Short | ナノ
未来を描こう

人理修復は1部で終わったんだよっていうことにしてください。


こんな未来を願っていたのかも、しれない。そう、パフェを食べるジャンヌを見て、思う。

「何、見てんのよ」
「美味しそうに食べるから、嬉しくて」

人理修復を終えて、査問官からの質問に(意味すらわからなかったのだけど)黙秘権を使って、解放されて、日本に戻ってきた。そこについてきたのが、ジャンヌ・ダルク・オルタだった。彼女曰く、護衛は一人いる方がいいと、あのダヴィンチちゃんを説き伏せたらしい。まあ、(擬似と言うべきかもしれないらしいけど)聖杯を与えたのはこの私で、聖杯を飲み干したのは、目の前にいるジャンヌだ。それで受肉して、かつサーヴァントとして力を発揮できるので、護衛にはうってつけだったわけで。ダヴィンチちゃんに多大な支援金を与えられ、ジャンヌはこの、守った世界に降り立った。
まあ、実家暮らしだった私の家に居候として紹介した時の、両親の寛大さには頭が上がらない。

と、そんなこんなで、ジャンヌに必要な生活品を集め、休憩にカフェに立ち寄ったのである。

「ま、まあ。美味しいんじゃないかしら」
「それならよかった」
「あんたも食べればよかったのに」
「私はいいよ。…………あの?」

スプーンを差し出される。そこに乗っているのは、当然、パフェの一部。

「食べなさいよ。疲れたのだから、甘いもの、でしょ」
「え、うん」
「ほら、口を開けなさい」
「あ、あー」

ぱく。間接キスな上に、あーんまでされたのだが、女の子同士なら、こんなことをするのだろうか、するんだろう、うん。

「美味しいでしょう?」
「うん、美味しい」

嘘、ちょっとびっくりして味がわからない。でも、そう言うとそうでしょうそうでしょうといいながら、パフェを食べるジャンヌは可愛いと思う。

実は、内緒であるが、ジャンヌのことが気になっている。これはカルデアにいた時からそうで、敵だった彼女がカルデアに召喚されて、可愛い一面を見たり、戦う後ろ姿を見て、ちょっとひねくれた可愛い、でも強い女の子。惹かれていたのかもしれない。女同士なんて、と鼻で笑われたら、立ち直れないし、拒絶されたら、生きていないから、言うつもりは全くないのだけど。

「それにしても外は少し寒いわね」
「その格好で、少し寒い、ならやっぱりジャンヌはサーヴァントだからかな」

ジャンヌの格好は新宿の時に着ていた服だ。かっこいい姿、だけれど、足が寒そう。

「もうちょっとしたら暖かくなるよ。そしたら、春になって、桜が咲くね。その頃に、ジャンヌの誕生日も迎えるね。お祝い、しないと」
「……え、ええ!盛大に祝いなさい!」
「………………これから、どうしようかな」
「何がです?」
「戻ってきたら、何をしよう、とか決めてなかったの。マシュに世界を見せてあげたいとか、そんなことは思ってたけど、それはマシュが社会に馴染めてから。口座に入れた給料を切り崩しながら、生活するのだろうけど、いつかは無くなるかもしれないし、仕事、しようかなって」

いつまでも、実家に世話になるわけにもいかないだろうし。

「私に渡された分で、生活は出来るでしょう?」
「確かに、そうだけど。ジャンヌにばっかり負担をかけるというか。迷惑をかけるというか。あ、海、ジャンヌにも、海を見せたい」
「貴方は、そう…………」
「?」
「まあ、いいでしょう。カエデ、約束よ」
「うん。冬の海は静かで少し怖いけど、夏の海はキラキラ光ってるんだよ」
「そう、眩しそうね」

想像して目を細めるジャンヌを抱き締めたくなる衝動に襲われそうになる。この想いは届かずとも、一緒にいられるときを大切にしたい。そう思う。



ジャンヌ・オルタ召喚祈願。

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