ネタ供養と名前変換なし(小説) | ナノ
情報屋は首を突っ込む。

「ねえ、キミ。孤児院に行くか、キミの親を殺した私についてくるか、どっちにする?」

出会いは最悪、と言うべきだったかもしれない。イジメられていたのは、過去の話だ。前々からギャングに憧れていた。目の前で養父が殺されようと、気にすることじゃない。

「ついていって、いいの?」
「冗談のつもりだったけど、覚悟は出来てるの?」
「養って、くれるんでしょう?」
「そりゃ、育児放棄はしないよ。……ふう、名前、聞いていい?」
「初流乃」
「やっぱり日本人かァ。私、汐華楓。でも、ハルノはイタリア人には呼びにくい名前だし、イタリアではジョルノって名乗ったらいい」
「ジョルノ・シオバナ?」
「あー、汐華って言うけど、ジョバァーナ、って名乗ってるの。イタリアではそっちの方が通りやすい」
「ジョルノ・ジョバァーナ」
「うん、いい?」
「はい、ついていきます」

重ねられた手は暖かかった。


「ソルベ、ジェラート、そいつは」
「医者だっけ?」「情報屋じゃない」
「カエデ・チリアージョ、と言います。表は医者で、裏は情報屋をやってます」

黒一色の目で見つめられる。ああ、詰めかな。初流乃が大人になるまでは行きたかったけど、無理かなァ。バレないように、空条に連絡入れられるかなァ、遺書とも変わらないものだし、こっちに来そう。なら、ポルナレフを匿ってたんだけど、あれも心配だし……。啓示がなかったのだから、なんとも言えないケド。品定めをするように視線を寄越すのは、ソルベとジェラートが言う、リーダー、というやつだろう。

「あ、そいつ悪いやつじゃないよ」「死にかけな俺たちを助けたんだよ」
「……怪我してる人を助けるのは、医者として当たり前だから」
「パッショーネのこと調べてたのに?」「まあ、利害が一致したんだよ」
「……どういうことだ」
「黙ってたけど言うしかない」「このチームのこと思ってだったんだけど」

ソルベとジェラートはパッショーネの暗殺チームの人間で、このチームは1度に多額の報酬が入る任務、まあ暗殺任務なのだが、報酬の9割は本部が持っていくらしい。それに加え、暗殺チームにはシマがない。その点も不満らしく、ボスの弱点を見つけようとしたけど、足がつく前に接触してきたのが私だ。パッショーネではボスの正体を詮索することがまずいけないことなのだ。

「まあ、私としては、知り合いが追っていた薬物のルートとボスの正体を握れば美味しいかなァ、と。息子がネアポリスのハイスクールに行っているもので。薬物はちょっと見逃せないんですよネ」

遠回しに初流乃を人質に差し出している時点で、私は最低な人間に入るだろう。

「……わかった。上にそう申請しておこう」
「ありがとうございます」
「そういえば、チリアージョ。家にいたあの男はいいの?」「話したことはないけど。彼氏じゃないの」
「うーん、昔の仲間ってところ。パッショーネのボスと相対したことがあるけど、こっちも身の安全を確保を優先しているから、知り合いのところにでも行けと言ってあるよ。パッショーネでも、あそこと戦争起こすような真似はしないだろうし」
「あそこ?」
「ジッリョネロファミリー」
「!?」
「……あ、事務員か専属の医者ってことにしてください。情報屋、なんて言ったら監視付きそうだし」
「監視はつけるが」
「んー……暗殺チームならいいですよ。本部から来ると面倒ってだけで」

体が熱い。どろりと何かが這いずった。

「ぐ」
「お前」
「まさか、スタンド……?」
「気づかなかったの」「というかスタンド使いだったんだ」
「いやァ、体内からっていうのは、止めた方がいいですよ。私のスタンドは体内に押し止めているだけで精一杯なので」
「開示しろ」
「今も内臓やらは燃やされ続けているし、血液は沸騰していながら体内の循環している。常時、人に復讐したいらしいスタンドなので、出てきたら火をばら蒔きます。スタンドの片割れは回復とか信仰深い何かで。未来予知にも似た何かとか。燃やし尽くされている体内を回復で押さえ込んでいるお陰で今も生きているので」
「未来予知」
「啓示とも言うべきでしょうケド。二人を助けたのも啓示があったからです」
「……歓迎しよう。情報屋という割には戦闘向けだが」
「まあ、情報屋は一人で仕事をするので、自分の身を守れなきゃあ早死にでしょう。得た情報を独り占めしたいと殺してこようとする輩も多いもので」


