ネタ供養と名前変換なし(小説) | ナノ
顔がいいなら誰でも愛してます


20歳
ゲームとアニメを愛する華の大学生。

2回生の夏、家でとあるマイナーなMMOをしていると、気付けば、世界は草原の中、姿もキャラデザの通りで、突っ立っていました。というのがおそらく2年前。他にも、名を連ねる大手やランカーがコチラに来ており、システムの最深層にて出来たバグを破壊することで、現実に戻っていったのだが、バグと戦う際に(弱点を見る)チート(本来ならバグと戦えないor強すぎて一撃で沈む=戦闘不能=dead end)を使用した楓だけはシステムに呑まれてしまい……。

カエデの名で一人そつなくこなす中堅者。無(理のない)課金勢。
白髪で右目金、左目赤のオッドアイ、イケメン女子。髪の毛はポニーテールをしている。シャツに黒い短パン、ブーツがデフォ、羽織る物は色々ある。ひんにゅー。蒼のひし形のような八面体の宝石のついたネックレスをつけている。

デュアルウェポンで、魔法もそつなくこなす。身体能力はコチラに来て、跳ね上がった。魔法系統は雷>氷>風>炎>水>地(地でも雑魚なら1撃で落とす。
バトルスタイルのイメージはライトニング。

顔がいいなら(女でも)いずれも愛せる。所謂残念なイケメン(女子)。優先順位、可愛い(=芯の通った心)>綺麗>女>男。(戦う理由は可愛い子ちゃん達を泣かせないため。自己犠牲の塊のため、松下村塾組には過保護にされた。松陽もよく気にかけていた)

チートを使用したことの代償として、左目は死線がずっと見える直死の魔眼、右目は気配から遠くのことまで把握することができる千里眼(使用時青目)を持つ。



システムに呑まれた。0と1で構成されたこの海の中にいずれ徐々に溶かされるのだろう。これで終わりなのか、まだ、諦めたくない。この2年が無駄だったなんて思いたくない。このチートを使わなければいけなかったし、大手の皆さんが使うわけにはいかなかったんだ、後悔はしていない、でも、これは。まだ、まだ私はしたいこともあったのに。そう思って、手を伸ばす。誰も助けてくれないのは知っている。この海を見ると、あのゲームを思い出す。セラフってこんな感じなんだろうか。白野は大丈夫かな。手を構成していた物が溶けていく、まだ、終わりたくない。終わりたくないのに、手が分解されてい―――――手を掴まれた。視覚情報以外は麻痺していたが、温もりを感じた。見上げると。

「、桜」
「はい、こんにちは」

カエデさん、と言われる。どうして彼女がここにいる?私が考えていたのは桜でなく白野だったんだが……。

「先輩と……地球に行くんです。先輩が貴方に助けてもらったって、そう言ってたんです。だから……」

貴方をセラフの目の届かないところに行かせます。そう言うと頭上が眩しく光る。

「損傷したデータを………集めることは出来ましたが、修復出来ません、戻すところが損傷しているので……入れ換えることは可能なのですが」
「なら……私の人間関係を入れ換えて、それでも足りないなら……私のマンガとゲームの記憶を、ああ、でも……どうしてこうなったのかとか、ここに呑まれた理由のゲームは覚えておきたい、記憶は自分が望んで消したとは思っておきたい」
「…………はい。わかりました……。ですがそうなると……肉体が……子どもの体になってしまいますよ、いいんですか」
「……いいよ、子ども達を愛でたい」
「………では、カエデさん、いえ、楓さん。さようなら、私のこともきっと……忘れてしまう対象かもしれないけど」
「……白野とお幸せに」
「……………はい!楓さん、ネックレスは常に身につけてくださいね」
「うん」

