Short | ナノ
いつかの約束を果たすまで

1部→高校〜大学と長い間、ディオの付き合ってたし婚約までしたけど、ジョースター家焼失でディオが亡くなったと思い、泣く。そのまま一生独身のまま、人生を終える。
3部前→前世の記憶を所持したまま、転生。ディオのことを忘れられないまま、大学生になり、一人旅でエジプト旅行。夜、星空をホテルの屋上で見ていたら、誘拐されました(←イマココ)。


「助け、ひっ」

口を押さえられ、浮く体をよじれば、更に拘束される。

「逃げんじゃあない。落ちたいのか?」

怖くて目を閉じていたけれど、その声に思わず体が硬直する。二度と聞くことのないはずの声が鼓膜を揺らして、80年ぶりなのに覚えていて。

「ディ、オ」
「……ああ、覚えていてくれたのか。嬉しいよ、カエデ」

恐る恐る目を開くと、少しだけ、姿は変わったけど、私の知っている人だ。今更どうして、とか、首に浮かぶ傷は何、とか、色々聞きたいけれど、何よりも愛しのその人に会えただけで嬉しいから、首に腕を伸ばした。


「DIO様、おかえりなさいませ」

ビュンと風を切る音を聞きながら、到着したディオのだという屋敷は、重厚な扉で閉められていたけど、ディオは難なく開けて、頭上を飛ぶ鳥に、手を出すなよ、と言って、入った屋敷の中は明かりなどなく真っ暗で、首を抱いていた力が強くなってしまった。そんな私を宥めるようにディオは背中を撫でて、廊下を歩いていると、突然声が聞こえてびっくりした。

「……アイスか」
「アイス?」
「DIO様、そちらは」

ああ、私の嫁だ、なんて躊躇いも言うディオに思わず、口を開く。

「ディオ!私達はそんな」
「ああ、まだ、だったな。私のフィアンセだ。傷一つでもつけてみろ、命は無いと思え」
「はっ」

跪くアイスと呼ばれた人に名乗る。よろしくお願いします?と言ったら、恭しく頭を下げられた。

「アイス、テレンスを呼べ。このような格好で全く……」
「かしこまりました」

頭をもう一度下げて、アイスさんはいなくなる。ディオは私を抱き上げたまま、足を進める。
ディオの部屋だという厚手のカーテンで外界の光を完全にシャットアウトした暗い空間に連れられて、大きすぎるベッドに降ろされる。ディオに何があったとかそんなことを聞く前に、この館の執事だとかいうテレンスさんに連れられ、お着替え人形の如く着替えさせられ、ようやく終わった頃にはくたくたになっていて、選ばれた白のロングドレスは質感が良くて一体いくらするんだろう、とどぎまぎしながら、テレンスさんを前にディオの部屋へ赴く。

何かあればお呼びください。と言って、歩いた廊下を戻っていくテレンスさんを見送って、こんこん、とノックする。カエデか?、うん、と交わせば、扉が開く。手を取られ、ベッドに座るディオが突然強く腕を低くからディオの元に倒れこむ。

「似合っている」
「あ、ありがとう……」
「緊張しているのか?」
「だって、ディオったら、執事がいるような人になっているのだもの」
「以前もそうだっただろう」
「確かにそうだけれども……」

ディオは、ジョースター家の息子として執事がいた身の人だけど、そのジョースター家はもう無い。きっとディオが一から築き上げた地位だ。こんな私がディオと話していていいのだろうかと思ってしまう。

「……ねえ、ディオ」
「どうした?」

優しく背を撫でるディオの手は低温で心地いいけど、人間の体温とは違う。

「どんなディオでも嫌いにならないから、ディオに何があったか聞きたい」
「……本当か」

背を撫でるディオの手が止まる。うん、と言って、ディオの背に腕を回す。面と向かって言えないから、ディオの耳元で口を開く。

「あのね、わたし、ディオのことをずっと想って死んで、生まれ変わってもディオのことを愛してるの。だから、ね。ディオが人じゃなくても、愛してるから。だから、教えて?」
「全く……お前は……」

そういうのは俺の目を見て言え、と言われて、無理やり顔をディオの前に持っていかれる。

「顔が真っ赤だな」
「……恥ずかしい」

ディオの胸に顔を埋める。楽しそうに笑うディオが、どこから話すか、と言ったのを聞いて、静かに耳を傾けた。

突拍子も無い話だった、想像を絶するものだった。ディオの体をぎゅっと抱きしめる。私が抱き締めている体は、ディオの物だけど、ディオのじゃないけれど。それが嫌で、首に腕を回す。

「積極的ではないか、カエデ」
「……ディオを補充してるの」
「可愛いことを言うではないか。では、俺も補充させてもらおうか」
「ん」

ぎゅっと抱き締めてくるディオは私の耳を舐める。キスすらしていないというのに、嫌だと首を振れば、ディオがそうだ、と口を開く。

「ディオ?」
「俺がいなくなってから、結婚をしたのか」
「するわけ、ないでしょ。わたしの夫はディオただ一人。だから、わたしは、修道院に」
「……そうか。俺もお前だけだ。言っただろう、お前は俺の嫁だ」
「100年経った今、叶えてくれる?」
「……ああ、書類上の結婚は出来ないがな。教会での挙式なら出来るが、どうする?」
「ディオ、大好き」
「俺もだ。愛している」

どちらからともなく、フレンチキスが始まり、次第に深くになっていくキスをしていくと、段々瞼が落ちてくる。もう、深夜と言われる時間で、海外にいるということで普段ならもうとっくに寝ている時間だ。それに相まって、酸欠状態になりかけているから、瞼が重くなって、意識は暗転した。

後日、テレンスとヴァニラは、DIOによって仲睦まじい様子を見せつけられることになる。


お題:秋桜

[Prev] | [Next]
Back
Contents
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -