「結婚してください!」 | ナノ
02.「マタタビくれたら相手してあげる」

「君と同じ屋根の下で暮らせるなんて、なんて奇跡なんだ!俺たちは運命の赤い糸で結ばれているんだ、結婚しよう!」

両手を握られ、私を伺うように、上目遣いをするこのイタリア人留学生に、なんて私は口を開けばいいのだろう。うちの愛猫の引っ掻くの攻撃に助けられました。

「へー、キミがシーザーちゃんが惚れたっていう子なんだー」
「…………は」

例のイタリア人留学生、シーザーの熱烈なプロポーズを愛猫に助けられた私は、シェアハウスにシーザーと共に住むというジョセフ・ジョースターに、挨拶もそこそこにそう言われた。例のイタリア人留学生は、腐れ縁から絆創膏を受け取って、手当てをしていた。

「開口一番に結婚してくれ、はないよねン」
「あ、野次馬してたんですか」
「まあ、相談も受けてたしィ〜?」

ジョセフとイタリア人留学生はどうやら友人関係を築けているらしい。お茶を用意した腐れ縁が、そりゃあんなプロポーズしたら、構内で噂になるよ、というが、獣医学部ではその日以来、話題にすら上がっていないもので。そういうと、腐れ縁は私としか関わんないし、獣医学部ならあんたの異常性は把握済みだろう、と言われた。否定できない。

シェアハウスの共同生活に当たって、生活費やら、家賃の話、当番制についてを話し合い、賃貸の一軒家をシェアハウスにしているので、その費用の分担を話し合う。

「どうして2:1なんだい?」
「……私の我が儘にこの子が付き合わされただけだから」

そう、私と腐れ縁の家賃比率は2:1だ。同じ大学に進学するとわかった際、こうなった。腐れ縁がうちの両親に懇願された結果がシェアハウスである。猫部屋を作るので、こうなった。

「だから、私は家賃の2/5を払います」
「……なら、俺も」
「……はい?」

シーザーがそう言った。猫部屋の家賃は俺も受け持つ、と言ったのだ。お前、犬派と言ったじゃないか。

「…………私の気を引きたいならそういうこと言わずにさー」
「でーも、女の子より安い家賃は払えねぇな」

ジョセフがそう言って、気づいたら、家賃の1/6に減らされていた。私、家事出来ないのに。

「まあ、楓、いつも通り、楓の家事はお湯張りと洗濯機を回す……あ」
「あ」
「男性陣、あれだけど、下着だけは自分で洗ってください」
「まあ、それはいいぜー」
「あ、ああ」

猫への費用はいつも通り楓負担だから、と言われて、頷いた。

新しい住民が増え、1週間、シーザーは猫達に威嚇されています。ジョセフにはそんなことはなかったのに。というか、皆、捨て猫だったりなので、人一倍いや猫一倍?警戒心が強いので、ある意味シーザーへの態度が正常なのだけど。

「カエデ……」
「……また、猫部屋に入ったの?」

引っ掻き跡が見えるシーザーには呆れる。この1週間で絆創膏のストックが消えた。

「どうしたら、カエデのようになついてもらえる?」
「…………あ」

大人しく撫でられていた愛猫がシーザーが私に話し掛けたら、どこかに行ってしまった。しまいに泣いてしまうよ、これ。流石に、この避けられっぷりに、腐れ縁も驚いていたので、改善するべきだとは思う。

「シーザーは、犬派じゃなかったの」
「え!?」
「大体、猫って犬と同じくらい嗅覚がいいから、犬の匂いとかしたら、嫌がってるのかも?」

シーザー、と名前を呼ぶと、凄い輝かしい目で見てきた。なにこいつ。避けられる理由とかを挙げてみると、困ったように笑われた。

「俺、犬も猫もどっちも好きだけど、俺の家、飼ってないんだよ。日本には犬派が多いって聞いたから、犬派って答えただけで」

………………こいつは地雷を踏み抜いた。すっと、レポートを書いていた手を止め、そのままノートパソコンを閉じて、立ち上がる。え、と驚く顔をよそにリビングから出ようとした。

「ま、待ってくれ!」
「…………」

手を払って猫部屋に逃げ込んだ。流石に猫部屋には入ろうと思えないらしく、ノックをされ続ける。

「………………猫の大好物、それ持ってきてからの話だから」

猫に嫌われるなんてあまりにも憐れで、ついでに強くなってきたノックに愛猫達が威嚇し始めたので、そう言っておいた。

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