嬉しそうに微笑んでくれた彼女を見て、私の意識は落ちた。


目が覚める。まずは状況確認。……あの子に言われた通り、体は小さい。私の武器は変わらず、デュアルウェポンのブレイズエッジだ。私の、私が好きだったあの人の武器だ。とりあえず、今いる、森から出ようと立つ。森は薄暗くて、月明かりもあまりない。でも、夜に目が慣れているお蔭で見える。歩くと、鉄臭い匂いに顔を歪める。血の匂いだ。口を覆いながら、森を抜けると、硝煙が上がっている。戦いの場だった。甲冑に身を包んだり、軽い防具を着けて、戦う場。一度、森に戻って、服を変える。前のゲームでもコスチュームを変えることができて、同じ要領でコスチュームを変える。着物だ。帯に武器を差して、森を出る。
先程と違って、多くの武士が死んでいる。戦いは終わったようだ。

「………」

チートによって得た眼を開く。仲間の一人が、そのチートを使うときに目の色が変わる、と言われたことがある、たしか、蒼だとか言ってたか。
記憶が消えたのはいいけど、このむず痒い感じはなんだろう。昔は知っていたのかもしれない。とりあえず、食べ物と水を確保して、生きなければ。そう思って、戦場を歩く。草履を履いていても血が染み込んできそうだ。

そもそもなら、森で過ごせばいい、と言われそうだが、水はあっても、食べ物がなかった。見つけたのは毒キノコぐらいだった。

「…………お腹減った」

千里眼を使って集落まで行くのもいいかもしれないけど、それまで体力が持つはずもなく、途方にくれる。夜なので、眠気を感じて、血に濡れた羽織を剥ぎ取って、布団代わりに寝る。すぐに意識は落ちた。

ツンツンとつつかれているのに目を覚ます。身をよじると、うおっと言う声が聞こえた

「……?」
「………生きてる?」
「生きてるけど……‥」

目を開くと銀髪の男の子がいる。可愛い。身長が同じぐらいだから、同い年ぐらいか。
身の丈に合わない刀を持っているみたいだ。

「……なんのよう?」
「なんでもねぇよ。生きてるなら帰れよ」
「……帰る?どこに」

当然のようにそうきく。家だろ、と答える少年に帰る場所はない、と言ったら、じゃあこんな危ない場所で寝るな、と言われた。

「死体に埋もれてたら、気づかれないから」
「…………」

警戒心丸出しの少年は、興味を無くしたのか、既に背を向けて歩きだした。ぐー、とお腹が鳴り、足が止まった。

「………ほらよ」
「……柿?」
「不味いからやる」
「……ありがとう」

かじると、確かに甘くない。でも、美味しかった。
腹は満たされないけど、生きていくためには、食料調達しないといけない。

時間を掛けて食べて、戦場を歩く。銀髪を見掛けて、声を掛けようとして、止めた。後ろに人間じゃないですか何かがいる。それは刀を持っていて、後ろから銀髪の少年に声を掛けている。少し話をしたら、少年は刀に手を掛ける。人間じゃない何かが、少年の行動を気にすることなく、容赦なく、攻撃した。その攻撃で意識が無くなったのか、たらんとした腕が人間じゃない何かの肩に乗っている。
助けなきゃ、まだ、恩返ししていないから。

武器に手を掛ける。眼を開く。銃形態のまま、少年に当たらないように銃を撃つ。少し、痛かったみたいで、こちらに振り向く。そのときには、私は何かの目の前で、剣形態の武器を振り下ろした。

少年は息をしている。まだ、気を失ってるし、怪我をしてるから、背負う。眼を開いたまま、川を探す。歩いて、30分ほどで小川を見つけて道中に剥いだ羽織を水で洗って、拭く。小さなキズがあって、それも綺麗に拭く。開いていたキズは布を千切って巻いて、羽織を掛ける。

「………水」

そう言えば、水を飲んでなかった。そろそろ干からびて死ねるだろう。
水を掬って飲む。疲れた。まだ、昼なのに。少年が目を覚ました時に、食べられる物を用意しないと、と思えば、川に魚がいた。焼いたら……食べられる。なんとか、2匹を捕まえて、木を何本か持って、少年のところに戻る。まだ、眠っているようだ。

