ネタ供養と名前変換なし(小説) | ナノ
シーザー孫に転生した知識なしの主

シーザー生存3部

普通に生活して、苦しくなって海に身を投げ出した。とても綺麗な海だった。

そして、死んだはずが生まれ変わった。嬉しくない。幽霊、というか自分の守護霊が見える私は、そんなものいないよ、と頭を撫でられて、本能的に話してはいけないと感じた。保育園幼稚園に行かず、承太郎と毎日遊んで、海外出張していた両親が帰国するからと、小学校は承太郎と別れた。小学校の校舎裏はいじめも何もない静かな場所だった。精神年齢も、幽霊が見える体質も、みんなとは違ったから、本を読んでいた。ある日、男の子がいた。自分の守護霊じゃない幽霊がいた。男の子の守護霊は緑色で肩に乗っているから重そうだった。私の守護霊は聖女様で、旗を持っていた。守護霊が頑張れ、と私に旗を振ると力が出たし、怪我をしたときも、旗を振ると、怪我が治った。気味が悪いと言われないように、家族の前では絶対にさせなかった。その聖女様は、私の言い付け通り姿は現してないけど、男の子に肩に乗ってるそれは、やっぱり重そうだった。でも、声を掛けたのに、知らない、何それ、気持ちが悪い、そう言われると怖くて、男の子が読んでいるものに意識が向かった。

「ねえ、何読んでるの?」

え、うわぁ、と驚いて、思わず本を落として、パタンと栞を挟む事なく、…………あれ、なんか緑の糸が栞のように挟まっている。

「あ、ごめん、栞は、挟んでるみたいでよかった。驚かせてごめんね。校舎裏に来る人、あんまりいないから、気になって」

建前をつらつら並べる。本音はその守護霊、見えるの、だ。

「え!緑の糸見えるの?」
「うん、見えるよ」
「じゃあ、このぼくの守護霊も?」
「うん、私にもいるから」

そう言って聖女様を出す。守護霊の聖女様を見て、目をキラキラさせる男の子。見えている。そう、実感して、何かを共有して、ポロリと涙が出た。アワアワと男の子が驚く。なんで、ごめん。と謝る男の子に、ありがとう。と言った。

「どうして?」
「見える人、他に居なかったから、私だけ、やっぱり世界が違うんじゃないか、と思って」

怖かった。そう言うと、男の子は私を抱き締めて、二人だけの秘密だね、とハンカチで、涙の流れる目を押さえてくれた。

小学校、中学校と同じ学校で、中学3年の冬休み、男の子だった子――成長期というもので、驚くほど長身になった、典明は、困ったような顔で、それは仕方がないね、と言った。そう、両親が海外出張することになったのだ。また祖父母の世話になる、だから、典明と同じ学校に行けなくなってしまった。そう、伝えた。秘密を共有して、中学の男女が分けられた後も親友のままだった。典明か私の家でテレビゲームをして、勉強を教えたり、時には守護霊のコントロールについて、暴走について、本の感想を言って、大人しい私にいた友達は典明だけだった訳で、高校生活心配だなぁ。と呟けば、連絡するよ。と言うから、私もするね、と言って、受験勉強に手をつけるのだった。

9年ぶりに見た幼馴染みは典明よりも大きながっちりした体格になっていた。思わず、初めまして、と言ってしまった私は悪くない。ちなみに私は、女性の平均身長より少し上の160cmである。見上げる首が痛い。ほら、行くぜ。という承太郎にうん、と言って、追いかける。

言葉少ないが優しい幼馴染みであったはずだ、と回想する。無表情だけど、行動の一端に優しさがあったはずだ、と考える。高一の夏休み明け、唐突に幼馴染みの承太郎が、一緒に登校していたのを止め、授業をサボり、遅刻、無断欠席、喧嘩、煙草、と不良の道を突き進んでいる訳である。原因を突き止めようとしたが、大体の原因は今もなお、囲んでいるJKだろう。JOJOという愛称をイタリア人の祖父が親友のことを呼ぶ時に使っていたな、なんて思いながら遠巻きで見る。ある日、帰り道、いかにも不良です。にあって、手を出されそうだったので、波紋――これもイタリア人の祖父が教えた護身術、で、叩きのめして、便利な波紋で、私に叩きのめされたことを催眠で消して、帰宅したりもしたが、大体あの不良が襲ってきたのは、承太郎のせいだ、と仮定すると、もう、目の当てようもない。ギルティーである。この不良青年をどう更生させようかと悩ませて1年、更に悩みの種が増えたわけである。

家族旅行でエジプトに行ってくる、お土産は何がいい。そう聞かれて、3ヶ月。典明から連絡はない、嫌いになっちゃったかなと思うと、もう、なんというか、胃がマッハだった私に、追い打ちをかけ、ぶっ倒れた訳である。入院している間ほど、暇で暇で、悩みの種は解消される事なく、入院期間が伸びたことは仕方がない。その間に、祖父バカのイタリア人の祖父がすっ飛んで来た訳だが、理由を聞かれて、幼馴染みが学校一の不良になった上に、大切な友達一人が音信不通になった、なんて言えば、この祖父、謎に権力があり、SPW財団とかいう名前の財団が世界中のエージェントを使って、典明に電話させるだろうし、この祖父、年なはずなのに、40代にしか見えないし、波紋のこともあって、謎に物理的にも強い。承太郎に更生(物理)をしてくるから、何も言えない。すまんな、祖父。

退院して、3ヶ月経った。胃薬とはそこそこ友達であるがぼっち学生生活というのは、面倒なのは、体育のときと物を忘れたときだ。まあ、なんとかやり過ごしていた訳だ。しかし、だ。なんで今日に限って胃薬を忘れたのか、そう後悔した時にはもう遅かった。保健室でガス爆発が起こったから、早退しろ、というお達しと、承太郎が学校に来ていると気づいた訳だが、その承太郎がいない。まさか保健室に、と思うと、悶々と校門で悩みに悩んで、帰ったとき、斜め前の家、承太郎の家の前を通り過ぎようとしたとき、帰ってるといいな、と思って、承太郎の家の方を見ると、3ヶ月音信不通だった典明と目があった。思わず足を止めてしまった私は悪くないし、あ、と中学時代に声変わりした声が発せられた訳で、その瞬間、後数歩で家、というところでぶっ倒れた。

目を覚ましたら、前もいた病院だった。大袈裟過ぎだよ、典明。と手を握る顔を見ると、一つ赤く腫れていた。当然ぎょっとしたわけだが、無事でよかった、と声をかけると君が無事でよかった、という典明。うん、私もこれ以上胃に負担をかけなくていい。後は、承太郎だ、と思った訳だが、どうして、承太郎の家から典明が出てきたわけなのだろう。それを聞くと、エジプト旅行中に催眠で承太郎を襲うように仕向けられたらしい。なんで。それで、保健室のガス爆発、基、承太郎と典明の死闘があって、その催眠の肉の芽、とかいう物を承太郎が取り払ったらしい。はて、典明は喧嘩強かったっけ、どっちかというと頭脳派だと思ったんだけど、と言うと、ほらあの守護霊だよ、とニュッと背後から出てきた。ああ、この守護霊か、なんて思っていると、これ、スタンドって言うんだって、と説明された。へー。法皇の緑、と名を付けたというのは、中学の時だったね。栞に挟んだり、迷子防止の糸だったのに、承太郎と戦えるなんて、あれ。

「守護霊、じゃなくて、スタンドって、守護霊いる人にしか見えないってことじゃ」
「スタンド使い、ね」

どうやら、承太郎がスタンドに目覚めたらしい。ああ、胃に負担をかけていた承太郎、留置場から出ない、が解決していた……。退院していいかな、と言ったら、今日はこの点滴を打ったら大丈夫だ、と言われていたよ。と言われたので、よかった。それにしても、個室じゃなくて大部屋でよかったのに、と愚痴ると、苦笑いしながらSPW財団が、と言われて、頭を抱えた。あの金持ちめ。

点滴も終わり、病院を出ると、リムジンに入れられた。おい、誰だこんなことしたやつ。当然、あの祖……承太郎?なんで?

