追いかける
3部後、DIO様死んでます。
何の躊躇いもなく開かれたドアの向こうにいたのはDIOでは、敵である空条承太郎だった。
「お前は」
「…………貴方が来たということは、あの人は、もう」
DIOは人、ではないのだけれど。DIOなら死んだ、と躊躇いなく言うその人は、私をじっと見つめてくる。
「……なんでこんなところにいる、黒雲」
「…………空条くんにはわからないよ。DIOがくれたもの」
その言葉で、眉間に皺がよる。
空条承太郎と私は、一応同じ学校で同じクラスだ。私は友達もいないような人間だったので、空条くんに存在を知覚されていたことに驚きだけど。
空条くんが口を開く。
「お前はDIOに騙されてただけだ」
「そう、言い切っちゃうんだね、空条くんは。騙されていようと、利用されていようと、私はいいの。一度も忘れずに、一緒にいてくれたから」
DIOは、それをスタンド能力だ、なんて言うけど、DIOのように姿を出したりは出来ないし、何よりコントロールが効かない。過去に消えたい、と願った。それが原因だろう、なんてDIOは言っていたっけ。
「親も心配してるだろ、日本に帰るぞ」
「……いないよ」
「…………何?」
「私を自分の子供だと思う人はどこにもいないよ」
その人達から、私という存在は消えているから。
「……DIOはね、私の能力が暴走しても、忘れてくれなかったの」
人間には作用するけど、DIOは人間じゃないから。
「空条くんは忘れるよ、それに私も。私には、DIOが全てだったから、だから」
さようなら、空条くん。厚いカーテンを開けて、後ろから落ちる。私を忘れた空条くんが私の手を取ろうとして、届かない。
「貴方の、元へ」
重力にならって落ちていく感覚に身を委ねて、目を閉じた。
恋する動詞111題『2.追いかける』
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