木を組んで軽く木に触れて、燃えろ、と呟く。発火した木が他の木に燃え移るように見守りながら、捕まえた魚を細い枝に刺して焼く。味付けが出来ないのは仕方ない。魚が焼けて、いい匂いが漂ってきたとき、少年が身をよじった。

「あ……?生きてる……?」
「生きてるよ」
「うおっ!?お前、なんでここに!」
「変なやつに狙われてたから、助けた。柿のお礼」

そう言って、焼けた魚を差し出す。じっとこっちを見ている少年にイラついて、口に押し込んだ。

「あちっ!」
「熱いから気を付けてね」
「それ、先に言え!」

ふーふー、と息を掛けて魚を食べる。昨日は何も食べてなかったけど、今日は2食も食べている。不思議だ。チラリと少年を見ると、私を見たまま魚を食べない。

「食べないの?」
「………」
「食べないなら、私が食べるからちょうだい」
「………食う」

散々悩んでこれである。なんだかんだ、全部食べた少年を見ると、目が合った。

「なに見てんだよ」
「え?怪我大丈夫かな、て」
「何、人の心配してんの、お前」

真っ直ぐな目でそう言われる。

「うん、だって助けてくれたから」
「……お前、バカじゃねぇの」
「………だって、助けてくれたから助けただけ」
「……勝手にしろよ」
「あ、でも、怪我してるから、それまでは一緒にいる」
「はあ!?」

嫌がる少年の後ろをちょこちょことついて行って、鬱陶しがられる。

「だぁぁあ!ついてくんな!うざってぇ!」
「傷口開くよ」
「俺ぁ、丈夫だから大丈夫なんだよ!」

………凄く楽しい。嫌がる少年についていくの凄く楽しい。違う、ストーカーなんかじゃない。傷口が開くのが悪いから、いつでも対処できるよう……!!

「おい、なんで、武器持って」
「黙って、隠れるよ」
「んんん!!!」

千里眼は使わなくとも気配の察知は機敏になったお蔭で、何かがいる。少年の口をふさいで目を閉じて、眼を開く。こうすれば、少年に眼を見られることはない。………こっちにくる?

「……ここにいてよね」
「は?」

銃形態の武器を持って、背中に隠して、何かに近づく。今朝の何かと同じ、虎の顔をしている。

「お嬢ちゃん、おいちゃんみたいなやついなかったか?」
「しらないよ」
「おかしいなぁ……。いいや、お嬢ちゃん、おいちゃんと一緒に行かないかい?」
「行かない」
「こんなところにいずにさぁ……イイ生活が出来るぞ」
「…………行かない」

そう言えば、力づくだ!と言われ手を上げられる。

「……さようなら」

放った弾は心臓貫く。バタリと倒れた虎の顔に見向きもせず、少年に声を掛けた。

「無事……?」
「大丈夫だよ、ほっとけよ」
「………さっきと同じ奴だったの。だから……、危ないから二人でいた方がいいと思うんだけど」
「………お人好し」
「……うん、言われる」
「……怪我が治るまでだからな」
「……うん!」

そうして、漸く名前を聞いた。

「坂田銀時」
「私は……楓!」
「楓?」
「うん」
「苗字は?」
「………忘れた。というか、うん、ない」
「は?」
「物心ついたときから私は楓だよ」

苗字は……昔の世界との、家族との繋がり。だから、ない。

「んじゃ、楓。どこに行く?」
「……さっきの川。あそこ、食べ物もあったから」
「うんじゃ、行くぞ」

そうして、1週間後、私たちは松陽に拾われることになる。

「おやおや、随分とかわいい鬼たちがいたもんですね」





こちらにきて、20年。攘夷戦争が終わって10年。行き倒れているところをとっつぁんに拾われて、5年。随分とお転婆になってしまったそよ姫様を探さないと。目を閉じて眼を開く。見つけた。公園でお一人とは全く……。

