ネタ供養と名前変換なし(小説) | ナノ
夢は現実を侵し始める

高校時代に事故に遭って生死をさ迷ったとき、私は死を知り、夢を見た。漫画の世界、進撃の巨人、マギ、戦国BASARA、銀魂、家庭教師ヒットマンREBORN!(初代)、鋼の錬金術師、家庭教師ヒットマンREBORN!(10代)、暗殺教室。それらの世界を回って、現実世界で目を覚ました。変わらず、直死の魔眼は持っていたし、何故か眼鏡が置いてあった。それを掛けると、死の線は見えなくて、これが魔眼殺しの眼鏡、か。ただ、夢を見ていて、残念だったのは、型月の世界を歩けなかったことぐらいだ。私が好きなものは奈須さんの著書だったから。

「……!」
「こんにちは」
「先生を……!」

看護師は慌ててナースコールを押した。検査を受けて、漸く説明された。3年間眠っていたのだと。絶句である。植物状態だったのに、まだ生きていたとは。2時間後には、母が来て、大泣きした。父親がいなくて、どうしたのかと問うと、離婚した、と。どうやら私が原因らしい。母は臓器ドナーにするのを拒んで、父は助からないなら、助かる人へ、という思いが強かったらしい。……まあ、言い分はわかるので、仕方ないで終わらした。検査があるから、と1週間はまだ入院らしい。髪、伸びたな、と思いながら、積み上げられた愛書を手に取る。空の境界、一番好きな作品。

「……ああ、でも」

事故に遭う前の記憶に砂嵐が混じっている。家族はわかる、好きなものもわかる。友達は?どんな生活をしていた?

「空っぽになっちゃった」

細い腕を見て、リハビリが始まるのだろう、と気づく。私が見ていた夢の何十年は眠っていた3年間だった。いつか、帰れると思って、何度も転生して、夢落ちだったなんて、なんて滑稽な。

「これから、どうすることになるんだろう」

未来が不安でしかない。3年休学、ということは、もう戻れはしない。ということは大学にもいけないし、お先真っ暗だ。

次の日、個室から大部屋に移動になった。物の移動は母がしてくれるらしく、検査のため車椅子で移動中、ボーッと院内を見ていると、長身の男性を見た。そして、目があった。目をそらす。…………あれは夢ではなかったのですか。困りますよ、なんでいるんですか。片倉小十郎氏。

「採血をしますからね」
「はい、お願いします」

平穏な日々が過ごしたいなぁ……。


「Hey小十郎。何見てたんだ」
「いえ、懐かしい顔を見たもので。それより風邪は大丈夫ですか」
「季節が変わるときのいつものあれだ。気にするもんじゃねぇ」
「……そうですか」
「小十郎」
「なんでしょうか」
「懐かしい顔ってのは誰のことだ。お前が懐かしい顔っていうなんざ。昔の知り合いだろ」
「……ええ、しかし」
「しかしもくそもねえ、誰のことだ」
「…………楓です」
「……!」


みんな、3年前の夏に思い出した。既視感はあった。初めて会うのに、初めてじゃない気分だったり。それがはっきりしたのが3年前の夏だった。思い出したときの仲間を片っ端から探して、でも、一人だけ見つからなかった。先生ですら、黄色い化け物になる前の姿で、再会できたのに、黒雲楓ちゃんだけは見つからなかった。


退院の日を迎えた。父が涙を浮かべながら、私を抱き締めた。再婚するらしい。マンションに住んでいたのを、一軒家にしたらしい。ここから、一から生活が始まるのか。

リハビリをして、歩けるようになって、体力をつけるために散歩を始めた。近所を散策するのは冒険のようで楽しい。コンビニが近くにあるから、帰りに醤油を買ってきて、と言われたので、コンビニを探すところからだ。夏から秋にかけてのこの時期は随分と快適だ。

コンビニを見つけ、家に帰って来た。本屋を見つけたから、明日はそこに寄ろう。

次の日、母親からお金を貰って本屋へ、隣をリムジンが走ったけど、意味がわからない。月姫の続きは出てないけど、Fateは色々とシリーズが出ていた。なんでこんなに出てるんだ。……たかが3年、されど3年か。

