晴れ渡る空は | ナノ
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あれから広い広い空を駆けて、城跡についた。今日の休息地らしい。

「なぁ、こんなボロっちいとこで休むのか?」
「確かにこっちは年季の入った心許ない壁だが……、昔の城跡を上手く利用してるみたいだ。巨人に攻め込まれたらひとたまりもないだようが、夜を明かすぶんには大丈夫だろ」
「あ、そッか。巨人は夜、動かないんだッけ」
「とは言っても壁外だ。なにがおこるか分からん、油断はするなよ」
「はーい」

拠点はそこそこ広いらしい。渡された寝具に四苦八苦していると、リヴァイが持っていってくれた。

「よっと」

ドサッと置かれた寝具にありがとう、と言って、入っている布を引きずり出す。フーと息を吐くファーランは腰を落とす。

「しかし、まさかあんな簡単に巨人を仕留めちまうとは思わなかった」
「…………思っていたより動きは速かったが、1体なら問題ない」
「ハハ……巨人相手でも『無敵リヴァイ』は健在だな」
「やっば兄貴は強えーぜ!」
「凄い」
「お前が居てくれればなんとか生きて帰れそうだ」
「奇行種が大量に来たら分からんがな……。それよりファーラン」
「なんだ?」
「ヤツは本当に、例の書類を持ってきていると思うか?」
「ああ俺はそう確信してる」

そう言って、ファーランはエルヴィンの部屋に忍び込んだ時の話をする。結論は壁外に持っている、ということだろう。ファーランに言われ、エルヴィンの荷物を探った。

「……無かッた」
「やはり収穫無しか。肌身離さず持ってるってんなら方法は一つだ」
「やっぱり……」
「…………殺るしかねぇだろ……」
「そうは言ってもな……、簡単に殺れる相手じゃないぜ……」
「暗殺……?」
「ちょっといいかな」
「!」
「やぁ、見ていたよ。決定的瞬間!」

さっきのを見られていたのか、とリヴァイがナイフを隠し持つ。私も、いつでも動けるようにする。

「決定的瞬間?なんのことだ……?」
「なにって……この子が巨人を倒すところに決まってるじゃないか!!」

指されて、凄かった、たぎったよ、というその人に思わず、リヴァイもああ、としか言えない。私も唖然とした。

「私はハンジ・ゾエ。君はリヴァイだよね?そっちの子がイザベルで、その子がカエデ。あと――と――」
「ファーランだ」
「そうそうファーラン!!よろしく!!」
「うわっ」

イザベルとファーランの間に座るハンジに隠れるように、枕代わりの袋を抱えて顔を隠す。

「リヴァイは訓練兵団へ行ってないんだよね?なのになんであんなに立体機動が上手なの?」
「…………」

ファーランに耳元で「愛想よく」と言われ、変わらない表情のまま、リヴァイは、練習したんだ、と言う。ハンジは幾つか質問をした後、皆だって知りたがっている、と言う。こちらを見る視線が集まっている。
イザベルのリヴァイ自慢が始まり、それを止めるように、ハンジが甘いものをイザベルに渡し、それを黙々と食べ始める。その後もハンジはリヴァイに教えを請うけど、リヴァイは断る。粘るハンジに、リヴァイが、もう疲れた、と言って、ハンジがようやく諦めた。

「イザベルもファーランもカエデもありがとう。また今度ゆっくり話そう」

頭に手をかけ、立ち上がったハンジは、生きて帰れたら食事をおごるよ!と言って、他の仲間の元へ向かう。

「……変なヤツだったが……なにか簡単なコツでも教えてやれば良かったじゃないか」
「お前ら以外、他人の命に責任を持ちたくない」
「大げさなヤツだなぁ、まあ、アイツは特に気にしてないみたいだが」
「…………」
「なぁ兄貴。世界を人類の手に――とかよくわかんねぇけど、アイツらはそのために死んでもいいって思ってんだよな」
「よくわからないね?」
「…………」

イザベルの問いにリヴァイは答えない。イザベルが食べる甘いものを、一つ貰いながら、首を傾げた。

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