「そよ様」
「あ……楓ちゃん」
「今すぐ城に戻りましょうとは言いません。そよ様だって自由になりたいですもんね」
「楓ちゃん……」
「ですが、夕方になったら帰りましょうね。それまでは自由にしてください。そよ様を守れるよう、影から見守っております」
「……ごめんなさい」
「いえ、そよ様の辛い顔を見るのは、心苦しいですから。お好きになさってください」
「ありがとう……」
「少し……捜索隊の方に根回しをしてくるので……すぐに戻りますが、お気をつけください」
「……はい」
「あ、次、街に抜け出すときは私に一言お掛けください。毎日……らさすがに無理ですが、たまには息抜きも必要です。騒ぎにならないようにしますから」
「ありがとう……」

捜索隊というか、真選組の隊士を見つけないといけない。まあ、江戸の中の……かぶき町にはまだいないか……嘘の情報でもなんでも流してやろう……。
あ。

「真選組の隊士さん?」
「はい?」

ジャケットがノースリーブなんだが、それは突っ込まないことにする。

「……私、そよ姫様の近衛長をしております、楓、と申します。少し話を」
「あ、じゃあ、局長とかと情報交換しましょう!」
「あ、いや、私はもう」

局長ォォ!!と呼ぶ隊士に頭を押さえた。

「!!どーした山崎!?」
「目撃情報が。それと……」
「あー、どーも。久し振りでーす、近藤さん」
「楓ぢゃぁんんん」

抱きつきにきたので、避けておく。むさい男は好きじゃない。

「おめー……」
「姐さんじゃないですかィ、久し振りでさァ」
「久し振り、総悟に……トシさん?」
「で、なんでテメーが山崎といる?」
「あー、その人取っ捕まえて、そよ姫様の安否は確認取れたから、もう探さなくていいって伝えに……」
「姐さん、今、仕事何してるんですかィ?武器、腰に引っ提げてるとなると役人か……浪士か……」
「ハハハ、総悟は相変わらず可愛いなぁ。今、私、そよ姫様の近衛長してるのよ」
「え」
「姫のことは私がもう見つけてるから探さなくていいから、じゃ」
「っておい待て楓ー!!」

じゃ、と言って、屋根上に飛び上がる。軽く走って、そよ姫様の元に向かった。
先程の公園に着くと、酢昆布を食べているそよ様と隣のチャイナ服を着た可愛い女の子がいる。えーと……天人だっけ。確か、夜兎。まあ、可愛い子に悪い子はいないさ。

「はー……まだ、探してる?そよ様がお帰りになるまでは信用ならないたぁ……。あーやだやだ。どこで足止めしよ……」

夜兎族なら、並大抵の浪士でも簡単に捻り潰すかな。それなら、少し安心だ。

まあ、博打、駄菓子屋、パチンコ、……河童釣った?……何?伸した?男伸したの?女の子。プリクラ、団子屋……。プリクラのときのそよ様は随分と楽しそうに笑われてる。
………あ、あのクソマヨラ。

「その通りですよ。さァ帰りましょう」
「女の園に割って入るんじゃねェェ!!」
「ぐはっ」

屋根からクソマヨラに飛び蹴りを食らわす。軽く吹っ飛んだクソマヨラを気にせず、笑顔で言う。

「そよ様。帰りたいときに帰りましょう。門限は夕方。あなた様が帰りたいときでいいのです。夕方になれば駄々を捏ねても連れて帰りますから」
「てっめぇ……何しやがる、楓!」
「だから、真選組はお呼びじゃないって言ったじゃん。ったく……」

軽く指で逃げろとジェスチャーをする。

「スケジュール管理は私がしてるし、あんたは始末書さっさと上に提出しないといけないんじゃないの?」
「アァ?テメーにゃ関係ねえ」
「夕方までは姫の自由なんだよ。私が決めた」
「知らねぇよ、テメーにはそんな権限ねぇだろうがよ!!」

