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恋する

先輩、この気持ちはなんなのでしょう。静謐さんや、清姫さんが、先輩に引っ付いているとき、心の中が荒れるんです。


人理を修復した。亡くしたものは大きくて、複雑な心境のまま、出たカルデアの外は、こんなにも綺麗だったのか。私がここに来て、1年。喪ったものは大きくて、得たものもあったけど、それでも。

「ねえ、マシュ」
「なんでしょう、先輩」
「何も残らない、って、悲しいね」

いつも微笑んでいる彼の姿は無い。最初からいなかったんだと、錯覚するほど、何もなかった。彼の使っていた部屋、パソコン、それはある。マシュにあの神殿から助けられて、その影を探してしまった。やっぱり見つからなかったけど。

「…………先輩」
「……マシュ、変なこと、言って、いい?」
「どうしたんですか?」

何も残らない、そう思うと、何かを残したい、と改めて思ってしまった。一度無くして、自覚したこの気持ちは、押さえられそうにない。

「ねえ、マシュ。大好き」
「せん、ぱい?」

輪が見えなくなった。綺麗な空を見上げていたマシュの背後から抱き締めて、そう言った。確かに、命は終わりがあるから美しい。でも。

「盾だけを残して消えたマシュに、私、頭真っ白になって」
「先輩」
「もう、私の目の前で消えないで」
「先輩、泣いて」

神殿で、多くのものを無くした。確かに、みんなが私を助けてくれたから、こんなにも暖かい気持ちになれたから、覚悟は出来たのだけど。

「マシュは私の大切な子だから、絶対にもう。離したくない」
「……先輩、私」
「…………自覚しちゃったんだ。止められないから、嫌だったら、殴ってでも、止めて」
「きゃ」

くるり、と、マシュを回して、こっちに向ける。肩を持って、キスをし

「先輩、私の気持ち、聞いてくれないんですか?」
「……だって、おかしいでしょ?」
「おかしくありません。私だって、私だって、先輩のことが好きなんです!」

顔を赤く染めてそう言ったマシュに、止められなくなって、キスをした。背中に回される手に、幸せを感じながら、キスを深くしていった。

「ねえ、マシュ。ずっと、ずっと一緒にいてくれる?」
「私なんかでよければ」
「なんか、じゃないよ。マシュ」
「先輩……」

晴れて、恋人同士になって、マイルームに戻る。先輩、と呼ぶのもいいけど。

「マシュ」
「なんでしょうか、先輩」
「名前、呼んで?」
「楓、さん?」
「新鮮だ。でも、いいね。これからもよろしくね、マシュ」
「はい、よろしくお願いします、楓さん!」

抱き締めて、もう一度、触れるだけのキスをした。



恋する動詞111題『111.恋する』

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