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9

「………………」

浮上した意識に逆らわず、同時に目を覚まして身体を硬直させた。だって、目の前にゼロくんの寝顔がある。寝落ちする前のことを思い出す。二人と話していたけど、睡魔に負けたような記憶がある。じっと見ていても目を覚ます様子はない。いや、それにしても、ひんやりとした部屋の割には冷えやすいお腹周りが暖かい。いや、人肌温度だ。そろっと下を向くが布団で見えない。多分、ヒロくんの腕がお腹に回っている。ついでに私の手が何か人肌温度のものを掴んでいる。びっくりして声を出しそうになって、閉じた。危ない、二人を起こすところだった。そっと掴んでいたものを離し、ヒロくんの部屋に立て掛けてある時計を見る。5時47分だ。うん、いつも通りの起床時間ではある。……状況把握に2分かけたのだけど。

さて、どうしようか。起こすには忍びなくて、でもいつものルーティン(夏期休暇ver.)では、6時になったら5分で布団を片付けて、着替えてストレッチをするのだけど、ぐっすり寝てる二人を起こすのはやっぱり忍びない。大事なので2回言った。しかし、相変わらずゼロくんは綺麗だ。寝顔なんてもう何年も見ていなかったけど、整ってるなあ、と言う感想しか出ない。しかし、これだけ見ていたら起きそうだけど、寝たのが遅かったのか、それとも安心しきってくれているのか。こうやって周囲に気を使う必要も無く眠れるのも、きっと今のうちだ。かくいう私も、寝落ちするなんて、かなり気が抜けている証拠だけど。二人の側なら安心できるのだから、仕方のないことだ。
…………で55分になった。そろそろ決断をしないといけない。ゼロくんも多分ヒロくんも爆睡だ。だってヒロくんは微動だにしないもの。寝息が聞こえているので、起きている様子はない。…………起こさないように起きよう。そうしよう。6時になった時計を見て、起床ラッパの音が脳内に響く。毎日聞く影響で幻聴を聞く羽目になった。内心で苦笑しながら、身体を起こして、ヒロくんの腕をほどき、そーっと抜け出す。洗面所で顔と歯を洗い、部屋として使わせてもらってる客間で、ジャージに着替え30分ほどストレッチをして、客間から出る。土日の諸伏家は7時30分頃に朝食を取るので、空き時間がある。そうっとヒロくんの部屋を覗けば、相変わらず二人は微動だにしない。ヒロくんの部屋にある本を拝借して二人を眺めながら、読書を始めた。


…………ちょっと言おう。後悔した。なんだあれ。30分でその小説の3部あるうちの1部を読み終わって、閉じた。ちょっと続きを見る元気はない。ゲンドウポーズしてても許されるよ。えげつない復讐だった。容赦なさすぎ。
本棚にそれを直し、時計を見る。7時を少し過ぎた辺りだ。

ゆるゆると目を覚ましたらしいゼロくんが寝惚けている目から、目の前の状況を認識したらしい。はっ、と意識を覚醒させたゼロくんががばり、と身体を起こす。

「おはよう、梨杏。早いな」
「服!着て!」

上裸だった。正直言って、上裸であることをとやかく言うのは今更だ。毎日乾布摩擦をするために上裸の男子達を見るし。でも、あれだ。一緒に寝てたゼロくんが上裸だったのだ、少し驚く。

「……ん」
「あ」
「すまん、起こしたな」
「おー、はよ」
「おはよう、ヒロくん」

布団から抜け出したヒロくんは上にTシャツ、下にトランクスだけだった。ズボンを履くヒロくんが顔洗ってくる、と言うので、俺も、というゼロくん。

戻ってきた二人と1階のリビングに向かう。おはよう、というヒロくんの家族に各々挨拶を返しながら、キッチンに用意された物をテーブルに移す。ゼロは緑茶か、と聞きながら、冷蔵庫からペットボトルを出す。自分のコップに玄米茶を入れて、椅子に座る。いただきます、と手を合わせた。


朝食を食べ終え、食器を洗い、時計を見る。なんだかんだ8時半前を示している。ぐっと身体を伸ばす。

「どこか行くのか?」
「ランニングと筋トレ」
「俺も行く」
「じゃあ俺も」

ジャージ貸すわ、というヒロくんにゼロくんが礼を言う。先に河川敷に行っておくと伝えて走る。こういうのは各々のペースで行く方がいい。


筋トレやらランニングを終え、ヒロくんの家に帰って、順番でシャワーを浴びて、ナイトバロンの新作談義に入った。

「ヒロ、そろそろ時間だ」
「まじかー。時間経つの早」
「あっという間だね、ほんと」

警察学校の門限が迫っているらしい二人は荷物を纏める。私も、降谷家に行くので、キャリーに必要な生活用品を入れる。

「ゼロくん、家に持っていく必要のあるもの、ある?」
「……すまない。これを」
「うん、わかった」

諸伏家に泊まるために持ってきた着替えの入った紙袋を受け取る。じゃあ、来週。と言ったゼロくんとヒロくんに手を振った。



あっという間に帰省期間の2週間が過ぎ去った。最終日前日は幼馴染みと友人へのお土産を買いに行き、見送りに来た二人とその家族にありがとう、と伝える。

「次は冬期休暇か?」
「そうだね。一人でお正月は寂しいし」
「安心しろ、一人にはさせないさ」

また連絡する、と言う二人に頷く。乗車する新幹線がそろそろ発車する時間になったので、じゃあ、また、と言って、手を振った。

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