まあ、なんとかチームに入って2年。チームにも馴染めた。

「ねえ、プロシュート」
「あん?」
「ボスに実子がいたって言ったらどうする?」
「そりゃあ、拐って親の情報を吐き出させる」
「……まあ、そう行き着くよねェ」
「…………なんだ」
「困ったこと相談していい?」
「……ああ」
「もし、その子どもを拐おうとしたら、暗殺チームは全滅するって言ったら」
「……啓示か」
「なんとその子どもは親のことを知らない上に、ボスに殺される。なんていうか、無駄すぎて」
「何が言いたい」
「裏で交渉やら工作やらするから、静観してほしいのだけど」
「何で俺にいう」
「……んー、リゾットには伝えてあるし、チーム全員に話が行くけど、今日、プロシュートはシゴトだから先に伝えておこうって。ああ、もう。はァ〜」
「なんかイラついてるな?」
「啓示で知ってるけど、息子がギャング入りすると、困るよね、って話。しかも金髪になってるし……。交渉の手札がなァ」
「カエデ」
「はァい?」
「痛くないか」
「いつも通り。気にすることはないよ。私は、生きていると実感できる」


「シニョリーナ、お茶をしないかい」
「あら、いいわね。しましょう」

よかった、捕まってくれた。

「初めまして、カエデ・ジョバァーナと言います」
「ジョバァーナ……?」
「ジョルノをよろしくお願いいたしますね、ブローノ・ブチャラティさん」
「何者だ」
「ジョルノの母です。ギャング入りに何か言うつもりは無いのだけど、個人的に貴方とお話したくて」
「個室に行かないか?」
「ええ、いいですよ」

私が教えられた未来にはしない。

「改めまして、カエデ・ジョバァーナ。組織ではカエデ・チリアージョと名乗らせていただいております」
「……組織では?」
「暗殺チームの事務員兼殺し屋ってところです。まあ、話したいことっていうのは、護衛チームの護衛対象者のトリッシュちゃんでしたっけ。あの子、ボスにとってはただの敵なんで、殺されちゃうんですよね」
「!?」
「まあ、言いたいことは協力しないかってこと。麻薬は貴方も撲滅したい対象だし、暗殺チームとしては地位の向上、というよりは報酬の9割が座れている冷遇をどうにかしたいところ。それに、貴方が反旗を翻して、貴方は死にますけど」
「何を根拠に」
「根拠はない。私はただ、啓示を受けただけ。それでも、ジョルノが私のチームメンバーを殺したことも知っている」
「…………」
「貴方達のチームは何もなければ、残るメンバーはミスタとジョルノだけ。私のチームは全滅。まあ、私がいる時点で未来は少しずつ変わりつつあるけどネ」
「……」
「嘘だと思うなら舐めるといいよ。ただ、ジッパーにすると、貴方が痛いかも」
「…………そこまでわかるのか」
「信仰心がないせいか、時々しか見ないけどね。私のチームは、貴方のチームに殺される。始まりはすぐそこ」

アンケート用紙を裏に返し、名前と電話番号を書く。

「協力してくれるなら、電話をお願い。私はオシゴトがあるから」
「……そういうのは男に払わせるものなんだよ」


「…………これで、私の役目は終わり。ッ……はァ〜……痛いなァ」
「カエデ?」「カエデ、顔が赤い」
「……うん。もう終わるよ。眠って、いいよね」
「高熱だ!」「病院は行けないから、ギアッチョを!」


意識が覚醒する。何か、疲れた。何かが、ない。

「マードレ!」
「初流乃?」
「よかった。目を覚まして。痛みはないですか?」
「……どうして」

人を殺す時しか引かなかった痛みが、ない。違和感はこれだったのか。

「金髪になっちゃって」
「染めたんじゃないんですよ。スタンドに目覚めたとき、気づいたらなっていて」
「そっかァ。初流乃がいるってことは終わったんだね」
「……マードレは全部知ってたんですか」
「ううん、私が知っていたのはボス以外のこと。ジョルノとグイード・ミスタと脱退したパンナコッタ・フーゴしか生き残らなかった未来だけ」
「暗殺チームも、護衛チームも、一人も欠けてないです。マードレだけ、欠けるなんて許されるはずがない」
「そう。ねえ、初流乃。どうして、スタンドがいなくなってるの?」
「スタンドの矢を撃ったんです。そしたら、制御下に置けるようになった。十分でしょう?」
「あの、痛みは、私を生かしていたんだよ、初流乃」
「……じゃあ、マードレを僕が生かします。マードレに貰った愛を沢山注いで息が出来ないくらいに」

肝がよく冷えた。


ジョルノに最後の言葉を言わせたかっただけ。

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