ネタ供養と名前変換なし(小説) | ナノ
MMO→銀魂に行った女の話


20歳
ゲームとアニメを愛する華の大学生。

2回生の夏、家でとあるマイナーなMMOをしていると、気付けば、世界は草原の中、姿もキャラデザの通りで、突っ立っていました。というのがおそらく2年前。他にも、名を連ねる大手やランカーがコチラに来ており、システムの最深層にて出来たバグを破壊することで、現実に戻っていったのだが、バグと戦う際に(弱点を見る)チート(本来ならバグと戦えないor強すぎて一撃で沈む=戦闘不能=dead end)を使用した楓だけはシステムに呑まれてしまい……。

カエデの名で一人そつなくこなす中堅者。無(理のない)課金勢。
白髪で右目金、左目赤のオッドアイ、イケメン女子。髪の毛はポニーテールをしている。シャツに黒い短パン、ブーツがデフォ、羽織る物は色々ある。ひんにゅー。蒼のひし形のような八面体の宝石のついたネックレスをつけている。

デュアルウェポンで、魔法もそつなくこなす。身体能力はコチラに来て、跳ね上がった。魔法系統は雷>氷>風>炎>水>地(地でも雑魚なら1撃で落とす。
バトルスタイルのイメージはライトニング。

顔がいいなら(女でも)いずれも愛せる。所謂残念なイケメン(女子)。優先順位、可愛い(=芯の通った心)>綺麗>女>男。(戦う理由は可愛い子ちゃん達を泣かせないため。自己犠牲の塊のため、松下村塾組には過保護にされた。松陽もよく気にかけていた)

チートを使用したことの代償として、左目は死線がずっと見える直死の魔眼、右目は気配から遠くのことまで把握することができる千里眼(使用時青目)を持つ。



システムに呑まれた。0と1で構成されたこの海の中にいずれ徐々に溶かされるのだろう。これで終わりなのか、まだ、諦めたくない。この2年が無駄だったなんて思いたくない。このチートを使わなければいけなかったし、大手の皆さんが使うわけにはいかなかったんだ、後悔はしていない、でも、これは。まだ、まだ私はしたいこともあったのに。そう思って、手を伸ばす。誰も助けてくれないのは知っている。この海を見ると、あのゲームを思い出す。セラフってこんな感じなんだろうか。白野は大丈夫かな。手を構成していた物が溶けていく、まだ、終わりたくない。終わりたくないのに、手が分解されてい―――――手を掴まれた。視覚情報以外は麻痺していたが、温もりを感じた。見上げると。

「、桜」
「はい、こんにちは」

カエデさん、と言われる。どうして彼女がここにいる?私が考えていたのは桜でなく白野だったんだが……。

「先輩と……地球に行くんです。先輩が貴方に助けてもらったって、そう言ってたんです。だから……」

貴方をセラフの目の届かないところに行かせます。そう言うと頭上が眩しく光る。

「損傷したデータを………集めることは出来ましたが、修復出来ません、戻すところが損傷しているので……入れ換えることは可能なのですが」
「なら……私の人間関係を入れ換えて、それでも足りないなら……私のマンガとゲームの記憶を、ああ、でも……どうしてこうなったのかとか、ここに呑まれた理由のゲームは覚えておきたい、記憶は自分が望んで消したとは思っておきたい」
「…………はい。わかりました……。ですがそうなると……肉体が……子どもの体になってしまいますよ、いいんですか」
「……いいよ、子ども達を愛でたい」
「………では、カエデさん、いえ、楓さん。さようなら、私のこともきっと……忘れてしまう対象かもしれないけど」
「……白野とお幸せに」
「……………はい!楓さん、ネックレスは常に身につけてくださいね」
「うん」

嬉しそうに微笑んでくれた彼女を見て、私の意識は落ちた。



気付くと戦場だった。ただし、直死の魔眼が使える状態だ。何となく、この眼たちについての知識はある。右目は閉じていると大丈夫なので、包帯でぐるぐる巻きにしておいた。左目は制御可能だ。とりあえず、着物を身に纏って、散策をしていた。