と、言い合っていると、女の子がそよ姫様の手首を掴んだのに気づいて、軽く武器を振り下ろす。

「てめぇ……」
「可愛い子ちゃんに手ェ出したら殺す」
「確保!!」
「だぁぁあ!」

そっちがそうなら、こっちは女の子を守ろうか。女の子がそよ姫様を抱えて屋根に飛び上がったから、その屋根に立つ。

「ちょっと楓ちゃんんん!?」
「チャイナ娘出てこい!!お前がどうやってそよ様と知り合ったかは知らんが、そのお方はこの国の大切な人だこれ以上俺達の邪魔をするならお前も楓もしょっぴくぞ。聞いてるか!」
「じゃあ、しょっぴかれる前に殺す」

そう言って銃形態で撃つ。もちろん、クソマヨラだけ。それなら総悟は助けることなく、楽しんで見ている。

「楓ちゃん、落ち着こ!ね?」
「………近藤さん、女の子たちってかわいいですよね?」
「え?いや、俺はお妙さんが好きだけど……」
「いつも、羨ましそうに街を眺めているんですよ。あれはなんだと聞かれても、血と田舎しか見たことがなかった私に聞かれてもすぐに答えることが最初出来なくてね。女の子の悲しんでる顔を見るとね、私は最高に辛いんですよ。だから、死ね。クソマヨラ」
「で、なんでそうなる!」
「もっとやれー、土方さんが死ねば、俺が晴れて副長でさァ」
「総悟ォォオ!」

さて……夕刻までどうしようか。(リアル)鬼ごっこをしながらの散策はそよ姫様には少々刺激が強いからなぁ……。

「楓ちゃん」
「はい、なんですか、そよ様」
「私、帰ります」
「そうですか。では、お手を」

武器を腰に戻して、そよ姫様を姫抱きして、軽く真選組を見る。

「じゃあ、お騒がせいたしました。ではそよ様、酔われたらお伝えください。全速力で城に戻ります」
「え、うん」

瞬歩を真似て走る。これもゲーム時代からよく使う力だ。随分と移動時間が短くなる分、疲れる。まあ、この程度の距離は寝たら治るが。

「………はあ」
「お疲れ様でした。お叱りを受けたようで」
「ええ、でも後悔はしてません。でも女王さんと友達と言っても……どうしましょう」
「そよ姫様に簡単に城下に行けませんしね……。では、文通などどうでしょうか。交換日記でもいいでしょうし、まあ、渡すことができるのが週1の非番のときですが」
「文通!いいですね!早速女王さんに書きますね!」

そう言って、硯と紙を用意する。……今度、ノートかレターセットでも買って差し上げよう、と心に決めたのだった。


そして、そよ姫様の逃走から、数日後、“かぶき町の女王さん”を手紙を渡しに行く日である。大事に手紙を鞄に入れて、万事屋さん、神楽、という手掛かりにかぶき町に繰り出している。さて……どうしようか。かぶき町の地図を開いて、唸る。

「どうかしましたか?」
「あ、えーと、ちょっと人探しを……」
「人探しですか?かぶき町と言っても広いですからね……。よければお手伝いしましょうか?
「少年は……?」
「あ、すいません。僕、志村新八と言います。万事屋銀ちゃんというなんでも屋で従業員をやってまして……」
「万事屋……?」
「はい」
「かぐら、と言う夜兎族の女の子とはお知り合いで?」
「神楽ちゃんですか、万事屋の従業員ですけど……」

今日は運がいい!

