ネタ供養と名前変換なし(小説) | ナノ
とりあえず、混ぜた



クロスオーバー 及び キャラ同士の殺し合い
流血表現アリ、キャラの死ぬことはなし。
原作なんてなかった作品あり。
モブは死にます。



姓(氏) 黒雲
諱(名) 楓
字 #紅#

15歳

黒雲神社という日本刀を奉納している神社の神主。
字を与えられるまで家から出ることを許されなかった。
字が与えられたのは7歳のとき。
そのあとから神社に入り浸っていた。
刀の付喪神と過ごして、約9年が経った(その間に迎えた刀もいる)。
霊力を持っていたので父がしていた審神者を引き継ぐ形で審神者になった。(母親は神社についてよい感情を抱いていない。そのため、楓が神社にいるようになると弟の征矢(そや)に愛情を注いでいる。)父親は楓が中学に進学する頃に事故死した。
霊力の込められたかんざしをつけている。詳しく言うと艦これの電のような髪型。


ちなみに

“字”とは“あざな”と読み、 歴史的に、中国人は個人に特有の名として姓(氏)と諱(名)と字の三つの要素を持った。日本では大抵の中国人は「姓-諱」の組み合わせで知られる。ただし例外的に「姓-字」の呼称が通用している人物もいる。有名どころでは、諸葛孔明(諱は亮)、司馬仲達(諱は懿)など。
(中略)
『礼記』曲礼篇に「男子は二十歳で冠を着け字を持った」「女子は十五歳でかんざしを着け字を持った」とあり、成人した人間の呼び名としては原則として字が用いられた。

Wikipediaから一部簡略しながら抜粋。


神隠しと真名の関係性についてイマイチよくわからないまま他サイトの夢小説を読んでいたので、調べてみたことをまとめてみました。

“7つまでは神の子、7つ過ぎれば人の子”
精神的にも、肉体的にも、外見的にも。神の子から人の子に近づいているために行われるその行事が、“七五三”だとするならば、神から人へと移るための加護を貰い受け、人としての思考を受ける。
(中略)
“名は体を表す” 
これほどまでに分かりやすいものはない。神の寵愛を受け、その体を縛り神域に留める方法はただ一つ。その真名を神が口にすればいいだけなのだ。音となりてその声を出せばいいだけてある。言葉というのは時として真を語り、毒と成す。其れこそ呪詛である。 

鴉(夜風)様の考察


真名について

その人物の本名。
文化によってはこれを呼ぶことは大変失礼なこととされ、その場合君主が中級以下の身分の者を呼んだり、父が子を叱責したり、宗教的儀式の際に用いたり、敵の名を呼ぶ際に用いたり、高僧が神の真名を口にしたりする例外を除いて、普段用いられることはありません。
これを「実名敬避俗」と呼びます。
真名はその人物の魂の名であり、これを呼ぶことは相手の魂を抜き取り支配するという考え。

こちらより抜き取り。



その日もいつもと変わらず


「#紅#様」
「おはよう、小狐丸。よく眠れた?」
「はい。そういう#紅#様はよく眠られていないようだ」
「ね、寝てるから!大丈夫」
「でも主の部屋から夜、光漏れてたよ」
「気のせいじゃないかな!清光」
「でも、隈が出てる」
「あははは……」

目の下を撫でられる。仕方ないかな。特別受験だし……。勉強しないとだし。
そろそろ光忠が朝ご飯の支度を始めるだろうし、手伝わないとね。
襷(タスキ)で着物を纏めながら、調理場へ向かう。明日は始めての入学式。学校のこと、審神者のこと、神主として色々心配ごとばかりだ。審神者を継いで4年目になるけど、父から受け継いだ刀達は私のことをどう思っているんだろう……。
それと気掛かりがもう一つ。中学のとき、祿に登校しなかった私は3ーEに行くことになって、そこで遭った超生物の暗殺。任務を成功すれば、世界各国のトップには腫れ物扱い。何も知らなかった私たちを烏間先生が日本が保護。だから、あのときの記憶は無くて、中学3年のときは、“普通の学校生活”を送っているということになっている。
中学3年のときは送り迎えがいて、明日からは一緒に堀川の方の国広が高校に通うらしい。御願いだから、胃薬を常備薬にさせないでね。

「おはよう、主。明日から寺子屋なんだってね。お昼はどうするんだい?」
「おはよう、光忠。朝ご飯のついでにお昼ご飯を作るよ。いつも支度をさせてしまってごめんね」
「いや、大丈夫。主こそ疲れて倒れないでね」
「気を付けるよ…」

そんなに疲労が目に見えているのか、わからないけど、これ以上、みんなに負担を掛けるわけにはいかないしね。

「おはようございます。主、燭台切」
「おはよう、長谷部。もう少し待っててね」

刀達の目覚めは早い。父に言われて、早寝早起きをしていた私がぎょっとするぐらい、早かった。そんな生活ペースに巻き込まれた私の目覚めは5時前後になった。
明日から祈祷して食事と準備に追われる日々になりそうだ。

「主様、朝餉の後遊びましょう!」
「うん、そうだね!」
「主」

凛とした、冷たい声が私を射抜く。

「……何かな、太郎」
「書類の整理が終わっておらぬ故、短刀たちと遊ぶのはそのあとです」
「はい……」

審神者になって、書類整理が増え、高校進学のための書類を書かなくてはならない。国広にも色々やらせなければ。

「堀川国広も朝餉後、書類書いて欲しいものがあるんだ。来てね」
「わかったよ、#紅#さん!」

ご飯後、国広と審神者室へ。国広も刀の中ではそれなりに若い分、現代語の習得は早いことを願おう。
でも、念のため白紙で書かせてみた。

「右横からじゃない!左横からでお願い!」

“広国川堀”なんて書くと思わない。

「筆ペン……!?」

とりあえず鉛筆で慣らさせる。

「#くれない#さま、おやつをたべませんか?」
「一旦、休憩しよっか、国広。疲れたでしょ」
「はい、わかりました、#紅#さん!」

剣に誘われて長谷部が作ったという桜餅を頬張りながら、桜を見る。桜の平均寿命は50年ほどと聞くけど、ここは違う。祖父が子供の頃には大きく育っていたと父から聞いた。その祖父は老衰で私が産まれる前に亡くなった。かなりの年月が経っている。

「長谷部」
「なんでしょう、主」
「ホントに出てくると思わなかった」

誉めようと思って、長谷部を呼んだら、出てきた。ぎょっとした。

「桜餅美味しかったよ。ありがとう」
「ありがたき幸せ」
「また作ってね」
「主命とあらば」
「ホントにありがとう」

そう言って、長谷部の頭を撫でる。コイツの髪質良すぎる……。

「あ、主!?」
「あはは、照れてんの?可愛いなぁ長谷部は」
「#くれない#さまもかわいいですよ!」
「そうですよ!」

赤くなった長谷部を可愛がると、剣と国広にそう言われた。面と言われる恥ずかしいなぁ……。

「こういうのが、幸せだね……。こんな日がずっと続けばいいのに」
「最近、歴史修正主義者の動きが謎だしね」
「嵐の前の静けさかな。大きな嵐ができなければいいけど」

出されたお茶を飲みながら、空を見る。
雲一つない晴天だった。



朝のごたごた


「朝から疲れた……」
「大丈夫?#紅#さん」

国広に心配を掛けているのが、辛い。でも、今日は一段と疲れた。

清光も付いてくる!とか言い出すし、短刀たちが引っ付いて離れなかったり、これを引き剥がすのが一番心に来た。とりあえず、みんなには内番を任せた。

「とりあえず、帰ったら、兼定ぶちのめす」
「なんで!?」
「何かにつけてサボろうとするか、ら……。倶利伽羅もだけど、光忠に引っ張られてたから大丈夫だろうということで。国広もいないし、サボるかな、なんて」
「だから、兼さんと僕を一緒に内番にするんだね!」
「そうそう」

でも、今日の国広も大概だったよ。だって、着方わからないとかで部屋に入ってくんな!コレが一番焦った。

やがて学校に着き、クラス表を見る。そのクラスに国広がいるのかを見て、後ろで私を待つ国広の下に行く。

「同じ教室だったよ。一緒に行こう」
「わかったよ、#紅#さん」

教室に入ったら、名簿順に並ぶけど、国広は鞄を置くとすぐにこっちにくる。そんなにべったりじゃなくてもいいんだけど……。

「なんかいる。気を付けてね、#紅#さん」
「私も気付いてるよ。なんかいる」

霊力と比例して強いのが霊感。そこにいるだけで気分が悪くなることはないけど、ナニカがいるのは直感でわかる。

「おはよう、#紅#!」
「おはよう、ゆ、茅野ちゃん」
「#紅#さん、知り合い?」
「中学の同じクラスの人だよ」
「そうなんだ!僕は堀川国広。#紅#さんの幼馴染みだよ」
「え!?#紅#、幼馴染みいたの!?」
「まぁ、ね」
「私は茅野カエデ。よろしくね」

………あ、茅野ちゃんは偽名だけど、不味いよ……。
こんななりでも国広は神様。神隠しなんてしないよね……?
そう思って、ちらりと国広を見ると、目があって安心して、と口パクで言われる。私は小さい頃、名前で呼ばれた記憶がない。字を見せられ、コレがお前の名だと言われた。でも、字を与えられたその日から真名で呼ばれることはなかった。だから、記憶の奥底に沈んでいる真名を無意識の内に言うことはない。

「おはよー」
「あ、おはよう、茅野、黒雲さん」
「おはよう、赤羽くん、潮田くん」
「おはようございます?」
「誰?」
「あ、堀川国広くん。私の幼馴染みなの」
「よろしくお願いします」

国広とクラスにいる同期を紹介して、世間話をすると先生が入ってきて、入学式が始まる。業くんが入学式の祝辞蹴ったらしい。相変わらずだなぁ。

「───赤司征十郎」

「俺と同じで首席だってさ。同じクラスなんだ。びっくりしたし」
「赤羽くんと同じで髪が赤色だね」
「黒雲ちゃんは真っ黒だよね」

教室に戻るまで、ちょっと話して、先生の話が終わったら解散。すぐに神社に帰る。

「ただいまー」
「ただいま帰りました」
「おかえりなさいませ、主殿」
「太郎、何か異変は?」
「特には」
「そう、じゃあ、これから出陣してもらおうかな。場所は桶狭間。資材集めよろしく。
部隊長は長谷部、太郎、兼定、鯰尾、清光、小狐丸。
短刀たちは遠征に行って、冷却材と木炭を取ってきて。
他は内番とか書類の手伝いを頼むわ」

頷いて、自室に入る。うんざりしそうなほど積まれた書類を見る。

「貴方も、行きたかったの?国広」
「別に……そうじゃない」
「桶狭間では、検非違使がくるようだから、練度の高い国広も蛍丸は出せないの。今ですら刀装が剥がれるのに、大怪我は負ってほしくないからね」
「………あんたは、俺のことをどう思う」
「またその質問?」

何度も聞かれた質問。私はいつもと変わらずに答える。

「山姥切は山姥切。国広は国広。最高傑作として堀川刀派の一振り。貴方が出来なかったら、堀川国広も出来なかったし……。貴方は貴方のまま、力を振るえばいい」
「……そうか」
「そうよ。むっ…また……」
「どうした」

国広が私の見ていた書類を覗く。

「また、その知らせか」
「困るね…。刀が狙われている、ね。それで、話をしたいだって」

最初は応じた。でも、それはあまりにも不愉快な会合だった。刀を全てこちらに預けろ。貴方の身は保障する。
一緒にいた光忠が嫌な顔をするぐらいだ。拒否しても、次の会合は、と文書が来る。
私に刀を取れば何が残るのだろう。刀は父であり、兄弟であり、友人であり、先生であり、信頼できる仲間である。

「ここには強靭な結界を張ってある。野心のあるものは入れない。もし、入ったとしても、無事に帰さない」
「……そうだな」

結界を張らなくとも、ここは付喪神が住まう地。常人であれば、近づくのも躊躇うだろう。けど、霊感の強い人や人間ではないものは近付く。そのための結界だ。

一通り書類に目を通して、体を動かすとぱきっと音がする。動こうかな。

「国広」
「なんだ」
「手合わせしてよ」
「!?」

懐剣を出してそう言う。中学のときは毎日ナイフを振っていたけど、高校になって運動不足が目に見えている。

この懐剣は無銘刀の短刀。私が産まれたときに護り刀として渡されたもの。付喪神はおらず、父が骨董屋で見つけたものらしい。審神者として刀のことを知るためにこの短刀を使って手入れを学んだ。

「ダメ?」
「なんで……」
「もしものときのため。現状を考えると私をみんなが一人にすることは無さそうだけど、二人のときに多数の敵がいたら、逃げるも何も、でしょ?」
「護身のため、か……」
「お願い!」
「はぁ、仕方ないな。お前がいなくなるのは、許せない」
「ありがとう、国広」



夕餉の時間、説教の時間


「むぅ……」
「むぅじゃないだろ。出陣から帰ってきたら、主が短刀片手に山姥切と手合わせだぁ?」
「まあまあ、兼さん。昔はよくあったから」
「…………む、堀川…」
「だいたい、僕に手合わせしてって言ったときは主に拳骨貰ってたよね」
「蛍丸……」
「とりあえず、無茶なことはしないでくれよ?」
「はぁい」

出陣部隊が帰ってきて、手合わせが見つかって、正座で怒られた。みんなのために頑張ったのに。
遠征部隊の面々に怒られているところを見られて、話を聞いた薬研の説教があって、夕餉だ。だって、国広は信頼してるけど、大勢相手じゃ怪我するもん……。小さな怪我ならすぐ治るからいいけど、大傷は辛いもん。

「………週1なら手合わせしてやる」
「ほんと!?倶利伽羅!」
「ちょっと大倶利伽羅!?」
「諦めてないだろ」
「バレた?」
「…………主、何故そこまでして強くなりたいのですか?
私たちがいるでしょう?」
「堀川国広のことは信頼してるけどさ、大勢相手じゃ国広が怪我するし、私はみんなが怪我するところ見たくないの。見てるだけじゃ、守られてるだけじゃ、辛い。何もできずに見ているんじゃ、無力だし、だから、せめて何かできることをしたい」

俯いてそう言ったから、顔を上げる。何を言われるのかな……?
みんなは顔を会わせて、頷いた。

「仕方ありませんね。そんなことを言われたら、断れるわけないでしょう?」
「山姥が主と手合わせしたのも納得いくねー」
「だからっ俺はそう言っただろう!?」
「#紅#、だからって黙って手合わせを申し込むのはなぁ?」
「ごめん、薬研……」
「では、#紅#さま。週に1度、誰か一人と手合わせすることを許可しましょう」
「ありがとう、みんな!」

ふふっうれしいな。みんなありがとう。


「暗殺教室、ですか」
「ああ、月が欠けたのは当然周知しているが、月を破壊した超生物を元椚ヶ丘中学3-Eの面々が殺したのだ。しかし、彼らは暗殺技術などを授業でやってきたのだ。日本政府に暗殺教室及び指導者“烏間惟臣”“イリーナ・イェラビッチ”の処理を頼んだのだが、日本政府は無力化したと聞いたが、監視をしてくれ」
「了解」
「無力化していなかった場合、殺してよい。期待している。赤司征十郎」
「………はい」

冷えた赤司の声が響いた。


「…誠凛支部の皆さん。指令が出ました」
「……珍しいですね。赤司くんが伝令なんて」
「暗殺教室と呼ばれる去年椚ヶ丘中学3-Eの人間を監視してほしい。彼らは危険因子だ。危険と判断したら、殺せ」
「………わかったわ」

特殊警察誠凛支部、支部長のリコがそう答えると、通信が切れた。

「………最近、多いな。他の支部も仕事を任されていると聞いてる」
「秀徳はマフィアボンゴレ、東城会。桐皇は盗賊“烏”。海常は海賊“青葉”。陽泉は奴良組。荒れてるな、世界は」
「………でも、この報告書を見ている限り、僕たちの監視対象は一般人。それに、“暗殺教室”とは、標的が作り出した空間。これはあまりにも、理不尽です!」
「ん?この黒雲ってやつを見ろ。名じゃなく字になってる」
「そのアザナってなんすか?」
「火神に分かりやすくなぁ、仮の名前とかか?昔は名前を呼ぶのは親とか目上だけで、それ以外はその字で呼ぶっていう習慣だよ」
「………わかったようなわからなかったような」
「まあ、ほとんどの人間が高校進学か。専門学校に行ってるやつもいるが、少数か」

誠凛支部の面々は“高校”に通っている。特殊警察の人間は素性を隠しているのだ。

「とりあえず、接触を図るか…」
「わかった!です」
「………それと、本部洛山が、いえ、赤司くんが何かと関わっているようで、少し気になります」
「そうね。本部はそれを黙認。一体何をしようとしているのか。本部に探りを入れるのはよくないことね。でも、全ては」
「人々の幸せのために!」

声を合わせ、特殊警察の目的を言う。
これを一番に行動する。対立しても構わない。それが、特殊警察の支部の乱立。

「(これは…皆さんに伝えなければ!)」

一部始終を火神の携帯で聞いていた律の存在には誰も気づかない。



初めまして、初めまして。


二日目です。自己紹介をすることになりました。(デフォルトが“こくも”なのでその順番)
とりあえず、知り合いと(裏が)気になる人をあげてみることにする。変に勘がいいので困るものだ。

「赤司征十郎です。帝光中出身です。バスケ部に入るつもりです。よろしくお願いします」

気になる人。なんか一般人じゃない気がする。

「赤羽業。椚ヶ丘中学出身。帰宅部所望でーす」

知り合い。あ、赤司くんの目の色が今変わった。

「影山飛雄。北川第一出身っす。バレー部希望」

気になる人。黒いイメージ。

「茅野カエデです。椚ヶ丘中学出身で帰宅部です」

知り合い。また、赤司くんの目が変わった。

「黒子テツヤです。帝光中出身、バスケ部希望です」

気になる人。影薄い。見えるけど。

「花開院ゆらや。浮世絵中出身、帰宅部や。よろしく」

気になる人。霊力が高い。

「黒雲#紅#です。椚ヶ丘中出身、帰宅部です」

自分。国広が心配そうな顔で見てる。大丈夫、お前ならできるよ!

「桜井、良です!日野中出身です!バスケ部希望です!よろしくお願いします!」

気になる人。ペコペコしてる。可愛い。

「僕は潮田渚です。椚ヶ丘中学校出身です。帰宅部です」

知り合い。赤司くんの目がまた変わった。なんか、検討ついちゃったな?

「奴良リクオです。浮世絵中出身、帰宅部です」

気になる人。霊力高め、それと……んー?

「日向翔陽!雪ヶ丘出身、です!バレー部ですっ!」

気になる人。元気が取り柄っぽい。

「堀川国広です!不知火中学出身です。帰宅部です」

知り合い。うんうん、ちゃんと練習通りやれたね。

「桃井さつきです。帝光中出身です。バスケ部マネージャー希望です!」

気になる人。とにかく可愛い。

そんなこんなで自己紹介が終わる。平和でやって行けそうにないなぁ……。

「#紅#さん!」
「どうしたの国広」
「………#紅#さん、僕の視界内にいてくださいね?」
「…………わかった。できるだけ、そうする」
「思ったより警戒した方がいいな…。もう一振り警戒に当たらせよう?」
「え、でも…今から転入手続きは…」
「そんなことせずに、#紅#さんが持っていればいいんじゃないかな?今、短刀を腰に差してるんでしょ?それを内ぽけっとなる場所に入れて、誰かをそこに差せばいいですよ!」
「そうだね。でも、その会話をここでするのはどうかな」

場所は教室。休み時間だ。人もいるし、この話をするのはまずいでしょ…。

「大丈夫だよ。#紅#さんと僕の話はこれからの登下校についてになってるから」
「そうなんだ。じゃあ時間だし、戻りなさい」
「はーい」


「一緒に食べよ!」

茅野ちゃんの誘いで、赤羽くんと潮田くんとも一緒に食べることになった。当然、国広もだ。

「そう言えば、黒雲ちゃんと堀川くんのお弁当って中身似てるよね」
「似てて当然だよ!」
「まあ、国広の家にお世話になってるからね」
「え、それどういうこと?!」
「国広の家に住まわせてもらってるんだ。おとうさんがお弁当を作ってくれるんだ」

お刀さんがね、なんて。

「へぇ、そうなんだ」
「美味しいんだよ」
「ってああ!もう無くなってる」
「取ろうとした?」

苦笑いしながら、そう聞いた。頷く茅野ちゃんを見て、先に食べてよかったなんて思う。神社内で作られた食べ物もあるから、霊力が少し混ざってる。


「#紅#、同じ班なんだね!」
「そうだね。よろしく、花開院さん、黒子くん」

昼休み後、総合の時間。茅野ちゃんと花開院さんと黒子くんと同じ班になった。とりあえず、近くの人たちと交流を深めよう、らしい。

「#紅#とは同じ中学だったんだけど、みんなの趣味を教えてほしいな!私は採点カラオケかな!」
「カラオケかぁ……。私は、刀?」
「刀、ですか……?」
「うん、戦国時代の武将が使っていた刀とかを調べたり、家にある日本刀の手入れとかをよくするかな」

あらかた嘘は言ってない。うん。

「僕は、読書です」
「どんな本がおすすめ?」
「僕は、ミステリーとか好きですよ」
「あんま、私は読まへんな。趣味…強いて言えばTKGか?」
「てぃーけーじー?」
「卵かけご飯の略だよ!」
「そうなんだ」

卵かけご飯か……。卵買ってやってみようかな。



夕餉の言い争い


「ってことで、#紅#さん護衛のために一振り短刀を付けようと思うんだけど」
「なんで、短刀って決定してんの?!」
「持ち運びを考えるとね」
「それで、誰にする?」
「刀に戻ってもらってもいいのなら、誰でもいいよ」

そう言うと手を上げて僕、と手を上げる短刀たち。ご飯中なんだけど……?

「決まったぜ、#紅#。乱と俺だ」
「あれ、二振り?」
「短刀に戻るのなら窮屈だし、交代にした」
「うん、わかった」

じゃんけんで勝った二人を微笑ましくみる。あ、そうだそうだ。

「明日、父が親しくしていたという神主に大太刀を譲り受けることになったから、護衛の二振りも決めちゃって」

そう言うと、静かにご飯を食べていた刀たちが立ち上がる。まあ、黙々と食べてる刀もいるけども。

「ねえ、#紅#」
「ん?」
「静かに食べてる方がいいでしょ?」
「まあね」

シーンとなる。咀嚼音は聞こえるけど。

「世間話はしてもいいんだよ?ただ、ご飯のときに立ち上がるのは礼儀がなってないかなって」

そう言うと、少し、ざわざわする。うん、これぐらいがいいなぁ。

夕餉を終え、久しぶりに桜を肴に日本酒を口に含む。未成年の飲酒?15を越えたら大人よ。

「主、政は」
「終わったよ。だから呑んでる。今日の見張りは太郎なの?」
「いえ、長谷部です。明日の護衛が決まりましたので報告を」
「ああ、ありがとう」
「私と山姥切国広になりましたので」
「うん、わかった。楽しみにしててよ、太郎。これ、言ったらわかるかな?」
「いえ、楽しみにしておきましょう。今のは聞いていないので」
「うんうん、じゃあ、おやすみ」
「はい、おやすみなさい」

盃を口につけながら酒を煽る。明日学校休もうかな、なんて。

「主」
「長谷部、呑む?」
「いえ、注ぎましょう」
「ありがとう。っはぁ……ここの桜はいつも壮観だね」
「ええ、そうですね」
「……長谷部」
「なんでしょう」
「明日、学校休んでいいかなぁ」
「ダメでしょう。主、もうお休みください」
「……わかった」

二日酔いになるのもまずいので、これで終わりにしようかな。長谷部が布団を敷いてくれる。

「ありがとう、長谷部」
「いえ、主のためならば」
「おやすみ、長谷部」
「おやすみなさいませ」

布団に入って、酒のおかげか。意識が沈んでいった。


「ねえ、長谷部くん」
「なんだ?燭台切」
「主の部屋の窓枠に徳利転がってなかった?」
「いや、そちらを見ていない」

へし切長谷部は主に注いでいた徳利と盃を持ち、厨房にいた。燭台切光忠は頭を抱えている。

「……どうしたのだ」
「多分、徳利それだけじゃないんだ。後、最低4本は呑んでる」
「とりあえず、見てくる」
「頼んだよ、長谷部くん」

すぐさま主の部屋に行き、燭台切が言ったところを見ると、月明かりに照らされている徳利が9本。

「主……!」

眠っている主を見ながら、徳利を拾い、厨房に戻る。

「やっぱり神酒だ。あの人は自覚して呑んでるのか、気づかずに呑んでるのか…」
「後者だろう。まだ、大きな異変は現れてないであろう。燭台切」
「そうだね。主の霊力は使えば使うほど強大になる。主も、違和感は感じない。ただ、他で気づくのであれば」
「堀川の言っていた霊力を持つ娘と何かの血を持つ男か……」
「そうだね。危害を加えないのならそれでいい。主は僕たちで護る。そうだよね」
「ああ、当然だ。主命でなくとも主のためにだ」

徳利を片付け、他の作業に移ろうとする燭台切を見て、言う。

「では、俺は楓様の部屋に戻る」
「……長谷部くんも隅に置けないよね」
「主の辛い姿は見たくないからな」

「主は人間。一人だけ育ち老いていくのが辛いと言ったときは、僕も手伝うよ、長谷部くん」

厨房を出ていった長谷部のうしろを見て、燭台切はそう言った。



国広と藤四郎と私と


昨日と変わらない時間に起きて、変わらない時間に祈祷して、思わず厠で吐いて。ご飯食べずに、光忠に謝っておこう。

「うぐぐぐ……髪の毛がまとまらない…!」
「主、どうなされましたか」
「あ、長谷部。いつもの髪形が出来なくて」
「主のためなら、髪結いも!」

長谷部がそう言うと、苦戦していたのが嘘のように3分で綺麗になった。

「おお!さっきまでの10分が嘘みたいだ!ありがとう、長谷部!」
「主命を果たしたまでです」

準備を終わられて、薬研に戻ってもらって、国広と歩く。

「#紅#さん、本当に大丈夫?」
「二日酔い辛い」
「お願いだから吐かないでね!?」
「あい」

『ほんとうにわかってんのかよ、#紅#』

「信用してないなー?」
「#紅#さん、酒がらみのことで信用はないから」
「あはは」

駅までは誰とも会うことがないため、多くの話ができる。

「今回は文が届いたの?」
「まあね。父上が親しくしていた神社だけど、廃れる一方。後継ぎもいないから刀を無償で渡してくれるらしいの」
「誰かは知ってるの?」
「まあ、一振りは教えてくれたよ」

『一振りだけじゃないのか』

「まあ……他はわからないからね」
「#紅#さん」
「ん?」
「学校であっても、油断はしないでね。#紅#さんを狙う奴はどこかにいるから」
「わかってるよ。警戒はいつもしてるよ」

最寄り駅に着いて、電車が来る。
高校は終点だ。それまでは国広の肩を借りて寝る。

「#紅#さん、そろそろ起きて、人が乗ってくる」
「ん……」

30分ぐらいすると、国広が起こしてくる。人が多く乗ってくるから。うつらうつらとしながら、国広を見る。

「んー、抜けないなぁ」
「朝から光忠さんがぐちぐち言ってたよ。何本呑んだの?」
「10本」
「相変わらずだなー」

まだ、少し眠い、な……。

『起きなよ、#紅#!』

「ふぁっ!?」
「おはよう、#紅#さん。次、だよね?」

響くアナウンスを聞き取ると、そうみたいだ。

「うん、そう、だね。ありがとう」

藤四郎、と心の中で呟いて、鞘を撫でる。

『頼りにしてくれ!』

そう言う声に頷いて、電車を降りる。
国広とはぐれぬように出口に向かって、駅を出る。
教室に着いて、鞄を置く。

「おっはよー!」
「おはよう、茅野さん」
「おはよう、茅野ちゃん」
「二人とも早いね!1番だと思ったのに」

茅野ちゃんが言うのも不思議じゃない。だって、今、7:55だし。

「乗ってる電車を1本置くと遅刻するかもなの」

都会にある高校と違い、私たちが住む神社はド田舎だ。
朝は特に本数が少ない。

「そうだ、#紅#!今日、先生達と学校で落ち合うようにしてるんだけどさ。#紅#は行ける?」
「ごめん、今日は用事があって」
「それなら、仕方ないか……。巫女の仕事大変?」
「わからないな……?でも、楽しいんだよ!」

物心がついた頃には神社にいた。小さいときに家にいたような気がするけど。私からすれば、神主の仕事を手伝っていた経緯があるから、それが大変だとかを思ったことはない。
ただ、楽しい。


「疲、れた……はぁ」
「お疲れ、#紅#。90ね」
「よし、10点。もう授業寝る」
「あんたねぇ……」

体育の時間。2時間連続の合同授業。オリエンテーションを終えると、シャトルラン。二人一組になって前後半で走る。私は別クラスにいる中村ちゃんと組んだ。
男子の方を見れば、国広が走っている。他にも、磯貝くんや前原くんがいる。赤羽くんはいつものようにサボっているんだろう。

「あの堀川って子知り合いなんでしょ?」
「うん、幼馴染みだからね」
「なんかスポーツでもやってんの?」
「んー、剣道?」
「なんで疑問系なのよ」
「家に道場があるだけで、そこで鍛練はするけど。他のスポーツはしてないはず」

女子で走っている人はもういなくなり、国広も110でやめた。息切れはせず、ふぅと息を整えているだけのところを見ると、楽勝だったんだろう。

まわりできゃあきゃあ、言ってるのは誰に向かってなのだろう。

「ねぇ、#紅#」
「んー?どうしたの」
「誰が好きなの?」
「みんな好きだよ?」
「恋愛感情で、よ!」
「うーん……?あ、次後半みたいだよ」
「えー、ちょっと!」

ほんとにいないんだってと言って中村ちゃんをスタートラインに立たせる。男子の方を見れば、国広と目が合う。ニコッと笑顔で手を振ってくるから振り返す。
中村さんを見ながら、男子を見ると、潮田くんや黒子くんがいる。やっぱり赤羽くんはいませんね……。

『#紅#、後ろだ』

「え……?」

思わず、藤四郎の声に反応する。
後ろを見れば、花開院さんと桃井さんが話している。

『黒髪の方だ。大方だが、#紅#の霊力は感じ取ってるだろうな』

「お疲れ、中村ちゃん。88回」
「よし、10点!」
「それ、狙ってたよね」

笑顔で中村ちゃんと話ながら、藤四郎の言葉に耳を傾ける。

『まあ、国広にも違和感を感じてるのは誉めるところだが、#紅#に違和感を感じないのはまだまだ未熟だな』

「……?」
「#紅#、どうかした?」
「なんでも!」



太郎と国広と私と


あの後、一緒にE組のメンバーで食べた。ちょっと視線が痛かったけど。学校が終わって、神社に戻り、正装に着替えて、髪の毛を整えてもらう。

「武具まで着けてが正装っておかしいよね」
「その程度なら軽装だ。昔はな」
「甲冑なんかは着れないね。うん、無理」
「終わったぞ」
「ありがとう、国広」

髪を国広に直してもらって部屋から出ると太郎がいた。

「よし、行きますか」
「また、でんしゃに乗るのか?」
「違うよ。今日は車に乗っていくの」
「くるま、ですか?」
「うん、日本政府が派遣してくれたらしいから」
「そうなのか」

車の説明をしながら、神社を出ると、黒塗りのリムジンが。男の人が待っている。

「誰だ!」
「!」
「待ちなさい、国広」

男の人に抜刀しかける国広を止めて、男の人を見る。あれ。

「烏間さん……!?」
「黒雲さんじゃないか。君が要人なのか?」
「多分ですかね?後ろの二人は兄弟の国広と太郎です。
二人とも、去年の担任の先生の烏間先生。警戒しなくていいよ」
「まあ、そうですね」
「あんたが言うなら」
「それで、桜花ビルの近くでいいのか?」
「はい、よろしくお願いします」

黒塗りのベンツに乗る。国広が先に入って私が二番目。太郎が入りにくそう。

「大丈夫?」
「大丈夫です。すいませんが刀を横にしても?」
「いいよ。国広も大丈夫?」
「あんたの方が狭くないか?」
「大丈夫」

運転席に乗った烏間先生がこちらを見てから、車を動かした。

「主、良かったのですか?」
「何が?」
「護衛が二振りなど……」
「それにあんたは狙われの身だろ」
「それは昔から。最近はみんなの本体が狙われてるんだよ?まあ、皆がいるうちはその心配もないでしょう」
「……主、曲者が現れた場合は戦いはすべて私たちに任せ、逃げてくださいね」
「わかった。逃げられたら、だけど」
「……あんたは、俺達が護る」

そう言って、頭に手をやられる。撫でたりをせず、ただ頭に手を置いただけ。それが、安心するような、不思議な気持ちになる。

「黒雲さん、着いたぞ。そこに桜花ビルがある。1時間後にここで待っていてくれ」
「わかりました。行こう二人」

桜花ビルに入る。桜花ビルに、父の知り合いの桜花さんがいる。神主を辞め、経営者としての頭角をメキメキと表したのだ。やっぱり、人には天職があるようだ。
受付嬢に字を名乗ると、応接室に通された。

「いやはや、嚆矢のこどもがこんなに育ったとは」

刀を二振りを付き人に持たせている若く見える男性。

「お、お久しぶりです。桜花さん」
「いや、お嬢ちゃんも立派になったもんだ。刀を置いて、出てくれ」

そう言って、刀を丁寧に下ろす。

「俺の家にあった日本刀だ。鑑定士に見てもらおうかと思ったが、刀のことなら嚆矢の家に頼む方が信用できてな。見てはくれないか」
「…わかりました。失礼します」

鞘から少し刀を出せば、すぐに理解した。もうひとつの刀を手に取る。大太刀である二振りだけど、二振り目の方が長い。少しばかし重いが、そんなものだろうと思い至る。鞘から、刀を抜いて、戻す。

「この二振りは、こちらが石切丸。そちらが次郎太刀です」
「なるほど、著名の刀なのか?」
「石切丸は平安のときに作られた大太刀です。三条という刀派で有名な刀です。次郎太刀は見ての通り、大きい刀で、神社に奉納されていると聞いてましたが、まさか、桜花さんがお持ちになっていたとは」

刀の状態はまあ、いつものように手入れ“は”されている状態。現代の人が刀の手入れなんて上手く出来ないから。

「すまないな。二振りをきみの神社に寄贈したいんだ」
「お受けさせていただきます」

深々とお辞儀をして、刀を受け取り、ビルを出た。



狙われたのは


思った以上に早くに終わってしまった。

「とりあえず、待ち合わせ場所に戻って、することないし待とっか」
「わかりました」
「わかった」

烏間先生と別れた場所で、待っておく。

「次郎でしたか……」
「貴方の弟でしょ?大太刀は霊力を与えずとも、2:30……。久々に力を使おうかな!」
「無理はするなよ」

そう言って、国広は頭を撫でる。髪形崩れるから、さっきはなでなかったんだと思う。今はぐしゃぐしゃになった。

「っ!?」

文句を言おうとしたときに感じたのは、私に向けられた確かな殺気。
太郎も国広も刀に手を置き、周りを警戒する。だから。

「っ上!!」
「主っ!」

屋根から上から降りてきた“人間”に反応が遅れた。抱き抱えるように持っていた二振りの鞘の先をコンクリートの地面に付けて、短刀を抜き、刃を上に向けて突き出した。

キン、と金属音が響いて、鍔迫り合いになる。相手はナイフで短刀を止めていた。

黒ずくめの服に黒のハチマキをしている、見たことのある男の子。髪の毛は、オレンジ。

「大丈夫、私だって、戦える」
「ですが、流石にこれはまずいですよ」
「……ひぃ、ふぅ、みぃ、よぉ、いつ、むぅ……」
「……お前がその刀を置いて、くれれば、問題ない」

……思わず、眉を潜むた。
引いたオレンジの髪の子と、黒髪の男。黒髪が私に指を指して、刀を置いていけ、と言った。いつもなら、殺されそうになるだけ。どうして刀なのかわからない。でも、彼らは皆を奪う為に、私を殺そうとしてくるのだろう。
人数を考えると、私達は不利だ。ならば。

「太郎、国広、少なくとも1分、私は完全に無防備になる。時間稼ぎをよろしく」
「……わかった。無理はするな」
「主のためならば」

かんざしを外し、握って、目を瞑る。……大丈夫、国広も太郎も強いから。
刀から付喪神を呼び覚ますためには、多くの霊力が必要となる。だから、私は神社でしか呼んだことしかない。神社には霊力があるから、短刀なら30分、打刀なら1:30ほどで自然に呼び覚ますことができる。通常の大太刀は2:30。私の霊力を流すことで呼び覚ます時間が短くなる。二振りを呼び覚ますことができるかわからないけど、何もできないまま二振りを奪われるのは許せない。どれ程の霊力が私にあるのかわからない、これは賭けだ。神社が補ってくれる分を私が補えるのかは謎だけど、やるしかない。このかんざしは霊力を増幅させる代物と聞いたことがある。それを胸を添えて、祝詞を呟く。

お願い、助けて。

「君はなんだい?」

私は、審神者、#紅#。

「あんたがあたしを呼んだのかい?」

そう。今、私は貴方達を手放すように強要されている。

「それはそれは。どうして、手放そうとしない?」

刀が好きだから。あの人達の手に渡って、刀解されたのなら、私は、何も出来なかったと後悔する。だから、私は。

「そんなに命掛けてくれたんだ。聞かないわけにはいかないでしょ?」

ありがとうございます!

目を開く。太郎も国広も私の為に傷が……。でも、大丈夫。味方が増えるよ。

「我、審神者の名は#紅#、自ら戦う力を刀に与える!」

そう呟くと、目の前が真っ白になって撫でられるような感覚がして、世界が暗転した。


「久しぶりだね、兄貴」
「次郎……」
「#紅#……」
「大丈夫、霊力を使いすぎたんだ。それで意識が落ちた」

石切丸に抱えられた#紅#を山姥切が受け取る。襲ってきた奴らはもういない。

「黒雲さんは大丈夫か?」
「……ああ、あんたが気にすることじゃない。次郎太刀だったか、あんたが前に座れ」
「あたしがかい?」
「前なら、怪我をしていないあんたがいいだろ。少なくとも#紅#を急いで連れて帰らなければいけない」
「ああ、そうだね。大太刀二振りを自分の霊力だけで賄ったんだ。呼び覚ますまで意識があったことの方が不思議だ」
「………主は、昔から、霊力の高い方と聞いています」

烏間は車を走らせる。が、後ろの会話が気になって仕方がない。
白の布を被った血濡れた青年は、#紅#を心配そうに見ていて、手を握っていた。
30分後、烏間と#紅#達が合流したところに着いた。

傷を負っている二人と気を失っている#紅#を見て、病院に行くことを提案したが、拒否されたのだ。

「助かった」
「本当にいいのか。病院に行かなくて」
「問題ないので、気にしないでください」

烏間は#紅#の素性を知らない。そのため、周りにいる人間がなんなのか、などもわからず、仕方なく手を引いた。



???


「…………はぁ」

暇だ、楓さんがいないと学校にいる意味なんてないのに、と堀川国広は机に伏せる。

昨日、神社に戻ってきた山姥切国広が声を荒げて、指示をしていたのを思い出す。山姥切国広は#紅#が審神者になって、始めて顕現させた刀だ。父からの代の堀川国広からすれば、兄弟との接し方が若干違うことに不満を少し持つ。

「(兄弟は楓さんの始めての仲間。主さんが死んで哀しみに暮れていた僕達は楓さんを少し避けて過ごしてしまって……楓さんを悲しませた)」

神社としての仕事で奉納された山姥切国広を楓が顕現させたことで、楓は山姥切国広に泣きながら辛いことを話していた。

「(兄弟は楓さんを救った。当然、特別か……)」

この不満は理解できないけど、と目を瞑る国広は、深呼吸をする。

「(あ、茅野さんが来たのかな……)」

廊下を歩く音が聞こえ、目を開ける。

「おっはよー、#紅#、堀川くん!ってあれ?」
「おはよう、茅野さん。#紅#さんは高熱で倒れちゃって、当分学校は来れないかも」

ええー、と言う茅野に気付かれないように手を握る。
多分、この人じゃないと、わかっていても耐えられなかった。国広は楓がいないのに学校に来たのには理由があった。一つは楓と自分の休学届、退学届を貰うため、もうひとつは刀を狙った集団の情報を集めるため。
後者の目的が無ければ、学校など来ずに自分も刀の手入れや楓さんの看病などをやっているのだろうと思う。

「(兄弟に言われたのはオレンジの髪と黒髪が二人、金髪…に白い髪が逃げたって言ってたかな)」

オレンジの髪が楓を狙った、そう兄弟が言った。

「(今、始末出来なくても、僕が殺りたいな」

「堀川くん、どうしたの?」

おはよう、と言って堀川の前に立つ渚と業。

「なんでもないよ!」

笑顔でそう答えた。


6時間目の終わりのチャイムがなる。
国広は、すぐさま学校を出ようとしていたが、掃除に当てられ、渋々していた。
廊下を歩いていると、女子生徒が校門でイケメンが舞っているという話を耳にする。

「あれ?」
「………、!」
「どうしたの、兄弟」
「……遅かったな、兄弟。光忠に遣いを頼まれたが、どこに万屋があるかわからないからな」
「ああ、ついでに僕と行動した方が何かあったら、対応しやすいもんね」
「……そういうことだ。わかっているなら行くぞ」
「どこにあるのかな」

お前、知らないのか!と驚いたように言う山姥切に、冷静に返答していく。堀川は#紅#と登下校を共にするが、寄り道をしないため、どこにあるかわからないのだ。

「どうする。意識が戻らない上、息は浅いし高熱が出てる。光忠によるとひえぴたなるものが、熱冷ましになるらしく、冷却材に似たものや、目が覚めたときのために果物を買ってこいと言われた」
「うーん、昔、#紅#さんが熱を出したときは主さんが用具を全部揃えてくれたからなぁ…」
「だれかに聞けばいいかもなんだけど……」

誰かいたかな……?なんて言って周りを見ると遠巻きにこちらを見ている女、女。どちらからと言わずに兄弟、と呼んだときに考えは一致したようだ。

「そういえば、潮田くんまだ学校に残ってたかなぁ」
「お、おい!」

兄弟の声を聞かずに、学校に入る。

「潮田くんいますかー?」
「あれ、堀川くん、帰ったんじゃ……誰?」
「僕の兄弟。潮田くん、ここにひえぴたとか果物が売ってるお店ってある?」
「堀川くんの兄弟か…、お店ならあるけど、どうしたの?」
「#紅#さんの看病に必要なものが切れたらしくて、でも、僕達の家の近くにそういう店が無くて、この付近にはあるかもしれないけど、場所わからないんだ」
「この近くか……なら、ヒ〇リ薬局かな」
「どこにある!」
「帰り道だし、一緒に行くよ。僕の友達もいるけど、いい?」
「ありがとう、潮田くん」
「礼を言う」

堅いなぁ……と思う渚に気にすることなく、キョロキョロと高校と呼ばれる寺子屋を興味ありげに見ている山姥切を堀川は微笑ましそうに見ている。

「兄弟、準備ができたみたいだから、行こうか」
「ああ」
「おーい、渚。裏から出ようぜ!」
「なんで?あ、堀川くん、僕の友達の杉野」
「初めまして、堀川国広です」
「杉野、ちょっと寄り道するけどいい?」
「おう!いいぜ。で、裏口から出る理由ってのはな」
「見つけたっっ」
「………」
「ちょっとごめんね!」

そう言った瞬間に杉野と渚の腕を掴み、走り出す。
山姥切国広は先に走っている。

「待ってよ、兄弟!」
「あいつら、俺を綺麗だとか言うんだ……!」
「ちょっと、兄弟!」
「とりあえず、待ってよ、堀川くん!」

数分、渚と杉野は二人の逃亡に付き合わされた。

「すみません、兄弟、#紅#さん以外の女性と大概上手く行かなくて」
「すまない……」
「いいよ、じゃあ、こっちに薬局があるよ」

薬局で、見つけた冷えピタと果物などを買って、駅まで共に歩く。

「堀川くんの家ってどの辺なの?」
「田舎、ですよ。静かで僕は好きだけど」
「黒雲さんのお見舞いに今度行ってもいいかな?」
「んー、みんなに聞いてみますね。じゃあ、さよなら」

渚と杉野と分かれ、電車が来る。他に乗る人も、乗っている人もいない。

「神社にあいつを連れてくるのか?」
「さあ、とりあえずは#紅#さんが目を覚まさないことには連れて来るなんてもってのほかだし」
「そうか……」

神社に戻ると、燭台切が出てくる。おたまを持って。

「はい、ひえぴたと果物」
「ありがとう、すぐに濡らした布が温くなってしまってね」
「容態はどうだ」
「朝と変わらず、かな。長谷部くんが付きっきりだから、替わってあげて」
「……ああ、わかった」



???


誰かに呼ばれる声がする。目を開くと変わり果てた私が住む神社。みんなの気配はなく、中に誰かの気配を感じる。愛用の短刀は知らないうちに手に持っていた。警戒しながら、神社に入る。

神社内は荒れていて、冷や汗を掻く。私は、ひとりぼっちになったのではないか、そう考えると、喉がくっと痛くなる。この気配の正体を知るのが先決だ。みんなを殺した奴には、復讐を。

気配に導かれるまま、歩を進め、部屋の前に立つ。そこは神事を行う場所だ。襖を開けると、写真で、見たことのある人間。

「お、母さん……?」

「ふふっ、やっと邪魔者が無くなった。取りついたものも祓ったし、高価な刀が多くて助かったわぁ」

どうやら、お母さんは私が見えていないらしく、独り言のように高らかにそう言う。

「娘が死んでいいことずくめね。あの人と別れなきゃよかった」

……この人は、私欲が多い人なんだ。私をどうも思っていない。父上を私欲でしか必要としかしていない。

「よかった。来てくれたのか、#紅#」
「だ、誰!?」
「ふむ、覚えておらぬか、小娘よ」

気配がないのに、見える。貴方は、なに。

「流石にお前をここに留めるには無理があるな。早急に終わらせなければ」
「……え?!」
「ここは、間違った選択をした未来だ。お主が死んだ影響で、神社は神域ではなくなり、霊能者により刀剣の付喪神は剥がされ、やがて荒廃してしまった。だが、こうなってはいけぬ。いずれこの時代も消されてしまうだろうが……。小娘、お前は今、こんな未来を作り出してしまう危機に瀕している」
「……あ」

ここに来る前のことを思い出す。霊力が切れて、そして。

「お主を救うために一歩を踏み出したものもいる。それがいずれ、鎖になろうとも、お前の望むように、だ。ふむ、時間か」
「え、待って、貴方はなに?どうして私にそんな」
「俺を思い出せぬか?お前なら、俺を見つけられるだろう、俺は───」

続きを聞けずに世界が暗転する。とにかく、私は死んではいけない。………あれ、さっきの人の外見を思い出せないや。
目を瞑って、開けば、私の変わらない部屋だった。

「え」
「……おはよう、清光」
「主!目を覚ましたんだね!」
「うん、清光、どうして泣いてるの?」
「無事で、よか、よか、た」
「心配させて、ごめんね」


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