「結婚してください!」 | ナノ
04.「ね、ねこじゃらしで釣ってもダメなんだからっ」

試験の期間を終え、ツンデレな愛猫が構ってくれない。

「………………なんで、なついて」

顔についた引っ掻き跡も消え、ツンデレを発揮して離れた愛猫がシーザーにすり寄る。嫉妬した。

「嫉妬してくれているのかい?嬉しいよ」
「……何したの」
「これ」
「あっねじゃらし!」

卑怯だ。そんなものを使って、愛猫を釣るなんて!

「……なあ」
「うん?」
「これで俺も猫達になつかれたからさ、結婚を考えてくれないか」
「うちの子を、ね、ねこじゃらしを釣っても、釣っても……」
「カエデ!おい、ちょっとこら!」

なんか悔しくて、自室に引きこもって……あ。

「ちょっと散歩行ってくるー」
「え、引き取って来ないでね」
「んー?一目惚れしなければねー」
「ぶっ!?」

コーヒーを吹き出したジョセフにティッシュを渡す腐れ縁は、諦め半分でそう返す。一目惚れしたら、実費でいくらでもするもので。

「否定してないじゃん……。避妊済みで頼むよー」
「えー、どうかなぁ」
「げほげほっ!」

噎せるジョセフは何を想像したのか、腐れ縁の目が養豚場の豚を見る冷たい目になっているが、放置しておく。じゃ、行ってきまーすと、徒歩30分にある。動物愛護センターに向かった。

「ただいまー」
「おかえり、カエデ!」
「……今日はシーザーが当番なんだ。みんなにご飯やってくれた?」
「シニョリーナの部屋に無断で入るのはどうかと思ってまだだよ」

だから、そんなに足元に集っていたのか、と愛猫を見る。ナァと鳴いた愛猫に反応して、腕の中にいた猫が反応した。

「おかえ……やっぱり連れて帰ってきたか」
「可愛くない??至上はやっぱりロシアンブルーだよ。去勢済みのオスの生後約3ヶ月!!私、この子をお婿さんにする!」
「あー、はいはい。とりあえず、ご飯用意してあげてよ。大合唱がおきてたから」
「あ、うん。シーザー、ポットで60度のお湯を設定しておいて」
「……ああ」

シーザーを見てぷっと笑う腐れ縁と、リビングで寛ぐジョセフの足元にご飯をせびる愛猫が。愛猫のご飯を用意して、お婿さんにミルクを出した。ペロペロと舐めるお婿さんが可愛すぎて、頬が緩んだ。リビングに戻ると、けらけらと笑うジョセフと顔を真っ赤にしたシーザー、腐れ縁もニヤニヤとシーザーをつついている光景が見えた。

「何してんの?」
「勘違いで嫉妬してたから、からかってんの」
「…………は?」
「ほら、楓ちゃんさ、一目惚れしたら、とかそんなこと言うから、シーザーちゃんマジで落ち込んで、いねぇ相手に嫉妬してたみたいで」
「やめろJOJO!」

あ、可愛い。ぽろっと言葉に出してしまったらしく、シーザーは夕御飯を食べることなく、リビングを出ていった。

ジョセフと腐れ縁ににやにやとシーザー用に余らせた夕御飯を押し付けられた。今度はシーザーちゃんが拗ねてるから、機嫌治してきてくれ、とのことだ。なんで私が。

「……シーザー、ご飯は」
「いらねぇ」
「…………育ち盛りなんだから食べないと」
「いらねぇ」
「……部屋の前に置きたいんだけど、そんなことしたら、うちの猫達が拾い食いするから、受け取れ」
「カエデは」
「うん?」
「猫が第一優先なんだな」
「当たり前でしょ?」

というか、私から猫を取ればどうなるかわかるか、と聞きたいぐらいではある。

「俺は、カエデが一番なんだ」
「…………あのさ」

一番思うこと言っていいよね。こんなにアプローチされてるし、鋭い訳じゃないけど、鈍感でもないから、わかるんだけどさ。

「結婚したい、って言う割に、それと付随するであろう、好きだ、とか愛してるの言葉が一切ない点が、真剣味を感じないところ」
「あ」
「まず順序踏まなきゃ。初対面で結婚してくれなんて罰ゲームにしか聞こえないから」

いきなり、ドアが開いて、びっくりした。顔は赤く染めたまま、持っていたお盆を引ったくられる。用件が済んだので、部屋に戻ることにする。

「……カエデ」
「………………はい」

間があいたのは仕方がない。いつもの声と何かが違ったもので。

「話がしたいから、カエデの部屋、入っていいか」
「……………ドウゾ」

熱を帯びたペリドットの視線を反らすようにそう答えた。そのあと滅茶苦茶後悔した。

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