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12

特務部所属から半年。バーも探偵業も軌道に乗り始め、エコーは警察の試験を合格し、それをバーで祝った。定期的に連絡を入れているヒロくんから、謝罪の言葉と共に連絡出来なくなる旨を伝えられて、寂しいなあ、という気持ちを抑え込んでいたら、目を反らしていた件がもう3週間後に迫っていることに気づいてしまった。ことの詳細は覚えていない、覚えているのは電話中に遠隔操作で爆発し、それに萩原くんが巻き込まれることぐらいだ。

「お、考え事か、アール」
「ええ、まあ」

そういう今日はエコーと飲みに来ていた。酒が入って気分がいいエコーはそういやさ、と笑いながら聞いてきた。

「お前、ノーマルなの、バイなの」
「ぐっ!?」

予想外の質問に呷っていた焼酎が気管支に入りかけ噎せる。エコーを見れば、それを見て更に笑っている。

「興味本位だよ。女、男、女になって恋愛対象、どうなんの?」
「げほっ……別に。ノーマルだと思いますけど」

前は普通に女が好きだったし、と言いながら焼酎のお代わりをする。

「へえ、そういうのって身体に合わせられんの?」
「ま、構造が違うので、そういうもんだと思ってますよ」
「はーそういうもんなんだ。抵抗なかった?」
「そりゃ男に生まれたのはパニクったけど、幼少期に淡い初恋したもんで吹っ切れましたよ」
「ははは、なんだそれ!」
「ま、お陰で男として振る舞うのは得意ですよ」
「お前、女の扱い上手いもんな」
「伊達にイタリア男やってなかったですから」
「かー!その仕草、男がやってたら女が釣れてた」

髪の毛を掻き上げる動作をそう言われる。はあ、と呆れながら、焼酎を飲む。

「そういえばエコー。どうして事務官に?」
「聞いちゃうー?」
「エコーが話していいと思うなら。ちなみに公安警察は酒に弱いやつは解雇されるとか言う話ですよ」
「ははは、気分はいいが、酔ってはいないさ。別に、自衛官でもよかったけど、それじゃあ前と変わらねえなって思って」

苦手だった勉強を真面目にやってみただけだ、と笑う。

「ちなみに、乗り物なら一通り免許持ってる。車からヘリ、はたまた船まで、任務に必要なら呼んでくれ。あと、前世ではあんまなかったIT関係が本職だ。ハッキング辺りは俺の十八番」
「その辺はさっぱりだから教えて貰えると助かるよ」
「だから基本サポート役だったんだが、ま、これからはこの通りだ。一応鍛えてて正解だった」
「まあ、私が警視庁に潜入なんてしても即行バレるでしょうし、エコーの方がいいでしょうね」
「即行バレるって……」
「聞いてませんか?」
「そういやゼクスに面割れてないお前の方がいいんじゃねぇかとは聞いたが、ダメだって言われてな」

公安と言えど、理由があり潜入した白側の血縁を簡単に斬ることは出来ない、そう言われたらしい。

「それもあるけど、私は幼馴染みに警察官が二人、幼馴染みの友人3人も警察官。しかも防衛大学校在学中は帰省する度、会ってたし」
「そりゃダメか。特務部じゃ俺が適任ってか」

公安のコネあり、顔見知りはその人ぐらい。理由をつらつらと並べるエコーは、どうして父が出向出来ないかを言っていない。

「それに、何より生者、だからね」
「前提の話が違ったわけか。ま、あの人が警察になっても色んな意味で目立ちそう」

金髪とか、と言われて過るのはゼロくんの後ろ姿。……萩原くんの件、どうしよう。

「……おい、マジで大丈夫か、アール」
「あ、ごめん。金髪って聞くと幼馴染みを思い出して」
「……警察官の?」
「ついでに肌は褐色」
「まじか……ってはぐらかされねえぞ!?吐け!」
「……友人が死ぬ夢を見ただけだよ」

夢を見たのは本当だ。タイマーの止まった爆弾、電話に応じる萩原くん、和気あいあいとして、ふと爆弾に視線をやって、タイマーが動いていることに気づいて0:00を指して――目が覚めた。

「……爆処理に所属してる友人でね」
「またサツ……」
「爆弾の止まったはずのタイマーが再起動、カウントがゼロになったところで目が覚めたけど、心配になるよね」
「連絡すればいいんじゃね?どうせ矢嶋梨杏名義も残ってるんだろ」
「……まあ、たまに連絡来るしね。今、矢嶋梨杏が音信不通になることは、あり得ないからね」

本来なら、幹部候補生学校で講義を受けているはずで、陸上自衛隊なら、任務や訓練で数日は携帯を触れないこともあるが、月単位で音信不通にはならないだろう。まあ、海上自衛隊なら、あり得るかもだが。

「……明日、連絡してみるよ」
「そうしろ、そうしろ。とりあえず、また飲みに行くわ」

じゃあ、先輩が奢ってやろう!とご馳走になった。

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