ぐるぐる巻きにしておいていた包帯は意味を成していない。直死の魔眼で見える死の線は、寿命だ。私は、愛剣のデュアルウェポンでその線をなぞる。なぞった場所から血が流れることがなく、傷がないから魂を抜き出す死神のようだと言われた。

死神の噂によって、挑みに来る大人を静かに見て、憐れだなと思って、殺した。死体を漁って、川の魚を捕まえて、生きていたが、直死の魔眼と千里眼の同時併用は何せ脳に負担がかかる。木の上では死んだように眠った。

此方に来て、何日経ったか知らないけど、「随分可愛い死神さんがいたものですね」と美人の男の人が現れた。

構えるけど、右目があつい。頭がボーッとしてきた。殺らなきゃ、殺される。

「おやおや、そこまで、警戒しなくともいいのですよ」
「だ……ぁ!」

声が出ない。代わりにひゅっと息が出た。最近使ってないから、声が出なかった。ああ、本格的にヤバい。近付く男の死線をなぞろうとして、気付けば抱えられていた。

「酷い熱だ。帰って、手当てをしましょう」
「ゃ……ぉ……ぅ」
「何をするかは知りませんが、一先ず君が心配だ。君の名前は?」
「………」

名前を言おうにも声が出ないから、指を男の手の甲に楓と書く。

「楓、でいいですか?」

頷くと、私は吉田松陽です。よろしくお願いします。ようこそ、松下村塾へ。そう、聞こえた気がした。



「銀時!」
「あ?なんだよ、楓って、どうしたその傷!」

松陽に拾われて3年経った。山の上で暮らしていたが、たまに暇で山を降りて、散策すると、これだ。このオッドアイを気味悪いと言って、私をボコボコにする。痛みはあまり感じない。

松下村塾に来たときにはもういた銀時に手を引かれる。松陽、とよぶ銀時に足を止めた。

「松陽、呼んじゃダメ」
「あ?なんでだよ」
「消毒、痛い」
「誰がやってもかわねーだろ」
「だって」
「だってじゃありません」

ギギギ、と首を回すと般若な松陽がいる。手当てをしますから、銀時は待ってなさい、と言う松陽に抱き抱えられた。

「…………松陽」
「なんですか?」
「右目、取っていい?」

そう言うと、消毒などを片付けていた松陽が此方をみる。流石に驚いている。

「右目は赤いし、人を、松陽と銀時を殺しそうになって、怖いの」

千里眼を使うことはほとんどなくなった。それは平和なお蔭で、でも、たまに、死線をなぞりそうになって、銀時に手を掛けるようになって怖い。

「ダメですよ、楓。自分の目ですよ?」
「だって、銀時と松陽を殺しちゃいそうで、怖いの」
「じゃあ、楓、約束をしましょう」
「約束?」
「はい。もし、私が銀時やこれからできる仲間たちを手を掛けることになったら、その目で私をさっくりやってください」

そのお願いに目を見開く。松陽が、銀時を殺す?そんなこと、有り得ない。ありえないもん。

「だから、左目は包帯を巻きましょう」
「……はい」
「……そんな早くのことではないですよ。安心してください」
「じゃあ、松陽。稽古つけてよ」
「…………そうなるとしかたないですね。はいできました」
「ありがとう、松陽」

