ネタ供養と名前変換なし(小説) | ナノ
『約束』

黒雲楓
20代(銀時の3つほど下)
一般的な大学生活を送っていたが、子どもを庇って死んで、死を理解してしまったため、直死の魔眼を持って転生トリップしてしまい、制御できないため、目を包帯で巻いている。
白杖代わりに鍔のない刀の柄と鞘を白くしたものを使っている。



どうしてか、わからない。子どもを庇って、車に轢かれたのは覚えている。あの、暗い、気持ち悪い気がした空間の後、そこにいた。
目を開くと、世界はモノクロと赤で、無造作に線が描かれていた。

どうやって生きていたのかもわからないけど、可笑しくなった目については色々わかった。描かれていた線は何かを殺す線だ。この線をなぞると寿命が減る。
怖くて、目を閉じて、川の近くにいた。水を飲めば、きっと1週間は生きられる。子どもを庇ったことに後悔はなくて、未練も残してない、はず。
生まれ変わらしたカミサマには悪いけど、死んでしまってもいい、と思っていると、あの人に出会った。

「銀時、新しい家族ですよ」

あの人、吉田松陽に連れられて、寺子屋に入門した。松陽さんは銀時に色々教わりなさいと言って、銀時くんと手を繋がされた。松陽さんもそうだけど、久々の人の温もりだった。

嫌々そうになんで、とかふざけんな、とか言っている声が銀時くんなんだろう。申し訳ない気がして、手を放す。迷惑だから、さっきいた場所に戻ると言って、振り返って走り出したら、壁にぶち当たった。

おやおや、約束を破るんですか、と、襟を摘ままれる。体が浮いて、動かされるまま、地面に下ろされた。

「銀時、嫌だ、とか言うんじゃありません。仲良くしてください。ほら、楓。自己紹介してください」
「黒雲、楓、です」

よろしくお願いします。とお辞儀すると、そっちじゃねーよ、という声が聞こえた。

「銀時、楓は目が見えないんですよ」

そう嘘を吐く松陽さんにびっくりした。松陽さんには目が見えない、なんて言っていないし、まず見えている。まあ、色覚が終わっているのだが。松陽さんには死が目に見えて怖い、死にたい、と言ったら、約束をした。

「……わかったよ」

嫌々ながらも、そう言った銀時くんにありがとう、と言った。まあ、松陽さんが、銀時、部屋は一緒でいいですよね、と言って、ずっこける音が聞こえて、じんわりと心が暖まった。



置いて、いかれた。松下村塾は燃えて無くなって、松陽先生は連れていかれた。銀時も晋助も小太郎も、塾生のみんなも、松陽先生を連れ戻す、と行ってしまった。廃寺の境内で座り込んでいた。

足手まといだからついてくるんじゃねぇ!と銀時に言われた。目が見えなくても気配を感じて戦えるようになった。直接、試合をしたことがないのに、そう言われた。松陽先生との約束のために、二人で気配の感じ方、戦い方を学んだのに。これじゃあ、約束を守ることができないのに。

松陽先生が連れていかれる前日の夜に鍔のない刀を渡された。鞘と柄の間を手で持って隠せば、地面をつついて、段差があるのを感知出来るだろう、と言われた。所謂、白杖みたいなものか。
それを受け取った次の日に、連れていかれた松陽先生を見て、これで戦え、と言われたのだと思ったのに、銀時は私のことをそう思っていたんだと知って、辛くて反論出来なかった。包帯を巻いてくれていたのは、ずっと銀時で嫌々ながらやってくれたのに、それを甘えていただけだっだ。

辛いのに、比例してか、食べ物が喉を通らず、静かに泣いた。雨が降っていたので、都合がよかった。帰る場所も行く場所も無くて、ふらふらしていた。廃寺は昔、銀時がサボっていた場所に似ていて、また離れようと思ったけど、頭がふらふらして、座り込んだ。
寒い。一人はこんなに寂しかったか、なんて、思っていたら、雨が止んだと同時に人の気配があった。

「お嬢さん、こんな雨の中濡れていると、風邪を引きますよ」

声の出どころの方を見るが、まあ、当然ながら見えない。声を出そうにも、声が出なく、頭痛までしてきて、意識が落ちた。

意識が覚醒して、起き上がろうとすると、ズキリと頭が痛い。起きたか、と声が聞こえて、部屋の襖が開いて、人が出ていくのがわかる。現状を把握しようと頭を押さえると、バタバタと部屋に入ってきた音が聞こえる。

「大丈夫か、お嬢さん!」
「……え、あはい」

勢いに流された。話を聞くと、倒れたので、介抱したとのこと。申し訳ない。で、名前を言われる。近藤勇さんと土方十四郎さん。他にも手伝ってくれた人もいるのだと言われて、数えきれないほど礼を言った。激辛粥やら、マヨネーズ粥やらを食べたときはある意味昇天しそうだったけども。総悟くんとミツバさんの姉弟は随分と仲が良さげだ。

体調も元に戻った後もぐだぐだと居候させてもらってしまった。その代わりに試合してほしい、と総悟くんに言われて、剣を軽く総悟くんに教えていたので、これの報酬が居候と思うことにした。



武州に来て約5年。子どもだった総悟くんが青年になって、廃刀令まで出た。勇さんが、奪われた刀を取り戻すと、江戸に向かうと言った。私もそれについていこうとしたが、ミツバが武州にいると言ったので、総悟くんに姉上と一緒にいてくださいと言われて、頷いてしまった。