「ジジイが話があるとよ」
「ジジイ?」
「承太郎のお祖父さんのジョースターさんだよ」

なんでだろう。なんか聞いたことがあるような無いような。

「カエデは波紋を上手く練れるな、JOJOも大した鍛練もせずに出来たが、カエデはそれ以上だな〜」
「おじいちゃん、じょじょって誰?」
「俺の親友?みたいなもんだよ、ジョセフ・ジョースター、これでJOJOだ。そんなことより、シャボン玉を飛ばしてやろう!」
「やったー!」

…………やってしまった。頑張って祖父と馴染む為のあれも掘り返してしまった。波紋法の護身術は昔の記憶の中でも今でも鮮明に思い出すことが出来るが、どういう運命だ。確か承太郎はアメリカ人のハーフなはずだ。私はイタリア人のハーフだ。どうやって、あの祖父知り合ったんだ、そう思うと頭を抱えた。心配する典明と承太郎のことは無視した。ごめん、整理したい。

結論を言おう、祖父が言っていたJOJOで間違いないらしい。唸って、シーザーを呼ぶか、と言われて、全力で拒否した。この前あの人、ストレスで倒れた私をお見舞いに来たほどだ。そして、ストレスの原因である、承太郎と典明に迷惑を掛ける。拒否するしかなかった。で、守護霊、改めスタンドについて説明され、見せてくれ、と言われて、聖女様、と呼んだ。何故、聖女様、と言われたので、簡単だ。想像しているジャンヌダルクだったから、それだけだ。帰っていいか、と聞けば、承太郎にアマが飯を用意しているという。なんというか、うん、承太郎と久しぶりに話すわ。JOJOは唸っているので、お茶の湯気に波紋を流して泡を作って、祖父を呼んだら、嫌いになりますと、言って弾かせておいた。

JOJOのわしは呼んでないぞ!という声が響いた。ええ、何が起きてるって、簡単です。祖父が来ました。理由を聞けば、波紋を使ったから俺を呼んでると思った。でした。典明の楓のお祖父さんなのか……という驚いた様子だが仕方がない。これでも70だ。

「……学校」
「休めばいい!」
「承太郎」
「俺はフケる」
「典明」
「一応安静しろって言われてるから……」

裏切り者だ、斬首だ斬首。久しぶりに鬱陶しいので、波紋を込めて肘打ちして町を徘徊していたら、スタンド使いに襲われて返り討ちにしてやりました。ケロッとして帰ってきたのはいいけど、何かあったのかって質問されて、いいえと答えたはいいけど、目的が承太郎だったようだけど、背後から襲ってくる敵に対して容赦はするなよ、というのは祖父の教えだ。手刀で脳天ぶち抜いたときは流石に後悔したけど。いやぁ、承太郎と典明の前でやるとは思わなかったよ。祖父は流石俺の孫、マイオアンジェロ(イタリア語my angel)!と感極まる祖父に遠い目をすることになった。

どうやらこの敵はDIOという敵の刺客でDIOはツェペリ家やジョースター家の因縁の相手らしい。典明、巻き込んですまない。特にDIOとジョースター家は凄い面倒な関係だとわかった。承太郎がスタンドに目覚めたのも、DIOのせい、ということだ。JOJO曰く、DIOはジョースター家を目の敵にしているらしい。

で、次の日こそ学校に行こうとしたわけです。祖父に拉致られました。何をする。

話を聞く限り、ホリィさんがスタンドの影響で重体になっているらしい。それでDIOを倒せば元に戻るから、と、エジプトに行って、DIOをぶっ飛ばしてくる。そのメンバーに私を入れたらしく、命の危険もあるから、と祖父は絶対に連れていかせない、ということらしい。

「なんで、そんなに嫌なの」
「いいか、カエデ」

真剣な顔をして、私の方を見る祖父に息をのむ。こんな顔、初めて見た。DIOとの因縁は祖父の祖父から始まるらしい。祖父の祖父はDIOの刺客によって死にかけ、JOJOの祖父、ジョナサンに波紋を与えて死んでいき、祖父の父は、DIOを吸血鬼した仮面の元の持ち主が眠る石に触れた祖父を庇って、波紋を与えて死んでいったらしい。何それ、ツェペリ家かっこいい。祖父も仮面の持ち主、柱の一族と戦って、なんとか瀕死の状態から生き返ったらしい。JOJOが最後は締めたんだぜって、言った。ジョースター家とツェペリ家超密接な関係じゃん。あ、SPW財団のスピードワゴンとは、祖父の祖父時代ジョナサンと祖父の祖父と旅に出た一人だったらしい。独身だったって……。でも、それってやっぱり。

「行かなきゃダメじゃない?」
「カエデ!」
「だって、一人だけ逃避なんて良くないよ。もし、私が行かなくてDIOに皆が殺られちゃったら、私は普通の生活に戻れないよ」

唯一無二の友達と幼馴染み、グレて不良になろうが、操れて音信不通になろうと、私にとっての二人はそれなのだ。

「あのね、承太郎も典明、花京院くんも私の唯一の友達なの、だから、二人とも死んじゃったら、私には何も残らないよ」

祖父は私を抱き締める。一つ約束しよう、と小指を差し出す。

「絶対に生きて帰ってくるんだ」
「うん、絶対に帰ってくる」

指切りなんて子どもじみていたけど、祖父はそれだけ心配しているということだった。祖父にはスタンドが目覚めていないから、足手まといになるだけだったから、それをわかっていたんだろう。

「おじいちゃん」
「なんだい?」

優しく目を細める祖父に、ありがとう、と言っておいた。

「カエデ、波紋を練るときこれを使え」
「スカーフ?」
「そのセーラーのスカーフに使え。波紋を流しやすい素材で出来ている。後は」

石鹸だ。と言われて、デスヨネーと思った。我が祖父はシャボン玉を使って、波紋を利用する。どっちかというと、私はJOJOの体術の応用の方が、あ、有り難くいただきます。石鹸水にしてスカーフに湿らせよう。下着、と言われたら、ぶん殴るしかなかった訳で、本当に申し訳なかった。という事で着きました、空港。祖父は空港と聞いて頭を抱え、JOJOに絶対墜落させるなよ、という一番の爆弾を投げ込んで、私はアヴドゥルさんに挨拶をして、飛行機に乗るのだった。

ああ、こういうことか、と思ったし、ジジイとはもう一生乗らないという承太郎にも同感だ。言えば、墜落させかけてるよこの人。祖父、貴方がJOJOに掴みかかったのはこれだったのですねなんて、そんな信仰もなかったけど、十字をきった。私には聖女様という信仰がいたわ、と再確認したけど。

と、まあ、アヴドゥル、イギー、花京院の死亡フラグをへし折ってなんとか生還する話。

DIO戦→承太郎をナイフに囲まれて、倒れた。私には今、聖女様はいない、聖女様は典明の怪我を治す奇跡を起こしているのだろう。私はただ、聖女様からもらった聖剣デュランダルを片手にDIOの元へただ、無言で、歩いた。奇跡とはなんなのだろう。JOJO曰く、シーザー、祖父は瀕死な上に瓦礫に挟まれそうになったらしいが、何かに守られたように瓦礫はシーザーの元に落ちなかったらしい。今だってそうだ。前世が医者だった私は典明への攻撃を致命傷、即死と判断する。聖女様、スタンドは今側にはいない。典明へ向かって、旗は振り続けられるだろう。

「小娘がこのDIOに立ち向かうとはなァ!」

スカーフに手を添える。こんなことなら、制服全体に石鹸水染み込ませるべきだった。

「高祖父はジョナサンへ波紋を与え死に絶え、曾祖父も祖父を庇って波紋を与えて死にました」

ジョナサン、その名前に眉がピクリと動く。

「私も、大切な人達の為に死ねたら、最高ですよね」

祖父に心のなかだけで、謝った。

「吸血鬼は太陽を浴びたら死ぬ。そして、太陽エネルギーを使う波紋にも弱い。それだけじゃきっと勝てないから、誰にも見せなかった力を見せますよ」

私だって、誇り高きツェペリ家の者だから。

シャボン玉をDIOに向けて発射する。割れば、傷が付くだからと言って、避ける程の隙を与えるわけがない。それは残念だけど、陽動だから。

デュランダルを両手で持つ。そして、祈るように、刀身を持った。世界で腹を突かれる、生きているなら問題ない。聖女様らしい最期だもの。

「主よ、この身を委ねます」
「楓!!!」
「くそ、小娘!」
「DIO!!」

波紋で身が焼ける痛みを和らげて可能な限り、DIOを拘束できる時間を長くさせたかった。闇が視界を覆う。


目が覚めた。病院だ。聖女様の最期の力、この身を燃やし尽くす筈だったのに。一人だった怖かった。守れなかったんじゃないか、助けられなかったんじゃないか、怖くて、ビクビクして、DIOに突かれた腹はまだ痛むが、波紋で和らげる。聖女様の最期の力は、本当に聖女様の最期の必殺技だった。聖女様は、ジャンヌダルクは火炙りにされて死んだ。それを具現化するものだった。だから、聖女様は私の後ろからひょっこりと現れたりしない。守護霊だと思っていたときから、聖女様に守られている気がしていたのに、今の私は無防備だ、誰かを見たら、きっと安心するのだろうけど、何も気が休まらなかった。

「カエデ!」

個室から出ようとしたとき、個室のドアが開いた。祖父だった。よかった、と涙を浮かべながら、私にキスの雨を降り下ろすのだ。祖父は唇以外にキスをする。唇は大事な人用に、らしい。キスの雨が私のガチガチな恐怖心や心配や、凝り固まった何かを崩れ落ちて、えぐえぐと泣く。人前で、祖父の前で泣いたのは、親の前で泣いたのはいつだろう。記憶になかった。思い出せる限りを尽くしても、典明にスタンドが見える、二人だけの秘密だと言ったとき以来だった。

漸く泣き止んで、腫れるといけないからと、水に濡らしたタオルを目に当てさせられ、話を聞く。私の意識が飛んですぐ、典明が法皇の緑で私を救出し、JOJOに今日で決着が着く、怪我人が出るだろうからと、祖父はホリィさんをSPW財団の医師に任せてエジプトに飛んで来ていて、波紋を流して、なんとか生き長らえたらしい。血の気が引いた、馬鹿野郎、と、怒られる。でも、生きて帰ってよかった、と抱き締められた。祖父の愛を感じながら、みんなは、と聞く。全員、怪我はしているが、無事だった。よかった、と安心して、涙があふれでる。祖父は優しく頭を撫でて、タオルを変える。

「マイオアンジェロは泣き虫だな」
「なんか、安心しちゃっ……た」

また、意識が闇に飲まれる。


「覗き込んでないで入ってこい」

シーザーのその声に、承太郎、花京院が入ってくる。申し訳なさそうな顔をしている。

「峠も越えた。意識も戻った。ただ、泣き疲れて寝ちまったが」

そういって頭を撫でるシーザーの顔は優しさで溢れている。カエデが目を覚ましたのは、DIOを倒して5日だった。2日、3日は生死をさ迷っている、と聞いていた。だから、生きていてよかった、だった。二人に疲れきって目を覚まさないカエデの頭を撫でさせて、談話室へ行くか、と病室から出させた。

1フロアを貸しきった。静けさと反対の大部屋にシーザーは入っていった。おっ、と言う顔をするポルナレフとアヴドゥル。イギーは眠そうに一瞥して、昼寝を再開する。ジョセフがどうじゃった、と聞いて、シーザーの顔が綻んだ。