とりあえず、型月系の小説と最近流行りの小説の中で興味を持ったタイトルを買って家に帰る。あ、文具店でカッターでも買っておこう。これさえあれば、なんとか撃退できるかもしれない。鈍ってることが否めない。……勘を取り戻さなきゃ。

「やはり、楓か」
「………………誰ですか」

文具店を出たら、小十郎様がいた(白目)とりあえず、家族と好きなこと以外の記憶がないので、それに突っ込ませてもらおう。すまない、記憶がないわけじゃないが、落ち着きたいんだ、すまない。

「俺は片倉小十郎だ。覚えてないか?」
「確かに私は楓ですけど……。ごめんなさい、私、家族以外のことの記憶がほとんど無くて」
「なっ……!」
「すいません、心配すると思うんで、帰ります」

そう言って、そそくさと逃げた。すまない、本当にすまない。

「おかえり、楓。読みたい本、あった?」
「うん、好きなシリーズの新刊、いっぱいあったよ」
「……そう。記憶が欠けてるそうだけど、そんなこと全然わからない。一から作っていきましょう」
「うん、お母さん」

少しだけ、ゆっくりした日々が過ごしたい。

どうやら事故の影響で記憶が飛んだようだ。戻ってくることは0に等しいらしい。車の中で学校はどうする、とかを話して、アルバイトしようかな、と言った。

知り合いに、喫茶店で順調にいってる人がいて、アルバイトを募集しょうかな、って言ってたから、話を聞いてみない?と言われた。うん、と返して、よかった、と思う。知り合いいなくて安心した……!
優しい叔父さん、叔母さんのお陰で社会復帰も早い……かな。

まあまあ、そこそこ忙しい平日の昼と、女子高生が紅茶とケーキで何時間も居座る休日の昼すぎ以外は思ったより暇で、暇潰しに小説を読む。久々に読む未来福音は最高だ。

カランコロンとなったドアが開いたのを確認する。………………リボーンだ。眼鏡程度の変装で気づかないなんてあるのか、いや、そもそも。

「エスプレッソだ」
「あ、はい」

叔父さん、エスプレッソ一つと頼んで、小説を読み進める。伸びた髪を切ろうとしたけど、ここまで伸びると切れずにいたから、もしかしたら気づかないと願おう。

「お待たせいたしました」
「サンキューな」

厨房に戻っていった叔父さんを見てから、私を凝視するリボーン。うん、やっぱり存在する。記憶はないけど、私って平凡な生活をしていましたよね。ねぇ。
カウンターのイスにちょこんと座ってエスプレッソを飲むリボーンを見ないように本を読み進める。うん、型月の世界で、救われない人を助けたかったなぁ、なんて。

「ここのエスプレッソ。美味いな」
「叔父さんに伝えておきます」
「それにしても、お前、楓だろう」
「……はい、そうですけど…………」
「俺のことを覚えているか?」
「………………?いえ、ごめんなさい。ちょっと色々あって。覚えてないです」
「……そうか。これ代金だ」
「あ、はい。ありがとうございました。またお越しくださいませ」

これが、ある意味地獄の始まりだった。

「ほんとだ、楓ちゃんだ!」
「いらっしゃい……ませ?」

別の日、綱吉とリボーンが来た。記憶喪失のまま、押し通す。悲しそうな顔をされては気分が悪くなる。その次は綱吉と炎真。挙げ句、ジョットやシモン、アラウディや雲雀さんやら、リボーンで知り合った人が押し掛けて来るものだから、叔父さんや叔母さんにも心配をかけてしまい、1週間休みを取った。母が叔母さんから話を聞いたようで、楓は、お母さんに友達を紹介しなかったから、力になれない、と言った。私には、友達が少なかったことは何となくわかる。空の境界を知る知り合いも多分いなかった。

家を出て、散策する。数分経って、ここは。

「神社」

古びた神社だった。私には、何となく特別に感じた。足を踏み入れる。

「楓、ちゃん?」
「誰!」


本当に誰かわからなくなってしまった。

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