いえいえ、という松陽は笑顔でなんとも言えなくなった。



それから、7年が経って、包帯を巻いてくれるようになったのは銀時で、門下生は増えて、銀時と私には悪友とも言える晋助と小太郎がいた。

「楓」
「はい」
「私が教えられるのはここまでです。後は自分で極めなさい」
「松陽」

それでも松陽は一対一の稽古をつけてくれた。でも、今日でそれは終わる。

「これをその記念です。受け取ってください」

差し出されたのは刀だ。白い鞘の中に切れ味がいいと思われる刀が納められていた。

「松陽、私、いつかきっと約束を守るからね」
「はい、よろしくお願いします」

そう微笑んだ松陽は、全て知っていたのかもしれない。燃える塾と連れていかれる松陽。みんなを、頼みましたよ、銀時。と言う松陽の手を行かないでと引けばよかったのかわからないまま、松陽は連れていかれてしまった。

4人で寄り添って寝た次の日、晋助は松陽先生を取り戻してくる、と攘夷戦争に参加しようと門下生に向かって言っている。みんな同じ気持ちなんだろう。銀時もきっと行ってしまう。

包帯を巻き直しているときは銀時と二人きりだ。私も松陽を助けに行きたい、と言うと、結んでいた最中だったので、きゅっと強く結ばれる。

「ダメだ」
「なんで?」
「なんでってダメなもんはダメだ」

頑なに顔を縦に振らない銀時を右目で見据える。

「そんな目で見てもだめな。俺もヅラも高杉もお前をついてこさせねーよ」

そう言う銀時に仲間外れ?と聞く。
そんなんじゃない、とは言っているものの、仲間外れだよ、と言う。

「私も戦える!」
「テメェはダメだ」
「どうして」
「足手まといは来んじゃねぇ」

その一言で何も言えなくなった。そうだ。銀時にとって、私は片目の見えない女なんだ。

「お前は、俺たちの知らねぇところで幸せに暮らせ」
「…………待つ」
「は?」
「みんなを、待つ。松陽を連れ戻して、またみんなと暮らすの」
「…………楓」

銀時の目が揺れている。約束、と小指を出すと、銀時も小指を絡ませる。

「何があっても、迎えに来てね」
「……ああ」

そう言って、結べたと頭を撫でる。みんなを見送ったのは、その日の夕方だった。



屋敷は建て直して、残った門下生と細々と暮らして、半年が経った頃、それも崩壊した。と同時に修羅の道に引き摺り込まれた。

その日は半年前に出ていった銀時達の後を追うものが明日戦争へ向かうための宴だった。

再三、銀時達には酒は飲むなと忠告されたので、飲まずにせっせと雑魚寝している門下生を跨いで、片付けをし、お風呂をためた時、異変を感じた。

それは、何かを斬る音。そして、此方に近付く足音。

「楓!逃げ……!」

ろとまでは続かなかった。御徒士組の格好をしたものが、門下生を斬った。何かが切れた。包帯を軽く外すと、世界は一変する。死線は黒で表される。デュアルウェポンを剣体系に変えて、容赦なく斬った。倒れた敵は、死んでいた。傷はない。急いで、みんなの元に行くと、みんな事切れていた。半開きの目を閉じさせる。残りの敵を殺して、お風呂に入って、替えの包帯をあるだけ持って、きらびやかな着物を選んで着替える。デュアルウェポンは足に隠し持って、帯に紐をつけて、刀を差す。