「目を覚ましたよ。ただ、緊張や恐怖が解れて安心感から泣いて、泣き疲れて寝ちまったが」

そう言うと、3人の顔は綻び、一匹は完全に寝ることにした。

カエデが泣くねー。これまでの旅で、楓は気丈に振る舞っていたのだ。花京院は優越に浸るつもりなのだろう。小学生のときの楓の涙、それが綺麗で、まるで天使のようだ、と思ったのだ。

シーザーがハッとして、マイオアンジェロが目覚めたから、行ってくる、と言うので、孫というより、年離れた兄弟にも見えなくはなかった。

「なんで気づいたんだよ、ツェペリさん」
「波紋でシャボン玉でも作って、目が覚めたら割らせでもしたんじゃろ」

波紋ってなんでもありだな。と思うポルナレフは、スタンドもなんでもあり、というシーザーを想像してはいないだろう。

それから、検査入院も終わり、エジプト空港に6人の姿があった。ポルナレフとイギーはフランスへ、アヴドゥルはエジプトに留まって、JOJOは日本に戻ってホリィさんの様子を確認してアメリカに帰るのだろう。

「おじいちゃんは?」
「カエデがまともに動けるまでは日本に留まるつもりだよ」

日本の祖父母に一体、なんと言ってエジプトに向かう旅に向かわせたんだろう。そう心配すると胃がキリキリしてきた。留年は多分大丈夫。


「あはは、おじいちゃん、凄く急いで帰っていった」
「仕方ないだろう、君のお母さんがぶち切れるなんて、あまり想像できないけど」

祖父であるが、母に一旦帰ってこい馬鹿野郎(意訳)で渋々帰っていった。イタリアだもん、クリスマスは大事にするのだろう。

今、典明が私を付き添ってくれていた。私の聖女様はいなくなってしまったけど、法皇の緑は見える。スタンドは消えてしまったけどスタンド使いだったから、見えるのだ。

「ねえ、楓」
「なに、典明」

家へ帰る途中、リムジンは途中で下ろしてもらい、リハビリの散歩をしていると、典明に声をかけられた。

「君は、死ぬつもりだったのか」
「……どうして?」

NOと言えば、嘘になる。あれは、身を焼き尽くす。行き着く先は死だ。逆にSIとも言えない。祖父との約束も、アヴドゥルさんやみんなとの約束も。

「そんな顔をさせたくなかったんだ。ごめんよ」
「……質問に答えることはできないけど、これは言えるよ。後悔は無かった。承太郎がナイフに囲まれて倒れた、典明が腹を突かれたのに、一人だけ命を懸けてなかったんだよ。きっと、死を恐れていた。でも、不思議と、死というものは怖くは」

抱き締められた。体格差はあったけど、なんとなく、小学生以来だな、なんてそう、思うことにした。

「頼む、二度と死が怖いものじゃないなんて言わないでくれ」

典明の声が震えていた。小学生のときとは違う。

「君がDIOに突かれて、僕は腹を突かれた時より怖くなったんだ。大事な人が死ぬ、大好きな人が死ぬなんて、僕には耐えられない」
「あの、典明、待って」

なんか、聞き捨てならない言葉あった。そして、待たない、と典明は続けるのだ。

「楓、僕は君に話し掛けてもらったときから、好きだよ。愛してる」

あ、と声が洩れた。私には、愛というものが遠すぎた。前世は医者になると決めてから、恋愛なんてものは切り捨てた。現を抜かすぐらいなら、論文を読んで、勉強した方が懸命だった。

「典明」
「なんだい」
「とある病院の医者はね、医者になると決めたら、それに突っ走って、恋愛なんか見向きもせずにね、医者として、ふさわしい姿を示した」
「楓」
「でもね、その医者は医師としては素晴らしかったけど、自分の体には気を使わないんだ。不養生が祟って死んだ医者が目が覚めたのは、赤ん坊の姿になっていた」

小説の文章だよ、と適当に嘘を言っておく。突然何を話し出すのかという顔だ。

「ごめんね、とにかく私は止めておいた方がいい。誰も幸せにはならない」
「君が僕を勝手に決めつけるな」
「典明」
「本当に、君が死んだなら後を追ってやろうと思ってたぐらいなんだ。わかるかい、わかってくれ」