「その神楽さんへのお手紙を預かっていまして、渡したくて」
「今から万事屋に行くので、案内しますよ」
「ありがとうございます!」

礼を述べて、お辞儀をする。万事屋について、新八くんに促されて入る。

「失礼します」
「あ?新八ー、依頼人かー?」
「あ、」
「あ?」

応接間でソファーに座っていたら、襖が開いて、見れば、忘れもしない銀髪、気だるげな目。

「銀時………!」
「は?ちょっ、だ!?」

銀時に飛びつく。まあ、反動で銀時を押し倒しちゃったんだけど。

「銀時だー。生きてるー。よかったぁ……」
「お前、誰?」
「………」
「いでっ!?」

頭をグーパンして、応接間に戻る。新八くんは茶を出してくれていたので、銀時を殴ったことを知らないので、平然としている。

「あ、神楽ちゃん起こしてきますね」
「ありがとう、新八くん」
「……で依頼人?」
「……神楽さんへお手紙を」
「はーん、ラブレターですかぁ?」
「………はあ、二度寝すればいいの、に!」

座っているソファーにニヤニヤして近づく銀時を蹴っておく。まあ、吹っ飛んで、先程の部屋に逆戻りしたところで、神楽さんと新八くんが来た。

「あ!姉ちゃん、そよちゃんといた姉ちゃんネ!」
「はい、あのときはありがとうございました。そよ様もあの日から随分表情が明るくなりまして。そよ様も早くおしゃべりをしたいと仰られて、文通はどうかと提案したところ、神楽さんへのお手紙です」
「そよちゃんからアルか?やったね!」

はしゃいでいる神楽さんが可愛くて口が緩む。これだから女の子は最高だ。

「返事はどうしたらイイネ!」
「また、私の非番の日にこちらに来ます、その時にお返事を渡して頂けたら」
「わかったネ!」
「さぁて、帰りますね。また来週」
「バイバイネ!」
「さようなら」
「あ、そうだ、姉ちゃんの名前聞いてなかったね。それにさん付けやめるアル。気持ち悪い」
「じゃあ、神楽ちゃん、ね。あー……失礼、……楓と申します」

じゃ、と言って、引き戸に手を掛けて、木刀を避けた。その影響で引き戸に穴が空いたわけだけど。

「ちょっと銀さん!何してるんですか?!」
「ちょーっとそこの楓ちゃんに立ち止まってもらいたくてよぉ」
「何?」
「いやぁ……戦いが終わってお前何処にいたの?探したんですけど」
「天人斬りまくって、気づいたら、武州で行き倒れてた」
「ちょっとぉ!?わかってるか?お前、一人にしてるとふらふらして消えちまうから探してたのに!」
「一人で勝手にしろって昔に言われたから、一人で勝手にしただけだよ」
「それ……いつの話」
「拾われる前の話」
「そんな頃の記憶、銀さんにはありませーん」
「………心配しなくても大丈夫だよ。私からしたら銀時はあのときの可愛いままなんだから」
「……お前、それ、どういう意味だ?」
「さあ……どういう意味だと思う?」

プルルルと無機質な電話に出る。

「はぁい」

相手は総悟だ。団子食べに行こうというお誘いだ。おう、行こう行こう。……あれ?いつの間にケー番教えたっけ?

「お誘いが来たから行くね」
「お誘い?お誘い、つったかぁ!?」

後ろで騒がしい銀時に引き戸に刺さった木刀を投げて、万事屋を後にした。


「お待たせ、総悟」
「姐さんきてくれやしたか」
「……うん、まあ可愛い子だから」
「可愛い子って言うのやめてくだせィ」
「ああ、ごめんね。ってそうだ!なんで、ケー番知ってんの!?」

丁度、あの後、とっつぁんに会いまして。と言われて納得した。なるほど、聞き出したのか。

「行き倒れになるぐらいなら、武州にいればよかったのに……」
「無償で怪我人を居候させてくれた上に3年もいさせてくれた癖に」
「ときどき、仕送りを出してくれたのは姐さんでしょう?」
「たまたまお金が入っただけだよ。お礼させてくれなかったし」
「俺は姐さんに剣を教えてもらってたんで、礼は貰ってたと思ってたんですがねィ」
「あれの何処が」

