近侍が大変です! | ナノ
3.彼女が幼女に若返り?

今日も今日とて、主を起こしにきた山姥切国広は、審神者を起こすなり、固まった。

「んー、ねむいの。まま、おふとん、かえして」
「………」

何も見ていなかった、と、主に布団を掛け、一度、部屋を出る。

ここは確かに主の部屋だ、と確認して、もう一度、布団を(今度は少しだけ)上げる。
が、やはり山姥切の予想を裏切ることなく、主の姿はなく、白い髪の主によく似た子供が寝ていた。起こそう、とするが、まだ、寅の刻。子供にはかなり眠い時間のはずだ。山姥切は、部屋を出て、ため息を吐き、居間へ行く。

「おはよう、兄弟って、主さんは?」
「おはよう、まだ、あいつは寝てる。起こしても起きなかったんで、後で朝餉を部屋に持っていく」
「うん、わかったよ。でも……珍しいな。兄弟が主さんを起こさないなんて。いつも、無理矢理にでも、起こしてるのに」
「…………たまには、な。たまには」

堀川国広にそう指摘されて、ドキッとするが、平静を装って、返す。

朝餉のときでも、審神者がいないことが話題に上がって、それを流しながら、山姥切は朝餉を食べた。

「…………」

ゴクン、と唾を飲んで、山姥切は朝餉を持って、審神者の部屋に入る。
どうやら、子供は目を覚ましたようで、涙目だ。

「お、おにいさん、だれ?」

かえでをゆーかいしたの?と聞くと、山姥切は目を見開いた。
事故だったと覚えてはいる。審神者と出会った当初、審神者は自ら名乗り上げたのだ。それをこんのすけが戒めた。
刀剣男士は末端の神。神であるからには、神隠しを行える、と政府は考え、審神者は刀剣男士を言霊で縛り、名を教えないように指示をしたはずだ。こんのすけが言ったことを聞いて、ため息を吐いたが指摘はしなかった。

神隠しなど、強大な霊力を持つ者にしかできない。数百年しか生きていない付喪神は、神隠しなど出来やしない。まあ、三日月を含めて三条の刀派はどうかは知らないし、まあ、念には念を、だ。

「……ああ、すまんな。お前の親から急に仕事が入ったらしく、預けられた」
「まま、また?」
「……ああ」

また、というその言葉に反応はせず、朝餉を出す。

「ほら、朝御飯だ」
「いただきます!」

上手く箸が使えないようで、悪戦苦闘する姿を見て、山姥切は立ち上がる。

「すまんな。すぷーんはこの家に無くてな。食べさせよう」
「かえで食べられるもん!おにぃちゃんに食べさせてもらわなくても大丈夫!」

そう言って、ポロポロご飯を溢しながら食べると小さな主にため息を吐く。

ご馳走様でした。と手を合わせて言った審神者の頭を撫でる。

「よく食べたな」
「お腹いっぱい〜おにぃちゃん、絵本読んで?」
「これを片付けたら、読んでやるから、待っていろ」
「はーい!」

そう言って、朝餉の乗った台を持とうとしたが、もう一度審神者のところへ戻ってくる。

「……?」

すっと指で口元を撫でて、その指を舐める山姥切。

「米粒が付いていたぞ」
「ありがとう、おにぃちゃん!」

そうやって、1日中、山姥切は審神者を可愛がった。

翌日、昨日の記憶があった審神者が山姥切を避けていたとかいなかったとか……。

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