近侍が大変です! | ナノ
1.審神者が猫になっちゃった!

「にゃー」
「は?」

ていけつあつなる朝に弱い主を近侍である山姥切国広は起こしに来た。だが、審神者の部屋に己の主の姿などなく、その代わり、というように主の布団の上には白猫がいる。

そもそもここに猫がなぜいるのか、と山姥切は疑問に思う。ここの本丸はすべての時空に繋がっているがそこに行き交うことができるのは審神者と刀剣男士たちと伝達係の式神のこんのすけだけだ。

「………」
「にゃ!」
「俺は猫の言葉など、わからないが……」

猫をよく見ると見たことがあるような錯覚に陥る。
白い髪に赤目。そこまで見ると、ここにいない誰かに重ねてしまう。

「主?」
「にゃー」

そうだと言うように鳴く猫を見て、ため息を吐く山姥切。俺にこれをどうしろと。とにかく審神者がこんな姿で意思疎通ができないのだ。今日の出陣や遠征はなしだなと思い、部屋を出ていく。

「あんたは来ない方がいい」
「にゃー」

何故だと言わんばかりに山姥切についてきていた猫が、山姥切の前に出て歩く。

「おい、前を歩くな!ああ、もう来てしまっていいから、後ろにいてくれ!」
「にゃー」

山姥切が折れると大人しく後ろをついてくる猫。今日2度目のため息を吐くと、山姥切の視界白く染まる。

「わっ!」
「鶴丸……!」
「どうだ、驚いたか!……主は?」
「にゃー!」
「こりゃあ驚いたぜ、猫がここにいるなんてな」
「……主だ」
「はっはっは、嘘を吐くな。山姥切」

平静を装うとしているのか、はっはっはと冗談と思い(たくて)笑っているのだろうが、冷や汗がだらだらと流れている。
山姥切がこの白髪と赤目が証拠だろ、というと光忠ー!と言って、走り去ってしまう。こらっ鶴丸さん!という声は聞こえない方向で、歩を進める。

居間につけば、ああ、ホントだという視線が猫に刺さる。燭台切は審神者の朝餉を焼魚のみにする。

「にゃー」

音符がつくほどご機嫌になり、魚を食べる主を見て、皆も食べ始める。

その後、山姥切が思っていた通りに話が進み、今日は皆各々の休日を過ごすことになった。

「おい、動けないんだが」
「…………」
「………寝てる」

出陣も遠征もないので、昼餉はいらないだろうとなった。審神者の部屋には朝餉後から主に短刀たちが主を猫じゃらしで遊んでいた。だが、短刀たちも疲れたのか、今では山姥切しかいない。山姥切は胡座を掻いていた。猫は山姥切の足の上に乗り、丸まって寝たのだ。

動けなくなった山姥切は、今日何度目のため息を吐き、自分も目を閉じて、眠る。

夕餉だと伝えに審神者の部屋に来た燭台切は眠っている山姥切と膝枕をしてもらっている審神者の姿で、燭台切は微笑ましく見ながら、毛布を掛ける。

そして、次の日、先に目を覚ました審神者が悲鳴を上げながら、山姥切に土下座している姿が審神者の悲鳴で駆けつけた長谷部たちに見られることになるのだった。

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