近侍が大変です! | ナノ
5.彼が彼女で、以下略

目を覚ますと、体が何となく重くて、布団を片付けようとして、楓は違和感を感じた。

視線が妙に高い。手がゴツゴツ、というか節くれている。挙げ句、寝着は着流しだったはずなのに、赤いジャージだ。赤いジャージ、それで寝ているのは堀川派の面々。そして最近の不思議なことが立て続け起こっている。まさか、と部屋をぐるりと見渡す。

ハンガーに掛けられているのは、山姥切国広の服である。楓は白いローブを羽織って、隣にある自室へ向かった。

「く、国広!」

襖を開けると呆然としている審神者の姿がある。そして、声の方を見て、目を見開く。

「あ、あんたは……」
「審神者!」
「おい、これはどういう………」

襖を閉めて、入れ替わったみたい、と楓が言う。自身を目の前に違和感を感じて、ああ鏡とは正反対だからか、みんなこんな風に見てるんだ、なんて呑気に考えていた。

「で、どうする。俺とあんたが入れ替わったって言って混乱するだろ」
「……どうするの?」
「……このまま遣り過ごすのがいいんだが……」
「主さん、朝餉出来たよ!って兄弟もいたんだね!おはよう」

「ちょっと待ってくれ」

襖を開けて朝餉が出来たと言って、戻ろうとする堀川国広を止めるのは山姥切国広。だが、審神者の声音でそう言った為、堀川国広は驚いている。覚悟を決めよう、と楓は思い山姥切国広を見る。同じことを思っていたらしく、頷くと、楓は口を開いた。

「……とにかく、時間が経てば元に戻ってたんだから、二人はここにいてよ!僕がなんとかするから!」

なんて言って、部屋を出ていった堀川国広に感謝しつつ、これからどうしよっか、と聞く楓。

「主、仕事は?」
「今日は無いよ……、それに堀川くんがなんとかしてくれるよ」
「……違和感だな」
「違和感だね」

なんて言いながら笑う楓だが、山姥切国広は眉を潜める。

「無理して笑うな、主」
「……うん、ごめん。でも、国広」

そんなことしたら眉間に皺がいく!と皺を伸ばそうと眉間をぐりぐりする。

「おい、ある、手加減し」
「あっ」
「うおっ」

ドサッと楓の体では、山姥切国広の体の力には勝てず、押し倒した状況になっている。完全に、床ドン状態だ。

「主、兄弟、ご飯出来」

そのとき、丁度堀川国広がお盆を持って、襖を開けたのだ。一瞬の静寂が数分の時間に感じるほど、場の空気は鎮まって、静寂が切り裂かれるのは、堀川国広が慌てて襖を閉めた音。

「す、すいません!ご飯ここに置いて」
「ちょっと待って、誤解!誤解なの!堀川くーん!」

足早に去っていった堀川国広を突発的に楓が追いかけてしまい、部屋に残されたのは山姥切国広。さて、どうしようか、と思って、何かを思い出したように鏡を見れば、審神者の姿で、ハッと兄弟と主を追いかけた。

「主!」

ついたのは居間である。そう言って、襖を開けたが、姿は審神者の姿であったのを思い出し、正座をして、驚いて審神者を瞳に写す己に、頭を抱えそうになった。

結局、隠そうとしていたがこれによって皆にバレてしまい、朝餉も皆と一緒に食べることとなった。

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