ネタ供養と名前変換なし(小説) | ナノ
深夜の逢瀬

カエデー!とルリアの呼ぶ声に反応して振り返る。エプロンを着たルリアに今年もバレンタインの季節か、とふと思い出す。封印されていた天司の力と記憶を取り戻してからどうも時間感覚がおかしい。
カエデは今年はどうしますか?そう聞くルリアに、そうだな、と少し考えたふりをしてから、もしよければルリアと作っていい?と聞く。
例年、特定の相手に配ることのなかった私は、毎年ルリアのチョコ作りを手伝う傍ら、チョコで胸焼けを起こす団員へ甘さ控えめのクッキーを作る。ちなみにクッキーは食堂に置いているが、知らぬ間に無くなっている。

……と言っても、今年は訳が違う。協力者となりグランサイファーに乗ったサンダルフォンがいる。船に乗ってからサンダルフォンは、身体の異変に戸惑う私の相談に乗ってくれたし、いつもなにかと気にかけてもらっている。
うん、日頃の感謝の気持ちを込めて、サンダルフォンに渡そう。そう決心して、キッチンでカカオを潰していた団員に声をかけて、少しだけ貰う。

「珍しいですね、カエデがカカオを使うなんて」
「他のみんなには内緒にしてくれる?」
「はい!わかりました!」

わいわいがやがやと騒がしいキッチンで、クッキーを焼いている最中にルリアが作りたいと言っていたもののレシピを確認しながら見て、間違えそうになるルリアを制止し、なんとかものにする。クッキーも上手く焼き上がっていて、お好きにどうぞ、と大きなバケットかごを食堂の見えるところに置いて、チョコレートを混ぜたクッキーは小さなかごに入れて、自室に隠した。

深夜、コンコンコン、とノックがある。相手はわかっている。ドアを開けると珈琲を持ったサンダルフォンが立っている。眠れなくなった私は夜番でないときは、サンダルフォンと珈琲を飲みながら夜を過ごすのを日課になっていた。

小さな丸テーブルに珈琲を置き、サンダルフォンは椅子に座る。私はベッドに座っている。

「そうだ、もし良ければ珈琲のお供にこれ」
「……クッキー、か」
「うん、ルリアの手伝いをしているときに出た余りで作ったの。もし良かったら、消化して」
「……そういうなら貰おうか」

クッキーを一つまみし、口に運ぶサンダルフォンを珈琲を飲みながら、見る。うん、今日の珈琲も美味しい。

「珈琲に合うな」
「そう?それならよかった」

少し照れ臭くなり、珈琲を飲む。

「やっぱりサンダルフォンが淹れる珈琲、美味しいね」
「ルシフェル様が興味を示したのも理解出来る。珈琲豆を炒るところから様々な味になるからな」
「珈琲って奥深いね」
「……ああ、そうだな」

ぐっと言葉を詰まらせ目を閉じて、そう答えるサンダルフォン。……実は言うと、とサンダルフォンが口を開く。

最初珈琲を飲んだとき、泥を啜っていると思った。

「ルシフェル様に美味しいだろう、と言われて、美味しいと言わざるを得なかった。美味しいと嘘を吐いたわけだが、今では毎日というレベルで飲んでいるな」
「サンダルフォンが砂糖を淹れてみるのはどうかと提案してくれたお蔭で私も珈琲好きだけどね」

珈琲を空の民に広めたルシフェル様により、砂糖を混ぜて飲む方法を空の民にも伝えられた。その後、空の民の視察で飛び回ったルシフェル様がミルクを入れて飲む方法があったとか、様々な話をする。

「……そろそろ時間か。クッキー、美味しかったよ。カエデ」
「こっちも珈琲、ありがとう。明日はサンダルフォンは夜番だっけ」
「ああ、カエデは明後日は夜番だったな」
「うん、じゃあ3日後、だね」

カップを持ち、立ち上がったサンダルフォンと確認をしてドアを開ける。眠るわけじゃないけれど、おやすみ、と伝えて、ドアを閉めた。


「カエデ、入っていいですか?」
「ルリア?」

昼になり、ノックの後、ルリアが声をかけてきて驚きながらドアを開ける(今日はバレンタイン休暇だ)。

「カエデはチョコ、渡せましたか?」
「まあ、そうとも言うかな」

相手は……サンダルフォンさんですか?と聞くルリアに正解、という。私の身体の異変は当然ルリアも気づいているし、サンダルフォンと話すのは別に夜の自室だけではない。

「ほら、ジータに日頃の感謝を伝えるんじゃないの?」
「うう……でも、ジータはみんなからチョコを貰っていて……」
「そりゃジータは団長なんだから、日頃の感謝を伝えたい団員も多いと思うよ。それに……ルリアも毎年ジータに渡してるでしょ?」

そうですけど……というルリアに、大丈夫、と言って背中を押す。

「うう……」
「大丈夫だよ。ジータもルリアを探してるかもよ?」
「……そうでしょうか……」

決心のつかないルリアがうう……と言っていると、ドアをノックされる。ぴゃっとルリアが驚く。そっと、ドアを開けると、ジータだ。

「どうしたの?ジータ」
「あ、これ。バレンタインのチョコ」
「ありがとう。それで?」
「あの……ルリア見てない?」
「……ルリア?」

驚いた顔をするルリアをちらっと見ながら、お節介をするか、と瞬きをして、ルリアなら甲板に行ったのを見た、と言うと、ありがとう!とジータが去る。

「ほら、ルリア。ジータもルリアにチョコ渡したいんだって」
「!行ってきます!」

パタパタと行ったルリアを見送り、ジータからもらった包みを開ける。…………キッチンに置いてある珈琲豆だ。そこに、メモが入っていて、見る。

『サンダルフォンにカエデの分も渡したから一緒に食べてね!』

お節介を焼いたのはどうもジータもらしい。苦笑しながら、キッチンに向かう。久々に自分で珈琲を淹れてみようか。

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