門を出て、屋敷に振り返る。ありがとうございました。と言って、お辞儀をした。

「……CODE:150」

千里眼は魔法を使う際にも必要になるみたいだ。左目に包帯を巻いて、燃え盛る屋敷を後にした。

どこに行こうか、このまま、約束を守る?銀時達を守る?銀時達と合流する?……無理か、きっと怒られる。

戦争は場所を変え、起こっている。歩き通しで疲れている気もするが、大丈夫だろう。水と見つけた木の実は食べている。

森を歩いていると、声を掛けられる。天人だ。ニヤニヤしながら声を掛けるので、斬った。

「斬り捨て、御免なさい?」

赤い目は赤以外全てモノクロで映し出す。左目も開いていれば、色覚はしっかり把握できる。

何日か経って、硝煙のにおいを風が送ってきた。戦争がそこで起こっているのだろう。

「飛び入り参戦、ってことでふふっ」

そう言えば、人を殺したときの罪悪感は何処かに消えていた。いつからだ。アチラで戦わなければいけないと知ったときだ。

左目を閉じながら、眼を開ける。気配はいくつもある。

「……先に」

戦場をまわって、斬る。スナイパーは先に殺しておくのがベストだ。

「さて」

天人を殺そうか。



それからまた半年。私についてきた一小隊ほどの人数を率いて、戦場を駆け回っていた。まあ、その小隊に小さい子どもがいるのも謎ではあるが。かわいいから良しとしよう。

「姐さん!どうして、そんな格好なんですか!!」
「さあねぇ。私の存在が此処にいると、示してるんじゃない?」

名前を皆には話していない。姐さん、とお姉ちゃん、嬢ちゃんと皆どうして親しみを込めて言っているのか、よくわからないけど。まあ、可愛い子にそう言われるので、悪い気はしない。

「嬢ちゃん、偵察に接触してきた奴らがいたらしいぜ」
「…………それは、何が目的で?」
「増援要請だとよ。ばかつえーっていう志士もいるらしいぜ。なんだったか……四天王?」
「ふーん……」
「興味ねぇってか。ちなみに、嬢ちゃんが戦争に参加してから五虎将なんて言われてるんだぜ?」
「……知らない」

つれねぇなぁ、なんていいながら、要請についてはどうするかと聞かれた。

「さあ?私は修羅の道を行くと決めてるわよ」
「そーかい。野郎共にゃそう伝えておく。そうそう、嬢ちゃん、五虎将にはな、二つ名があるんだ。知っといて損はないだろ。これから仲間になるんだからな」

白夜叉、狂乱の貴公子、鬼兵隊総督、桂浜の龍。これが、攘夷四天王らしい。

「嬢ちゃんはなんて呼ばれてるか知ってるか?」
「さあね」
「死の女神、だとよ」
「死の女神?」

思わず笑ってしまいそうになる。嬢ちゃんは傷一つつけずに殺しちまうから魂を刈り取る死神だが、その綺麗な着物が女神と呼ばれるんだろうよ、と言う男に、要請は緊急だったのかを問う。緊急ではないらしいが、できれば急いでとのこと。明日の朝には出立すると言うと、頷いて、部屋を出ていった。ご飯が出るまでは、刀の手入れをしようと、鞘から引き抜いた。

(「明日、死の女神の部隊が増援に来てくれるとのことだ」)
(「死の女神だぁ?」)
(攘夷四天王と呼ばれていたが、攘夷五虎将と呼ばせることになるほどの実力者らしい」)
(「女神つぅことは女か」)
(「ハハハッ楽しみじゃ!」)



増援に向かって、敵を斬っていく。子ども達は本拠地へ走って荷物を運んでいるのだろう。増援もあったが、大雨が降り始めたことで敵は引いた。お姉ちゃん、と言う声でそれに気付いて、増援要請をした部隊の本拠地にお世話になると聞いて、向かった。

頭痛がした気がした。
「よお、嬢ちゃん」と既に酔っているおっちゃんと飲んでいた者を見たからか。

「アハハハ、綺麗な女子じゃな!」

ほろ酔いなのか知らないが、そう言う兜を被った男をいなし、既に酔って眠っている天パの白い髪を見て、はあ、とため息を吐く。

「ねえ、空いてる部屋使っていい?」
「ああ、いいぞ」

酔って焦点が合っていない小太郎がそう言ったので、天パと同じように伏せている黒髪を一度見て、部屋を出て、誰もいない部屋で布団を出して、眠った。

早朝に目を覚まして、包帯を巻く。デュアルウェポンを足に仕込んで、刀を持つ。

雨を比較的凌げる木の下でひゅっ、ひゅっと言う風を斬る音が聞こえる。銀時達と鉢合わせるとは思わなかった。何を言われるのか、なんて考える思考を振り払って、素振りに神経を集中させる。