頼んだ団子がきて、摘まむ。真選組がなんだ、とっつぁんが言ってたのは覚えていたが、よくこの間会わなかったな、なんて思いながら総悟を見る。10年前はあんなに子どもだったのに。

「大きくなったねぇ」
「子ども扱いはやめてくだせィ」
「全然変わらないんだもん、総悟は」
「姐さんは……ちょいとかっこよくなりやした」
「嬉しいなぁ。こんな格好してても男だって間違われたんだよ?目ェ節穴かよ」

そう言うと笑う総悟の顔がつまんないような顔になった。見つかったか……。と、ため息を吐く。
遠くから、総悟ォォオ!というトシさんの声も聞こえる。

「てめぇ、総悟、さぼんじゃねえ!」
「休憩してたんでさァ、姐さんと」
「こんちはー」
「楓……!」
「私は非番だからね、今日。総悟、サボりすぎるのはやめとくようにね」
「わかりました、姐さん」
「なんで、そんなに楓には聞き分けいいんだよ、総悟!!」

二人に背を向けて歩き出す。総悟の声に手を上げて応じて、今日の目的である神楽ちゃんに手紙を渡すことは終わっており、もうひとつの目的を消化するために場所の下見に行った。


さて、将軍をお守りするために、そよ姫様の近衛長である私も駆り出されることになった。個人的にはそよ姫様にこそ、祭りを楽しんでもらいたいけど。

「で、なんでお前もここにいる。楓」
「将軍の近衛は私のことを下に見てるせいでね。まあ、とっつぁんに拾われた女浪士が大出世して気にくわないのさ」
「将軍の近くにいるお前が夜店の方から出てくんのは可笑しくね?」
「まだ、見せ物は始まってないからね。そよ姫様のためにりんごあめを買ってきただけ」
「はあ?」
「ったく、そよ姫様置いて、祭りに来てるのに、お土産ないとか、ちょっと有り得ないでしょ。安心してよ。何かあったときは将軍には傷ひとつつけないからさ」

そう言って、買った、小さなりんごあめを口でコロコロ転がしながら、目を閉じて眼を開く。……総悟、神楽ちゃん、新八くん、銀時、……晋助。退路を頭の中で組み立てていると、花火が上がった。

「…………あ、まずい」
「あ?」

ドォンと撃たれた煙幕に、ありがたみを嫌々感じながら、そのまま目を開く。

将軍の前に跪く。

「御前失礼。攘夷派によるテロです。速やかに近衛とともにお立ち去りを」

では御免、と眼を閉じて、飛び降りる。煙幕は晴れて、カラクリの集団が現れる。

「さて……近藤さん、トシさん、準備は出来てますよね」
「ああ」
「将軍に逃げるよう言ってあるので、存分に暴れてください。あ、後、トシさん」
「なんだ?」
「私、女の子(そよ姫様)を守りたいので、真選組が全部蹴散らしたことにしといてよ」
「てめぇ、言いたいことはそれかよ!」

トシさんのイラつきに動じることなく、カラクリを機械兵と同じ要領で切る。近藤さんが刀が折れたとかなんとか言っているが、まあ無事だろう。ぶちギレている総悟と神楽ちゃんが来て……カラクリをぶち壊した。

「さぁて、始末書はそっちに任せるからよろしくー」

手をひらひら振って、城に戻る。

「楓ちゃん……!」
「そよ姫様、ただいま戻りました……が、服が汚れてるので着替えてきます」

そこにはそよ姫様が立っていて、怪我は、と聞かれたので、無いと伝える。近衛長部屋に入って煤の付いたシャツを脱いで綺麗に伸ばしてあるシャツを着る。白シャツは汚れが目立つので、黒シャツにするのもいいかと思った時期もあったけど、黒は目立つのでやめることにしたんだったか。