言葉が詰まる。典明がそれほど、思ってくれているわけだ。大学は医学部に行くつもりだったが、遠いところに行ってやろうじゃないか、私は失恋なんてしたくないんです。

「あのね、典明。失恋なんて、絶対ごめんなの」
「一生愛す」
「プロポーズですか、少しは落ち着いた方が」
「落ち着いてる。落ち着いてなかったら、組み敷いて、キスをしているし、大人の一歩を渡ってる」

言葉を失った。

「典明、私、恋ってわからないの」
「いい」
「放浪の旅をしたい」
「……え」
「エジプトに行く前に、おじいちゃんに話を聞いたの、高祖父や曾祖父が死んだ場所に行くつもり。追いかけないでほしいの」
「好きにすればいい。でも、浮気は許さない。きっと相手を殺してしまう」
「うん、我が儘でごめんね、典明。これからもよろしく」
「うん、よろしく」

唇にキスをされた。



高校の卒業式当日に、跪いて指輪を渡す様はなんというか、とりあえず恥ずかしかった。

典明に黙って、イタリアの大学に入学して、そのまま放浪の旅に出た。海外の大学に行きたかったので、なんとか無事に両親を説得した条件がイタリアの祖父の家から通うことだった。イタリア人の祖母は私が生まれたときに死んだとか、お母さんの生まれ変わり、という母になんだか申し訳なかったと思う。海外の大学の一学期は秋から、でも春からイタリアに飛んで、そのままフランスに行って、イギーとポルナレフに会いに行ったり(花京院は!?と聞くポルナレフに黙っていて、と言っておいた。)、JOJO、ジョセフさんがイタリアに来たり、色とりどりの花を持って、墓参りをしたりして。

今、私は杜王町という町に来ていた、典明と一緒に。花京院、という名字になって、8年、いや、一緒に暮らすこと2年。承太郎の呼び出しに応じたわけである。

「承太郎」
「時間きっちりに来たな」
「まあ、ハイジャックとかが起こらないうちは時間通りに来るさ」
「典明、不謹慎」
「昔のことだろう」

ひょっこりと承太郎の後ろから現れる高校生3人。

「あ、この子が噂のJOJO、失礼、ジョセフさんの隠し子?」
「東方仗助って言います!」
「ああ、彼が……」

典明も納得する。スタンド使いの調査や論文の作成、それより承太郎がここに来たのは、ジョースター家を震撼させた問題があって、JOJO、ジョセフは慣れない、の隠し子騒動。SPW財団でも大騒ぎになり、80を越し始めたまだ40代にしか見えない祖父が、ジョースター家の誠実とはっ、と頭を抱えていた。ツェペリ家は相変わらず平和です。承太郎の祖母が激おこぷんぷん丸になったと聞いたが三行半を突きつけられてないだけましである。

「初めまして、花京院楓と言います。こっちが典明」
「花京院典明だ。SPW財団のエージェント、のようなものかな」
「楓に来てもらったのは、まあ、あれだ。仗助のスタンドで直せるものの方が遥かに多いが、いつも仗助がいるとは限らないし、仗助が怪我した場合にな」
「……あ、うん、東方くん、手を出して、怪我を見せて」
「え、これはただのかすり傷ッスよ!」
「…………ねえ、承太郎、舐めたら治るとか言ってないよね」
「言ってねぇ」

波紋を流して怪我を治す。スゲー!という億泰くんと康一くん。さて、ホテルに向かうか、と承太郎が運転席に乗って、助手席に典明が乗る。ふあ、と欠伸が洩れた。眠いのか、と聞く承太郎に典明が夜遅くまで、論文を読んでて、と言う。承太郎は眠たかったら寝ろと言うので、言葉に甘えた。

吉良吉影に目をつけられながら、なんとか、戦いに勝つ。怪我をしていた仗助が目を覚ましたら、杜王グランドホテルで、シャボン玉がふよふよ浮いているから、割ってみたら、起きたみたいでよかった、と言う楓が現れる、後ろには花京院がいます。とかどうでしょう。

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