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誓いをその目に

※原作じゃない4次(冬木大災害あり)から原作5次が始まる。
時間軸としては5次開始直前。
ディルムッドは4次のとき、黒雲家に召喚されて、楓の父親のサーヴァントだったが、衛宮切嗣の策により父親は人質に取られて、ランサーの命と引き換えに、と交渉(脅迫)を持ち掛けられたが、令呪を以て娘を守れと命令され、父親は殺された。母親はそれより先に死んでいる。
この10年、ディルムッドは正式に楓と契約したり、戸籍作ったり、保護者(兄)として頑張ったり、呪いを鈍くしてもらったりした。
令呪は右目にある。医療用の眼帯で隠している。
魅了は楓にはきかない。


「………何、これ」

べたべたとまとわりつく。ナニカに楓は気づいた。これでも魔術師、いや、魔術使いの端くれ。魔力が少し吸われていることに気づく。
………でも、こんなことはやっちゃいけない。と楓は校舎を歩きながら、ディル、と念話で呼んだ。

『どうされましたか、カエデ様』
『この…結界、だっけ。魔方陣の在処、突き止めて』
『わかりました』

「おわっ!」
「!!」

念話に気を取られていて、人にぶつかる。

「ご、ごめんなさい。私、ぼーっとしてて」
「いや、大丈夫だ。そっちこそ大丈夫か?」
「あ……はい」

そう言って、伸ばされた手を掴んだとき、右目に熱を持つ。そのとき、楓は魔術回路を閉じることで、熱を冷ます。

「どこかぶつけたか?」
「あ、いえ……大丈夫です。では……!」
「おい……って行っちまった」

楓は走って、教室に入る。教室には誰もいない。

「(一昨日の遠坂さんは早くに来て、昨日は休んだ……。なら、遠坂さんが結界を張る可能性はぐっと減った)」

父の遺した資料を読み込み、ディルムッドに聞いたことで、聖杯戦争についてはそれなりに知っている。クラスメイトの遠坂凛が魔術師であるのを知っている。だからこそ、楓は困惑していた。

「(どうして、10年で令呪を持つ人が……)」

5、60年に一度の聖杯戦争。それが、10年の月日を経て再び始まる。それに遠坂さんは当然参加するから、と考えていたが、この結界は遠坂によって張られたものではないと予想すると誰が、と考える。
そう、ぼーっとしていたら、1日が過ぎてしまった。

『ディル』
『はい、カエデ様』
『どこに魔方陣、あった?』

「こちらです」

放課後、部活動に励む人と帰宅した人に別れたとき、楓はディルムッドを実体化させ、楓の手を取る。

「見つからないでね」
「ええ、気配を感知したら、霊体化します」
「うん……そうして」

そして、ディルムッドと楓が魔方陣を見て回ってから、魔方陣の本体であろう屋上に行き、魔方陣を弱体化させたとき、武器同士がぶつかる音が聴こえ始めた。

「もう、始まってるの……!?」
「………マスター。ひとまずここは静観しましょう」

ディルムッドの提案を受け、楓は屋上から見ていた。すると、二人のサーヴァントの攻撃が止まる。二人の視線が同じ方へと向いていた。

「まさか、誰かいた?」
「そのようです。カエデ様」

そうディルムッドが楓を呼ぶと、楓を姫抱きにする。楓にとっては慣れたもので、気にすることじゃない。

「カエデ様は家にお帰りください。俺は偵察に行ってきます」
「え」

と、学校の屋上から屋根に跳び移り、家に着く。

「では、俺は偵察に」
「うん、気を付けてね」

そうして数時間後、ディルムッドは帰ってくる。

「お帰りなさい!」
「ただいま戻りました。今回の聖杯戦争のセイバー、ランサー、アーチャーとあっておりました。セイバーが前回のセイバーと同じ者でした」
「そう、なの?」

ええ、とディルムッドが頷く。そして、俺を見たとき、セイバーが驚いた、と。

「とりあえず、怪我はない?」
「はい。カエデ様にお怪我は無いですか?」
「うん、誰も来てないよ」
「よかった。カエデ様をお守りすることが私の使命」
「うん……そうだね。ねえ、ディル。私を守るのって、お父さんの令呪のせい?」
「いえ、そんなつもりは……!」
「じゃあ、ディル。もっと、肩の力抜こ?」

そう言って、ギリギリ届く肩に手を置き、撫でる。

「ですが……」
「私、ね。ずっと、ディルが嫌々私といるんじゃないかなって思って」
「そんなことを!確かに最初は前のマスターの命令でした。が、もう、その令呪の効果も切れています。それでも、貴方に俺は遣えたい」
「ディル……」
「カエデ様に誤解させていましたね。申し訳ない」
「ううん。こんな私でもよろしくね。ディル」
「はい、我が主よ」

ディルムッドが目を瞑るように楓に言う。

「うん」

楓が目を瞑ると、ディルムッドが右目の瞼にチュッとキスをする。

「ディル!?」
「俺は貴方を守ると誓う」
「うん、ありがとう。ディル」

そのまま、聖杯戦争の作戦を考えていった。



甘楽のお誕生日に。

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