「そよ姫様、まだ廊下に居られたのですか」
「花火が綺麗で、お祭り、活気があるようだったから」
「……そよ姫様、夏と言えど、夜は冷えるので部屋に戻りましょう」
「……はい」

とりあえず、そよ姫様を部屋に入れる。他のそよ姫様の御付きじゃない近衛が五月蝿くなるだろうから。

「そよ姫様」
「何?」
「土産です。と言っても、夜店で買っただけの物なのですが」
「……これは?」

りんごあめを見せると、目を開いて、興味津々に聞いてくる。小ぶりの林檎に飴を付けたもの……でいいはずだ。

「甘いものなので、明日にでもお食べください」
「ありがとう!楓ちゃん」

そよ姫様が笑顔でそう言ってくれたので、私は満足だ。


凸凹回

その日は非番で、かぶき町をふらふらしていた、はずだった。

「…………あー、マジかぁ」

眩しいほどの光を浴び、声が若干低い、身長が高くなった、イケメンがガラスに映っていた。胸が無いのはいつものことだけど、無いものがあって、ああ、どうしようかと頭を抱えそうになった。

まあ、宗教団体の過激なテロ行為、と言ったようで、男らしく、と言われたので、男らしく、事件を解決しようと……眼を開いた。

「はぁん、どうしてやろうか」

と思って武器に手を掛けようとして武器が無いのに気づく。なんで?と腰の方を見ると、確かこれは二刀流とか繋げて戦う武器じゃないか……。

あれだ、女神は諦めない者に奇跡を起こすとかなんとか。……いや、違うか。

「あ、自重しなくてすむのか!」

女の子への愛を叫べる!まあ、やつらの言いなりはあれなので抵抗はしておこう。蒼い目のまま、カメラの死角から剣を振り下ろす。

「君は……」
「ん?」
「僕の知り合いかな?」

眼を見られたか知らないが、閉じておく。紫の髪は特徴がある。

「まさか、あやめちゃん……?」
「如何にも、今はあやおと呼びたまえ」
「あ、私は楓だよ」
「中々のイケメンだな」
「そっちこそ」

状況を聞くと、真選組基まん選組が使えないとかなんとか。要は相手に情報を渡さなければいいということらしい。カメラ破壊は正解だったみたいだ。月詠基月雄と落ち合うらしく、ついていくことにした。

「かぶき町のカメラならこれで全部だ」
「おい、そんなことしたら!」
「ふん、全員捕まえたぜ」
「男になってわかったことがある」
「前の男たちがどれほど頼りなかったのかを!」

月雄……かっこいいじゃないか………!

「早かったな、あやお」
「先にカメラを壊してる御仁がいたからね」
「!!!もしかして、総悟!?くっそかわいいじゃん!!」
「「「「「 」」」」」

あやおの斜め後ろで観察していると宝塚美人と太ったトシさんとポニーテールをしている栗色の髪を見つけて、思わず口に出たし、抱きついた。

「姐さんですかィ?」
「アハハ気づいちゃったかい?なぁ、総悟ォ……あの美人誰?」
「近藤さんですぜィ」
「………冗談やめない?総悟……」
「キツく抱き締めても本当なんで死ぬんですけど姐さ」
「あ」
「あ、じゃないよね!?沖田くん沈んでるよ!?」

それに突っ込んだのは、銀髪の女の子。反射神経って凄い……!気づいたら抱き締めてたわ。

「もしかして、銀時?やっぱりかわいいなぁ。ねえ、私にはなかった胸ぱふぱふさせて、ねえ、ぱふぱ」
「何!?お前、胸に執着心あったわけ?!」
「つるぺたかボインがいいよね、胸で窒息してみたいとも思ったことはある。でも貧乳でもいいの。こう、控えめに女であることを象徴してるのが、可愛いよね。だから、お妙ちゃんも相当タイプだよ!」

あら、ありがとう、というお妙ちゃんにガッツポーズをした。ありがとう、いい薬です。

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