「お姉ちゃん!」

振っていた刀を止め、鞘に収める。

「どうしたの?」
「朝ご飯!」

差し出されたおにぎりを手にとって、口に運ぶ。志士達の本拠地は立派な廃寺だ。お蔭で門もあり、塀もある。

おにぎり二つを腹に収め、子どもから傘を渡されると塀の上に乗る。

敵方の陣営も昨日より降る雨に困っているようだ。これでは足が持っていかれるし、火薬物は使い物にならない。

年長者達は今ごろ二日酔いをしてるか、寝ているかだろうし、此方から隊長と顔合わせするのは私がやることではないので、大人しく偵察をしておくことにした。

「嬢ちゃーん」
「なに?」
「相手さんはどうなってる?」
「雨が明けたら、攻めてくるわね。敵さんもこの雨にはほとほと困ってるみたい」

そうか、と言って立ち上がる。偵察の結果を聞きに来ただけだろう。これじゃあ大雨が止んでも一日二日で戦いは再び始まらないだろう。

「おい、女。いくら傘があっても、風邪を引くぞ」
「引かない」
「この雨じゃアチラさんも手出し出来ねぇよ。部屋に戻れ」
「断る」

1年経ってもその声は変わらない。

「それは、銀時がいるからか、楓」

ザーッと雨が降る音だけが響く。小さく呟いた言葉は雨に掻き消されると思ったが、晋助の耳は拾ったようだった。



晋助は言った。

「髪は結んでなくても気づく。目の色は赤じゃないが、顔立ちがそうだ。いくら俺達を騙そうとしても騙せねーよ」

どかりと隣に座ると、晋助の顔が見える。昔よりもまた格好よくなっていた。というかまじイケメン。

「何があった」
「みんな、私を置いて行っちゃったんだよ」

逃げろと続かなかった門下生の顔ももう覚えちゃいない。というか、屋敷で死んでいた人の名など、既に覚えてはいなかった。

「おい、そりゃどういう」
「死んだ」

息を飲む音がした。残っていた門下生は全員殺されちゃった。そう言うと、横から抱き締められた。びっくりして、そっちを見るが、顔を首に埋められて、見えない。

「晋助」
「テメェだけでも生きててよかった」

ドキリとした。ほら、泣け。泣いていないんだろう。なんて、優しい声を掛けられてしまえば、1年ぶりに涙が溢れ出した。

戦がなければ、昼餉はいらないため、おやつ時におにぎりを1つ食べる。

晋助がそんな量で足りるのかと言いたげだが、生憎私は低燃費なのだ。というか、食べなくても生きていけるかもしれない。あれから四半刻泣いてしまい、謝ろうとしたら、要らねえと言われてしまえばどうしようもなかった。

「嬢ちゃん、と総督様じゃないか」
「何?」
「…………」

飯時だ。そう言うおっちゃんに、晋助は俺はついでか、などと呟いてるのが聞こえ、ふっと笑いそうになる。

「……ご飯、宜しく」

そう伝えるとわかってますよー、と言われる。塀を降りて、寝起きした部屋に入ろうとすると、後ろをついてきた晋助に止められた。

「そこ、銀時の部屋だぞ」

なんて言われたら、足が止まった。どこの部屋が空いてると聞けば、にやりとして、俺の隣、と言われたので、大人しくついていくことにした。そこにご飯を持った子どもが私を探していたようで、「お姉ちゃん!」と此方についてきた。

その部屋に着いて、ご飯を置かれる。総督様もご飯をお持ちしましょうか、と聞く子どもにああ、と応える晋助は、子どもが出ていくと、よくできた子どもじゃねぇか、と言った。

「別に、何をしたわけでもないよ。ただ、自分の役目を見つけてそれをやってるだけ。みんな、そう」
「…………」

「お持ちしました!」とご飯を晋助の前に置くと、箸に手を付ける。誰かとご飯なんて、久しぶりだった。



雨も止んだ次の日、朝餉を食べると、塀の上に立つ。明日には、敵は再び、戦いを再開するだろう。

「……その始まりが、ただ、少し早かっただけの、こと」

そのまま、拠点の外に飛び降りる。

奇襲などしようとするからこうなるのよ、と軽く呟いた。100人だろう何人だろうと斬って殺す。

「名に恥じぬ、動きをするのだな、死の女神よ」
「……中二くさ」
「名も、容姿も、誰も知らない、どんな女だと思えば、まだ童ではないか」

刀を振るって、大将であろうか、その老将に刀を向ける。さよなら、と言葉を発すると、その老将がパタリと倒れた。

「ハッタリなんて、私には通用しないわよ」

倒れた老将の死線を斬る。倒れている死んだフリをした兵士を殺して、本拠地に戻った。戻ると、私がおらず慌てふためいていた。なんてことはない。が、塀の上にいた晋助が私を見つけるなり、腕を引き、晋助の部屋に連れていかれると、どこに居やがった!と胸ぐらを掴まれ、大声で言われた。

「出る芽は摘むがいいんだよ、晋助」

そう言うと、晋助は大きなため息を吐いた。手を放される。

「そう言うのは一言言え」
「なんで」
「俺もついていった」

別に一人で十分だった。と言うと、それでもだ。と言われる。人の気も知らないで。

「とやかく言うのなら、出ていくよ。彼らは置いてでも」
「そーかい」

自室に戻って目を瞑る。明日は、早い。


「おい、銀時、ヅラ。話がある」



夕餉を食べ、見張りを付け、お風呂に入って、そのまま、部屋に戻らず、寺を出る。子ども達に潰すほど飲ませておけと言ったので、そう簡単には気付かないだろう。

正門には見張りがいるので、当然塀を飛び越える。朝よりも固まった地面に、明日には戦いが始まるな、と思いながら、敵陣営へ歩いていった。

敵陣営に着くと、見張りを殺して、入る。左眼も開けて、目的地まで歩く。此方も眠りこけているようで、緊張感が無いものだと思う。大将は思ったより早くに見つけられたので、近衛と大将を殺した。

猛スピードで此方に来る気配を探知した。晋助と、後二人。嫌な予感がして、まだ敵陣営まで入って来ていないので、裏門から出る。

先にあった森に入って野宿することにしよう。

左眼と右目を使うのは、少し脳に負担が掛かる。だから、気づかなかった。シャン、と地面に押しつけるとなる錫杖に殺された門下生の姿がフラッシュバックする。

そちらを見ると、御徒士組の格好をした敵だ。

「殺らなきゃ、殺される」

眼がありありと死線を映し出すから、これを斬って斬って斬って。
全てを斬ったら、眠くなる。

「見つけたぞ!楓!」
「あー……やっちゃった」

足跡消してなかったや。意識がプツリと切れる。

そのときに見た、銀時の顔は。

「楓!」
「安心しろ高杉、眠ってるだけだ」
「…………楓、すまねぇ」
「とにかく連れて帰るぞ。このまま、朝を迎えるのは些かまずい」
「そうだな」
「…………」



目を覚ます。布団の中にいて、疑問を感じるが、夜のことを思い出して、顔が引きつる。銀時との約束を破ったことを思い出す。

襖を隔てた隣は晋助の部屋で、気配もある。廊下には子どもがいて、反対側の襖をも気配を感じる。廊下じゃない方には中庭があるが、さて、どうしよう。

……………………寝てしまおう。

現実逃避が一番だ。そうだ。と目を瞑ると、襖が開く音がする。

「楓ー…………楓ちゃーん?」

今も変わらない、銀時の声だ。寝たふりをしてしまえばいい。

近づいてきた銀時はふにっと、私の頬を伸ばす。

「楓ちゃーん、起きねーのぉ?」

…………起きません。

「キスしちゃうよー?」

勝手にしろ、…………え、キス?

「…………つーか、楓、あんなこと言って悪かったよ」

頬を伸ばしていた手は引っ込んでいた。

「お前、昔から一人で無理するからよぉ……」

無理なんてしてないし。

「遅かれ早かれこうなんのはわかってたはずなのに。つーか、聞いて、俺、高杉とヅラに殴られたんですけど。出迎えに来ねぇ楓に何言ったんだー、って聞かれたら殴られた。悪かったよ」

って言っても聞いてねぇかーなんて言った銀時の気配が離れていくので、気配を殺して、後ろから回し蹴りを食らわせた。

「聞こえてるっつーの!」
「てめえ!何しやがる楓!」
「晋助と小太郎に殴られたんだったら、私にも蹴らせる権利はあるでしょ!?」
「どーしてそーなる!?」

言い合いをしているのに、気づいた晋助が襖を開けて、ずかずかと近づいてきた、頭を叩いた。ぐわぐわする。

「痛い」
「何しやがる高杉!」
「さっきまで倒れてた奴は寝とけ。銀時テメェ、楓をもっと優しく扱え。っておい!楓」
「ふらふらする」
「寝とけ」

手で目を覆われ、意識が落ちた。

「銀時、嫌われたくなきゃもっと大事に扱え」
「うっせーな」



それから、銀時達と戦争に参加するようになって、辰馬は宇宙に行って、別行動していた晋助と小太郎が敵に捕まって、銀時が突っ走って行ってしまって、銀時に全て負わせてしまった。松陽は、死んだ。

約束も守れず、生きる意味を無くした私は、今度こそ、右目をくり貫こうとした。まあ、突拍子もなく、刀でぐりっとしようとしたからで、3人に止められ、みんなバラバラの道を行くらしく、私も、別の道を行こうと言ったら止められた。目はくり貫かない、と言っても、止められた。銀時は気づいたら、もういなかった。

「だって、二人とも、まだ、攘夷」
「ちっ、銀時のヤロー……楓を置いていきやがって」
「そう言うな、高杉。楓はどうしたいんだ?」
「…………ちょっと疲れたから。気持ちの整理がしたい。一人で行くよ」

攘夷戦争で、私についてきた者は死んでいった。子どもは攘夷戦争が激化していく中で、攘夷志士を匿っていた家庭に預けた。一人の方が何かと楽だから、と刀を持った。

「…………では、楓、約束しろ」
「?」
「また、会おう」
「……うん」
「ほら、高杉も」
「あ?…………これやる」

ポイと渡されたのは、綺麗に装飾された短刀だった。

「晋助、こんなのもらえない!」
「じゃあ、また会ったとき返せばいい。お前は約束をよく破るからな」
「うぐっ」
「達者でな」
「うん、元気でね」

腰に短刀を差して、雪の降る中、二人と別れた。

さて、目をくり貫こう。



半日歩いたところで廃寺を見つけ、雪を払って、屋根に入る。流石に裸足では、寒い。毎年、銀時がわらじを編んでくれていたな。と思い出す。足が、霜焼けを起こしてるや。

刀を抜いて、右目に刺そうとしたときに左眼が熱くなる。まるで、遠くの場所に行くような感覚に、刀を降ろす。その感覚が終わると、廃寺の景色ではなく、よく燃えている其処から、現れた男を、松陽を見て、言葉を失う。

……ああ、そうか。死んでないのか。手が刀を離して音を立てて落としてしまう。目をくり貫く必要はなかった。

でも、完全に目が違った。優しい松陽では無くなっていた。銀時に師匠殺しを2度もさせるわけにはいかないし、小太郎や晋助もそうだ。私は新たな決意の下、その廃寺で生活を始めた。

それから一ヶ月、何事もなかったのだが、最近困ったことがある。

「お嬢さん、今日もここにいるのだな!」
「……ここに住んでいるからね」

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