置いていかれるのは嫌だったが、今回は一人じゃない。ミツバもきっと寂しい思いをしている。それに病弱な彼女を心配する総悟くんの気持ちもわからなくはなかった。

手紙やお金が総悟くんから送られて、あちらの方の状況もわかって、安心した。ミツバも手紙を返すが、私も筆を取った。汚いかもしれないし、なんと書いてあるかわからないかもしれないが、総悟くんには知ってもらわないといけないかもしれない。ミツバの体調については事細かに書いた。ミツバには内密にと書いて、ミツバの手紙と共に激辛せんべいを送った。

それから、また5年が経って、体調の優れないミツバに縁談が来た。私の縁談は全て断っていたが、ミツバ宛てへの縁談をミツバは了承した。相手は転海屋という貿易会社のトップらしい。
だから、江戸に行く、と言われたので、私もついていくことにする。近所に別れを伝え、住んでいた家を引き払い、江戸への電車を乗る。

ガタンゴトンと揺れる電車の中で、ミツバに包帯を巻いてもらう日は少ないのだと、少し、感傷に浸った。


江戸に着いて、大きなターミナルがあるとはしゃぐミツバに江戸の状況を教えてもらう。活気のある町だ。

とりあえず、真選組の屯所へ向かう。
出迎えてくれた総悟くんの頭を撫でて、勇さんと話す。総悟くんとミツバの再会だ。総悟くんの思うように、江戸を案内させてあげようと思って、二人を行かせる。昔話に花を咲かせていると、屯所に電話が掛かる。楓さんも行こう!と勇さんに理由を告げられないまま、車に乗せられた。



ミツバは病室にいるとのことだ。倒れたらしい。ミツバの婚約者、蔵場当馬も現れた。どうも、この人は好きにはなれない。破談にさせようとしたが、無理だった。宿を取った、と嘘を吐いて、江戸を散策する。
人の気配と、人じゃないけど人に似た気配が、沢山ある。刀で先を探りながら、歩く。

病院から出て、数時間経った。人の行き交いは随分と減った。水の流れる音が聴こえて、河原の方へ向かう。堤防を降り、川の方に行く。少しだけ、水に触りたい。そう思って、川を探す。

川は好きだ。水は冷たくて、一人であると感じられる。それに、水を見ても、モノクロではあるが、線が見えない。流れる川の音を聞いていると、人の足音が聞こえる。2人いる。

立ち上がって、橋の下で眠ろうと立ち上がって踵を返そうとして、トン、と人にぶつかった。気配がしなくて、思わず後ろに行って。

「あ……」

と、足を取られた。
遠くの方で楓!と十四郎さんの声が聞こえた。ぶつかった人に腕を引かれて、抱き締められる。………は?

「あの、はな」
「万事屋ぁぁ!」
「うお!?」

多分、刀が降り下ろされたのだろう。多分、この声は十四郎さんだ。
離れた体を十四郎さんが庇うように立っている。

「十四郎さん?」
「宿を取ったって近藤さんには言ったようだが、屯所に荷物置いてる時点で嘘だってわかってんだよ」
「痛い」
「近藤さんがうるせぇんだ。帰るぞ」
「ねえ、銀さんを無視しないでくれるー?」

体が硬直した。その声は忘れもしない。その声で、私を。

「おい、楓?!」
「っは、はっ」
「おい、しっかりしろ!」

十四郎さんに体を抱き上げられる。助けて、辛い。誰かに屯所の方が近いからな、という土方さんの声に意識が落ちた。



意識が浮上して、人の気配がした。
そちらの方に向いて、おはようございます、と言うと、目を覚ましたんですね、という男の人の声が聞こえて、副長を呼んできます、と言って、部屋を出ていってしまう。

ここは、真選組の屯所なのかと、刀を手に取ろうとするが、周りにない。ぺたぺたと手で探りながら、刀を探すのは端から見たら変な行動だが、あれがないと初めて来た場所を歩くのは流石に怖い。

探しているところで襖が開いた。

「……何してんだ、楓」
「杖探してる」
「ああ、それならここにある。お前、これがあったらどうするつもりか言ってみろ」
「出ていく」
「んなぁ、ことだと思ってた。だから、俺が預かってた。近藤さんがうるさかったんだ。なんで屯所に泊まらねーんだ」
「迷惑だろうし」
「近藤さんの知り合いを泊まらせて文句言う奴はいねーよ。目も見えねーしな」

断ろうとしたが、昨日の声がフラッシュバックして、息苦しくなる。そうだ、外を出ると、あの人と会うことになるんだ。

「…………十四郎さん」
「なんだ」
「泊まらせてもらっても……いい?」
「ああ、いいぞ。アノヤローと会って過呼吸になられちゃ困るしな」
「あり、がと」

知り合いなのか、それは知らないけど、優しい声で、頭を撫でてくれる十四郎さんは、好きだ。

「楓ぢゃぁぁああん!!!」

ドドド、という足音から、近藤さんからのお叱りがくるかな、と体を強張られると、ぎゅーと優しく抱きしめられた。

「ああ、良かった!トシが楓ちゃんを抱き抱えて連れて帰ったときは肝が冷えた!ミツバ殿の次は楓ちゃんだと思うと、ほんと……ほんと!」
「あの、勇さん、死」
「おい、近藤さん、決まってる!離せ!」

総悟くんがいないのは、ミツバのところにいるからだろう。



[Prev] | [Next]
Contents
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -