション・アンダーシャフト)は失敗する。パラミリのヘックスの狙いはヨナだった。まずい、瞬時にそう判断し、ソウにヘックスを止めるように進言した。非番であったのが助かった。お嬢にスパイであると告白し、ソウをこちら側につかせた。CIA(ソウ)の協力もあり、お嬢とヨナを逃がし、対面したヘックス。撃ち合い、俺が覚えているのは、自身の体に力が入らず倒れる瞬間だった。

[Prev] | [Next]
Back
Contents
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -