ネタ供養と名前変換なし(小説) | ナノ
自然消滅

黒雲楓
白鳥沢3年(三年間、牛島と同じクラス)
冷静、たまに変人(腹チラが大好き)
身長は160cmぐらい
スタイルは足がちょっと長くて細い。
小学校は及川と岩泉と同じ。
小1のときの最初に隣に及川、及川の前、つまり斜め前に岩泉がいた。
それから、二人と仲良くなり、クラスが別れたりしたけど、小6のときに同じクラスに。
また二人と仲良くしてて、とあることがあり、及川と付き合うことに。

中学になって、二人とクラスが離れ、そのまま、及川と自然消滅。
及川の進学先は、友達からの情報があり、知っている。

今でも、ことあるイベントの夜に及川が夢に現れ、苦しんでいる。

及川への気持ちがいまいちわからない。

小1のときから及川に片思い、積極的にアタックしたのに、思いは通じなかったが、小6のときに付き合い、少し積極的になったが、お忍びデートしかしていない。

中2のときに送ったラブレター……というか、どう思ってるかという手紙を送ったが、「わかってるでしょ?」という言葉を人伝てに聞き、終わったのかなと思っている。

積極的だったが、奥手になっている。

中学のときは美術部にいたが、副部長をしていただけ、たまに作品が選ばれるけど、それだけ。

白鳥沢に受かっているだけあって、賢い。

牛島とは席が前後なので、授業で一緒に活動をしたり、話しているうちに仲良くなって連絡先を交換。

入学当初は、帰宅部だったが、友人であった牛島のお願いでバレー部のマネージャーに(1年の後期から)。

牛島と及川の関係も知らなければ、中学時代のときに話したことがあるのは、美術部の後輩だけ。
影山なんて、マネージャーをして、色々調べてから知りました。

マネージャーとしては、データを整理することが得意。ちゃんとスポドリの用意もしてくれます。

でも、運動音痴。それに膝を痛めているので、体育は見学が多い。そのおかげで、客観的に物事が見えているのかもしれない。

ドジ。月1で家の階段で何かしら事故が起こります。

及川のことを“徹”たまに“及川くん”、
岩泉のことを“一”、
牛島のことを“若”と呼んでいる。


及川徹

好きな子に手を出せない、ヘタレな人。

本当は楓のことが好きなんです。
でも、勇気がなくて、中学のとき、話せなかったんです。

その所為で、楓がどこの高校に行ったか知りません。

楓の家に、数度遊びに行っていたが、ヘタレ過ぎて行けません。


岩泉一

ヘタレ及川の聞き役。

中学時代、楓とすれ違った!とか、楓を見れた!とか聞いて、及川……とか思ってる。

楓とは、普通に会えば話せると思う。

楓に恋愛感情を持っているわけではない。


牛島若利

楓と友達(親友ではない、友達)。

普通に、朝練に行く途中でバッタリ会って楓と登校して、朝練して、授業受けて、楓と意見交換して、バレーで意見交換して、一緒に帰るだけです。

楓は北一出身だけど、バレー雑誌で及川を見つけたときに顔色を変えたので、及川については触れないようにしている。

楓のことは気にかけているし、たまにお前ら付き合っているのと言われる。
付き合っていないが、まんざらでもなさそう。



「………ふぁっ…」

欠伸が漏れる早朝。
人通りの少ない住宅街を歩く。

「眠そうだな」

そう言って、現れたのは、若。

「ん、はよ…若、いちお、春高行くためにちゃんと成績いる、から。
若に最後まで付き合うって、言ったしね」
「……そうか」

うん、そう答えて、会話を途切れ途切れ交わしながら、学校に着く。

若は、朝練のために身体を動かしに体育館に入って、私は朝用の薄めのスポドリを用意する。

あと、半月と迫ったIH予選により、いつもより皆の集まりが早い。

そろそろ、予選のトーナメント表も発表されてるはず……。
まあ、ここはシード校で入れているから、それに誰であろうと……ね。

それでも多分、予選中は市民体育館に座りっぱなしだと思う。
相手の選手の弱点とかサーブ力とか、データを取る。
それが、まあ、試合に反映されていても、一部、他のデータを取ろうとしないのは、策略も技能もぶち壊す圧倒的な力があるから。

気になるところと特異な点だけ伝えれば大丈夫。

対処は皆が話し合ってしてくれる。

スポドリをボトルに入れて、体育館に運ぶ。

丁度、朝練も終わる前のようなので、並べる。

朝練も終わり、スポドリを洗ってから、若と一緒に教室に行く。

「そろそろ、トーナメント表、出てるかも…だから、出てたら、部活の最後に渡す」
「わかった」

教室について、机に鞄を置く。
不思議なことに若とは前後ろ、隣、斜め、と近場にいる。
今は、隣だ。

「楓ー!英語の予習部分やった?」
「まあ、一応……。
わからなかったところもあるから見せないよ?」
「む……自力でしないとか……」
「それより、単語テストを気にしないの?」

あ!と言うと、すぐさま机に行く友達。
忘れてたのかな……。

「どの範囲だ?」
「501から600……。後、前の授業の穴埋めテスト」

そう言って、英語の準備をした。


「あった………」

放課後の部活中。
休憩の終わった直後の私。

バレー部に導入されたタブレット端末を触りながら、目的のものを見つける。

印刷するために顧問に伝え、職員室に向かう。

端末を印刷機に接続して、刷り終わるのを待つ。

こちらのグループに、彼はいないみたいだ。

まあ、当然か。
別グループに、シード校として入っていたし。

若は気づいているのに、話せてない……。
マネージャーを始めて、1年半になるけど、たまに夢に出てくる。

もう、忘れてるのに、忘れてるのに。
そうやって、自分の思いを押し込める。
もう彼は私のこと見てないんだから。

ガコンッ

と、印刷機の刷り終わる音で、思考が停止する。

そろそろ、腹括らないと。
うん、若に、言おう。

それより、急いで階段を下りて、体育館に走る。
時間が、時間が。

なんとか体育館について、息を整え、体育館に入る。

よかった……。練習メニューを見る限り、2回目の休憩が終わった直後ぐらいだ。
コーチにトーナメントを渡して、空になった(なりかけている)ボトルを入れるカゴを持ち出し、補充する。

あ、スポドリの粉、後、少ない……。
そういえば、テーピングも少なかったっけ。
明日、自主練切り上げて、行こ……。

自主練の時間に入り、スカートの下にジャージを履く。
やることは、サーブ。
ちょっとだけ彼らとしたバレーで、サーブが得意だった。それ以外はからっきしだけど……。

レシーブ練はメニューの少しの時間にしか当てられてないから、自主練のときにやる選手も少なからずいる。

少し、ボールを壁打ちして、よし。

「──君」

指名して、ジャンプサーブを打つ。
見事に、レシーブしたので、次は苦手な人を。

また、指名して、打つ。
レシーブに失敗して、別方向に飛んでいくボール。
失敗すれば、エンドレス。
成功するまで、打ち続ける。

7時になると、自主練終了。
若がいるので、一緒に帰る。

「若、明日、スポドリの粉と、テーピング、買う、から、自主練、参加しない」
「俺も、ついていく」
「え、あ…ありがとう」

いつも若は買い出しのときについてきてくれる。
荷物持ちにさせちゃうし、申し訳ないと思う。
そう、伝えても、ついてこないときはなかった。

そういえば。

「若は、とりあえず宮城(ここ)で気にしているとしたら、どこ?」
「及川」
「そっかぁ……」
「………すまん」
「若に気付かれてるのは、薄々気づいてた…。
ごめんね。気にかけてしまって…」
「何か、あったのか?」
「………長くなる……ていうか心の準備が…明日でいいかな?
買い出しの、後」
「ああ」

今の私の顔は、どんな顔なんだろ。
若が気にしてる。
選手に心配かけるのは、あんまりよくない、のに…。

「他に、足りないのはないかな?」
「…………ああ」

若に荷物持ちをしてもらってショップを出る。

「……及川との関係、聞いていいか?」
「………うん」

帰り道、暗くなり始める空を見ながら、徹の話を始めた。


「黒雲楓!よろしくね!おいかわくん!」
「及川徹!こっちこそ!黒雲ちゃん!」

出会いは、小学校1年、入学式当日。
隣になった及川君に挨拶。
あの頃からかっこよくて、一目惚れをしたような気がする。

「今週、給食当番だね、とおるくん」
「俺が行くとき持っていく!黒雲ちゃんは帰りのとき持って!」

名簿で決められた給食当番は、1年のときは持つものが固定されていて、重いものだった。
及川君は、それを苦労しながら、持ってくれて(一応、自分も持ってたけど、ほとんど及川君が持っていた)、優しい彼をもっと好きになった気がする。

「1年のときに戻ったみたいだね、徹、一」
「そうだね!」
「そうだな…」

6年、3.4.5とクラスが分かれていた、及川君と一、岩泉君と同じクラスに。
及川君は私の隣で、岩泉君は及川君の前、つまり斜め前にいた。

クラスが分かれてても仲が良くて、放課後のときにバレーで遊んでいた。

「こんなジャンプサーブがテレビでやってたんだ!」
「今は、できないだろ」
「でも、大きくなったら、武器になるかもね!
徹!それ、どこでやってたの?」

「できるようになった!
でも、結構ネットギリギリ……」
「え!でもスゴいじゃん!俺に教えて楓!」

及川君と岩泉君と放課後にたまに遊んだ。
ジャンプサーブを真似てやって、及川君に教えたこともあったかも。

「なぁ、徹」
「ん?何?──」
「お前、──とお似合いだよな。告れよ」
「は!?ヤだよ!」

そのとき、岩泉君が珍しくいなくて、及川君と私と他男子2人とバレーをしていた。

小学校のときは、及川君はバレー部で、私は何もしてなかった、から、サーブ以外からっきしの私のカバーは及川君がやってくれていた。

男子の発言で、私は嫌だった。
約6年、片思いし続けている身の私には、いたくない空間だった、けど。

「なら、黒雲と付き合えよ!お前ら仲良いしな」
「え……」

思わず、口がにやけそうになった。
付き合えたらいいのに、って思ったけど、その話題が終わって、またバレーを再開した。

「あの、さ、楓」
「ん?何?」

二人きりの帰り道。
秋で薄暗い夕方のときに無言で歩いていたら、及川君に呼ばれた。

「俺、さっきのこと、別に嫌じゃない」
「え!?さっきのことって?」
「楓と付き合うこと!」

思わず、固まった。
6年間の片思いが実ったときだった。

その後、承諾して秘密で付き合った。


「でも、中学のとき、クラスが離れて、男女の関係に敏感になって、話す機会がなくて、自然消滅したの。
私、別れるなら、ちゃんと別れたいし、モヤモヤしたままなの。
今、付き合っているのか、別れているのかはっきりしたい。
もう、及川君のことをどう思っているのか、わからないのに……。
私ばっかりが喋っちゃったね、ごめん」
「………いや、いい」
「………若?」
「なんだ?」
「なんでもない」

一瞬、見たことない顔した……?

「及川と会うのは、気まずいからなんだな」
「……うん、嫌いじゃないけど、好きでもない。
もう、自分の気持ちもわからないよ……あ」

話していたら、若との分かれ道だった。

「家まで送る」
「荷物まで持ってもらってるのに、そんな、悪いよ」
「これぐらい大丈夫だ。
それにいつもより遅いしな」
「……じゃあ、お言葉に甘えて」

若は、これ以上言っても引き下がってくれないしね。

「……楓、」
「どうしたの?」
「好きだ」
「………え?」

頭が真っ白になる。

え、え、え、え。


side:牛島

「及川と知り合いなのは、気付いていた。
それに雑誌で見るときも複雑そうな顔だった。
だから、付き合っているのか、と思っていた。
でも、お前を俺は、知り合っていくうちに…」

思わず、もれてしまった本音から、言おうと思っていなかったことを全て言ってしまう。

楓が、混乱している。

関係が壊れるかもしれない。
いいのか、今の関係で十分じゃ、なかったのか。

「好きになっていた。
………すまん、忘れてくれ。
だが、楓が及川の所為で苦しむのなら、俺が守る」

丁度、楓の家の近くの交差点に着く。

「……じゃあな」

そう言って、背を向けた。

「待って」

そう言って、楓が俺の腕を掴む。

「……ありがとう、すごく、嬉しい。
でも、ごめん、ちょっと、心の整理が、ついてない。
明日に返事、する。
もし、断っても、このままの関係のままがいい。
ごめん、ね。私の我が儘で」
「……いや、突然言ってすまん。
じゃあ、明日」
「うん」

そう言って、歩を進める。
思わず、楓とのことを思い出す。

俺が、楓のことが好きになったのは、恐らく、1年の後期過ぎ。

バレー部の3年のマネージャーが、春高終わりに当然引退することになって、新しいマネージャーがいないことが問題に。

レギュラーを勝ち取った俺に、何故か1年の新マネージャーを連れてこいと言われた。

でも、条件があった。
バレーの基本ルールを知っていること。
帰宅部であること。
仕事をしっかりすること。

この三つが、最低条件だった。

女友達と、言うと、楓しかいない。
帰宅部、というと、知り合いでは、楓しかいなかった。

だから、当時斜め後ろだった楓に聞いた。

「楓」
「どうしたの?」
「バレーのルール知ってるか?」
「細かいのは知らないけど、基本ならわかるよ。
小学校のとき、友達とやってたから。
まあ、サーブ以外からっきしなんだけど」
「バレー部のマネージャーになってくれないか」
「マネージャー業とか、わからないけど…」
「3年の先輩がいる」
「じゃあ、いいよ。頑張ってみる」

このことがあったのが、1年の夏休み後。

「はい、若」
「ん、ありがとう」

春高の県予選が終わり、練習漬けの毎日だった。

「応援席から見てたけど、みんな、凄いんだね。
私も、みんなのサポートが出来るように覚えないと!」
「ナイッサー」
「………サーブがどうした?」

サーブ練、レシーブ練のとき、楓の目が輝く。

「前に、サーブ以外からっきしって言ったけど、サーブだけは大の得意なの。
友達にピンチサーバーで入って、て言われるぐらい」
「北川第一だったか」

女バレも強豪だったはずだ。

「取ってみたい」
「自主練でね!」

自主練のとき、楓のサーブを受けてみた。
精度も威力もまあまあだったが、思わず、固まった。
フォームは完璧だった。

「タイミングズレた。
もう一回、いい?次は、もっと威力のあるもの打つから」
「ああ」

そう言うと、今度はドンピシャで、威力が凄まじかった。

「えへへ、どーだ!」

そう言う楓のサーブフォームが誰かに似ていると思っていたが、及川だったようだ。

気づいたら、俺は、楓のたまに見せる笑顔が好きだった。

そこから、惚れたんだろう。
俺が、及川を忘れさせてやる……。


(side end)

若と別れて、部屋に籠もる。

若に、告白された…。

あのとき、嫌じゃなかった。

それに、

「自分から言って、くれた」

思わず、もれる言葉。

徹は言葉にして、自分から言ってくれなかった。

私、面倒な奴なんだな…。

言葉で伝えてくれないと、心配で、心配で、なんとも言えない気持ちになる。

若……。
今までは、恋愛対象と見れてなかった。

徹のことで無意識のうちに見れていなかったのかな?

若を恋愛対象として、見てみる。
そうすると、思わず、恥ずかしくなる。

若の、腹チラっ……。
それに……よくわからないけど、徹を大好きだった時と似たような気持ち。

よくわからないけど、付き合って、みようかな……。
若となら、大丈夫な気がする。


「お、おはよう…若」

もんもんと考えていると朝でした。
信じたくなかったです。

「私、若に言われて、考えた……」
「……嫌なら断ってくれていい」
「ううん、若、私でよければ」
「!本当か?」
「うん、過去をうじうじしてたんじゃダメだしね。
私、前、向かなきゃ」
「……そうか」
「……私、面倒くさい人だよ?」
「それが、どうした?」
「…私、たまに、言葉にして、言ってくれないと、心配になるよ?」
「それでもいいのかと聞きたいのか?」
「……うん」
「それでもいい。
お前のことは、少なくとも他の奴より知っている。
それを含めて俺はお前に告白した」
「あり、がと…」

いつものようにいつもの交差点でばったり会って、挨拶をして、無言で歩いて、話してから、今。

人通りの少ないここも、30分すれば、多くの人が歩く。
そんな場所では、手を繋ぐことさえ、リア充に見えて仕方なかった、けど、今は静かだけど、俗に言う恋人繋ぎをしている。

若の手は程よく冷えていて、なんだっけ、手が冷たい人は心が暖かい……だったかな?


学校に着くと、いつもと変わらず、離れる。

準備して配って、洗って、若と手を繋ぎながら教室に行って。

「そうか、そうか、付き合ったか!」

という友達の反応に驚く。

「あんた達が付き合ってないっていうのが、不思議なくらい、仲良かったしね」
「まあ、これで、楓の観察も楽しくなる!」
「………何言ってんの」

友達と話して、席に座る。
クラス公認のカップルになったみたいだ。
でも、若とはそこまで変わったことをしない。
手を繋いだり、だけだと思う。

デートとかは、IHが終わってからだし。
夏休み明けて10月は春高始まるから……。

もしかして、


「受験終わり……?」

「何がだ」
「あれ?」
「声に出てた」
「………デート、とか」
「それぐらいの時間は取れる。安心しろ」
「………うん」

そう言って、頭を撫でてくれる。嬉しい……。


「ストレート勝ち、どっちも1桁抑えだし……。
まとめを主将、どうぞ」

IH初日、2回戦から入った白鳥沢は、当然、扇南に勝った。
相手はほとんど戦意喪失してたから、他のところ行っていた方が良かったかな……。

「黒雲」
「はい」
「次からは仙台体育館に行ってくれないか?」
「わかりました」

さあ…。
伊達工業か、青葉城西か……。
若に聞こう。


付き合ってから、帰り道は、若に家に送ってもらうことが多くなって、いつものことになりかけている。

「次の予選からは、仙台体育館に行くことなったんだけど、伊達工業か青葉城西、どっちに的を当てたらいいかな?」
「…………青葉城西だな。
前回、伊達工業と当たって勝った。
今のスタメンとは、ほぼ変わらないだろう」
「…そうだね。まあ、その日にどちらも勝つと当たるから。
それも見ておかないと、ね?」
「そうだな」
「いつも、ありがとうね、若」

家の前。
若と繋いでいた手を離し、そう言う。


「俺が、彼氏としてできることは少ないからな。
これぐらい当然だ。また、明日」
「……うん!」

若はそう言って、踵を返す。
私の返事を合図に走って行ってしまうけど……言ってることがイケメン過ぎて泣くよ…。

そんなことを思いながら、玄関の鍵を開けた。


………次は、青葉城西 対 烏野か……。

烏野は、“鉄壁”の伊達工業を下し、4回戦に。
確か、烏野は……、“堕ちた強豪、飛べない烏”。
それの二つ名を払拭するように、今年は這い上がってきた。

まず、中体連ベストリベロ賞受賞者の千鳥山(?)の2年 西谷夕君。
身長は、私よりも少し低いぐらい。
でも、レシーブは、凄く上手。

で、1年の影山飛雄君。
彼は、私と同じ北川第一出身で天才セッター。
そして、“コート上の王様”。
確か、若が……俺(エース)に尽くせないセッターはいらないって言っていた。
つまり、彼の異名はそう言うことだったんだろう。

それに、こちらも1年であろう10番。
伊達工業戦で、青根君と二口君の鉄壁を破る要素となったみたいだ。

もっと、調べないとね……。

対する青葉城西は、北川第一の生徒が多く集まる私立校。
及川君を筆頭に県内の強豪校。

白鳥沢とは、一昨年のIHのときに当たった以来、当たったことはない。
及川君が3年になって、かなり強豪として出来上がったことだと思う。

でも、白鳥沢は、負けない。
そのためにも、私は、全力で分析する。

青葉城西 対 烏野の試合が始まった。


Side:及川

「……あ」
「ん……?」
「よお、吉野」

烏野との対戦後、学校に戻り、明日のミーティングをしようとした。
そしたら、女バレと遭遇。
あっちも着実に歩を進めているみたいだ。

吉野ちゃんは、楓と仲が良かったはずの女バレの主将。

「その様子、勝ったんだな」
「まあ、明日、“女王”とだし、どうなるかわからないけど」
「俺のところは、明日は恐らく白鳥沢だな」
「白鳥沢か………」

ウシワカちゃんのいる“王者”白鳥沢。
明日、そこと戦う。

「話変わるけど、白鳥沢って楓行ってたな………」
「え……?」
「あれ、知らなかったの?及川」
「初知り」
「北一のときは有名だったけど?」
「嘘……」

ウシワカちゃんと同じ高校に楓が?
やっぱり勇気出して、声かければ良かったかな。
でも、卒業式の後、気づいたときにはいなかったし。
俺、俺………。

「クソ川!」
「イタッ!?」
「何回も呼んでんのに、気付かなかったのかよ、クソ川!」
「あ、ごめん…」
「!?お、お前、どうした……!?」
「なんでもなーい☆」
「うぜぇ」
「理不尽!」


ミーティングがあってから、岩ちゃんと帰ることになった。

「知らなかった……」
「…てっきり知ってると思っていた」
「岩ちゃん知ってたの!?」
「有名だしな」
「なんで、俺に……」
「お前が話しかけなかったからだろ」
「………まあ、そうなんだけど…」
「そういや、吉野は中学卒業後会ってないって言ってたが、同じクラスの南條なら、まだ楓と交流があるとか言ってた気が……」

南條……?
吉野ちゃんは中学のときから知ってるけど……。

同じクラスになったの初めてだったっけ……?


「え、ほんと!?」
「つい最近も雑誌借りたとか言ってたしな」
「羨ましい……」
「…………」
「何、その目!?」
「お前…楓以外の女には、キャーキャー言われて、笑顔で手を振れんのに、楓となった奥手になるよな」
「う……」

だって、楓って恥ずかしがりだし、俺は、ヘタレだし…目立ったら……。

「連絡先も知らないとか何してんだお前……」

岩ちゃんに色々言われるけど…。

「返す言葉もありません…」
「とりあえず、明日は月曜だし、学校もあるし、寝不足にはなんなよ」
「わかってるよー!」

ウシワカちゃんをぶっ潰すためにも、ちゃんと万全な体調で戦わないとね。


って思って早く寝たら、5時に起きた。

眠気なんてなくて、おかしい。
体を動かしたい衝動に駆られて、走ろうと思って着替える。
朝早いし、楓の家に行ってみようかなとか思う。

決してストーカーなんかじゃないよ。


家から、走って5分、歩いて10分ぐらいの場所に楓の家がある。
人通りが無くて、大通りから1本入ったところだ。
まだ、大通りにも、車がたまに通るくらいだ。

だからといって、楓の家の窓が出てない方の通りを沿って河川敷に向かう。

「……ふぅ」

決めていた折り返し地点の近くでスポドリを買って、帰り道を歩く。

俺は、ランニングの後は、歩いておかないとダメなやつで、帰り道は歩くって決めている。

丁度、楓の家に差し掛かったときだった。

「行ってきまーす」

なんて言う、楓の声が家の中から聞こえて、思わず、固まる。

嘘………今!?

今、会うのが、得策なのかな。
今、会ったら、楓の家の前だけど、まだ、6時半だし、大丈夫かな。
なんて考えてんだけど。
やっぱり俺には無理で。

「おはよう、若」
「おはよう」

………は?
楓の声と聞き覚えのある、声。
確かに、楓は、白鳥沢だって、昨日聞いたけど…………なんで?

なんで、“そいつ”といる?

「朝早いのに、わざわざ……ごめんね?」
「気にするな。
俺は朝から軽く走れるし、(名前)といれるからな」
「ありがとう、若」

そうだ。
やっぱり、楓といるのは、ウシワカちゃんだ。
それに、なんで、そんなに仲いいの?
どんな会話をしているかが聞こえなくなって、普通を装って、道路を渡る。

(名前)の制服は白鳥沢で、ウシワカちゃんと、恋人繋ぎをして歩いていた。
何、ウシワカちゃんと付き合ってるの?
ねぇ、俺とは、どうなったのさ。

side end


時間は遡って。

若[学校で待っている。
 気を付けて戻ってこい。]

         [今から戻る準備するから、
          ちょっと遅くなるかも]

そう若に送ってRAIN閉じる。

ビデオとか、ノートを片付けて、体育館を出る。

「あっれ〜?一人?」

そんな声が掛けられているみたいだけど、計算を止めない。
徹のサーブは9割入る。
数回ネットを通らなかったこともあった。

「君だよ。そこの紺のスカートを履いてる子!」
「あれ?無視?酷くない?ねぇ」

肩を叩かれる。

「あの?」
「今から、ちょっと遊びに行くんだけど、男しかいなくてむさ苦しいからさ、一緒に行かない?」
「結構です。今から学校に戻るので」
「えー、いいじゃん。サボっちまおうぜ」
「結構です!」

ナンパ?

よくやるよ、私に。
見る目ないんじゃないのかな?

♪〜♪〜

あ、着信……。

「友達に助けとか呼ばないよーにね!」

そう言って、スマホを取られる。

「もしもーし!
……………は?彼氏?
嘘言うなって!
今……!?」
「何をしている」

その声と、後ろから影が出来るのに気づき、思わず後ろを見る。

「若!」

思わず、抱きついてしまう。
ちょっと、怖、かった……。

「マジで彼氏持ちかよ……」
「…………」
「ヒッ」

抱きついてから若に、頭をがっちりホールドされていて、今の顔を伺うことができない。

「……おらよ!行くぞ」

そう言って、ナンパ男が離れていくことがわかる。

「………大丈夫だったか?」
「ありがと……若、ちょっと怖かった」

ホールドされていた頭は解放され、若が頭を撫でて慰めてくれる。
そういえば、なんで。

「ここにいるの?」
「楓がいないことには、分析の意味がない。
そう監督が考えたみたいだから、こっちまでバスを走らせた。
ここからだと時間もかかるしな」

「ありがと……じゃあ、行こ」
「ああ」

そう言って、手をつないで歩いていった。




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