I'm not the king of pirates!(opの世界にトリップ)
※キンセンカの涙の主人公がopの世界にトリップしたら…そんなお話です。


「どこだ、ここは」

見渡す限り、海。海。…海。
確か私は、先程まで部活があって、疲れた身体に鞭を打ってなんとか家まで辿り着き、とっておいたとっておきの高菜ラーメン(インスタント)の蓋を開けたはずだ。

そういえば、前世からやって来たときも高菜ラーメンの蓋を開けた瞬間だった。


…嫌な予感がする。

しかし、考える力が私に残されていなかった。どうしよう、お腹空いた。只でさえ今日は時間がなくて朝も昼も抜かしてしまったのに。
頭がくらくらする。どうやらここは島なのだろうか、遠くには立派な建物が見えていたが基本的に海しか見えない。

少し森の方に入り、食べ物が無いか探してみたが、現代人の私には何が食べられるか分からないし、食べられそうなものは見当たらない。
あ、これはヤバいなと思った瞬間、ふと足の力が抜けて倒れてしまった。

ぱたりと、草むらに沈み込む。思った以上に派手な音はしなかった。


お腹空いた。本当にお腹空いた。もう雑草食べるしかないかな。


そう思って、ぐっと右手で草の束を握っていると、左手に何かの違和感を覚える。
なんとか身体をぐるりと左の方に向けると…


「…果物!」


思わず必死で飛びつく。ちょっと眺めてみたが見た事も無い外見だ。もしかしたら変な物なのかも。
というか、青色って…。ブルーベリーにはとても見えないし。

けれども今は関係ない。試しに一口齧ってみた。



「…ぶほっ!」



思わず吹き出してしまう。とんでもなく不味い。
やっぱりこれ、人が食べれるものではないのかも。…しかし、今はわがままを言っている場合ではない。

ラーメンの件といい、何かしらの嫌な予感がするのだ。もしかしたらこれからも食べ物を見つけるのが困難になるかもしれない。

なんだかここは、日本じゃない気がする。

…というか、いま日本は冬のはずだ。なんでこんなに暑いんだ。南半球ですかここは。



果物の不味さに顔を顰めながらも、一口ずつ確実に飲み込む。我慢だ、我慢。
そしてなんとか完食した。不味かったけどボリュームはあったからお腹は膨らんだようだ。



「さて…と」


とりあえず、ここが何処だか把握しなければならない。とりあえず先程見つけた立派な建物へと向かった。

…お願いですから、また別世界に来たとか止めてください。順応性がないって、自分でも分かっているのだから。

心の中で拝みながら一歩ずつ前へと進む。



15分ほど歩き、ようやく建物の外観がはっきりとしてきた。
…なんとなく、西洋風に感じるのは気のせいだろうか。建物には大きく堂々とカモメかなにかのマークが描かれている。

どうも見た事があるマークだが思い出せない。特に気にせず前へと進むがある事に気づき足を止めた。



「…軍隊?」


建物の中の広場かなにか、大勢の白い服を着た人達が整列していた。何かの準備だろうか。
その前方に偉そうな人が何やら大声で話しかけている。



「本日は!本部から直接海軍本部大将閣下が視察で視えられている!!いつも以上に気を引き締めるように!!!」

「「「はい!!!」」」


海軍って。海軍って。…ここは日本だろうか。いや、日本じゃない。日本の軍隊はあんな服来てないだろうし、第一空気が日本っぽくないというか。

しばらくその様子を眺めていると、ふと何かの気配を感じた。視線を移動させると、建物の最上階から誰かが此方を見ているようだ。
目を凝らしてみると、どうやらおじさんみたいだったが…。するとおじさんは窓を開けて此方へジャンプした。…ジャンプ?



「は…は!?」



重力に逆らってる!!何あれ!!何でこっちくるの!?
あっけにとられてその姿を見ている間に、おじさんは私の元へと着地した。



「おんどりゃあ、誰じゃ」

「は…?」

「小娘1人が、ここでなにをやっとるんかっちゅぅて聞いとるんじゃ」


え、何弁だっけこれ?


「えっと、す、すみません」

「質問に答える気がないんか」

「…すみません、質問で返してしまいますが、ここは何処ですか?」


自分でもアホだと思うような質問だが、おじさんは特に不思議がる事なく呟いた。


「なんじゃ、所詮海賊の犬に売られて中途半端に捨てられたわけか」



…海賊?いつの時代の話をしているのだろう。
話についていけなくなり、口を閉ざしていると、おじさんは興が冷めたのか踵を返す。

せめてここが何処なのか教えてほしい。けれど、すこし気難しそうな人なのでこのまま黙っておこう。
おじさんが帰るのを見送ろうと思っていると、向こうの草むらの方で先程の白い軍服をきた人がこちらに向かってきた。



「大将閣下!!どうかなされたのですか!!」


部下の人だろうか。しょうがないからあの人に聞こうと思って此方からも近づこうとした時…

「…!?」


何あの人、銃向けてきている!
思わず両手を挙げた。


「え、なになになに!?」

「お前は誰だ!ここが新たに海軍所轄地となった事を分かっているのか!?」

「は、はあ?」


確定した、ここは日本じゃない。


「答えろ!なぜここに居る!!」

「知らないですって!銃下ろしてください!!」


やばいやばい!この人発砲しそう!!
じりじりと後ろに下がろうとしたが、そこは小さな崖になっていて、その下は海。どうしよう、飛び降りるしか無いのだろうか。



「待って待って待ってストップストップストップ!」

「怪しい奴め…!大将閣下、お下がりください!」

「…」


おじさん、この人止めてよ!!なんで黙っているの!

ああもう駄目だ。私死んでしまう。さっきまで黒子達と部活していたのに。


発砲の準備でも整ったのか、銃からガチャリと音が聞こえ、男の人が指を動かそうとしている。
おもわず顔をしゃがませて両腕を前へ持ってきた時、身体のなかで、ぶわりと何かを感じた。


何が起きたのかと、少しだけ目を開かせると、2人は驚きに満ちた表情を浮かべている。若い男の人に至っては腰を抜かせていた。

ふと、この辺りが影になっている事に気づく。先程まで日が照っていたのに、雲が出てきたのだろうかと後ろを振り向いてみれば…


「…は!?」



そこには、何故か海が盛り上がって此方に向かってきていた。津波とは少し違う感じだ。

その光景に、一瞬身体が震えると、海の固まりもぶるりと震えだす。
明らかに恐怖の対象だというのに、何故か私はそれが身体の一部のように感じた。



思わず右手を上げて、男の人に向かって振り下ろす。すると海からシャボン玉のように一部が浮かび上がり、男の人を包み込んだ。

「な…ぐっ…!!」


なにあれやばい。一時の間見ていたが、溺れそうだったので思わず「引っ込め」と念じれば自然とシャボンの形を崩した。

「げほっ…ごほっ…!!」


必死に男の人は空気を吸い込もうとする。それを呆然と眺めていると、おじさんの視線に気づいた。
何故か鬼のような形相で此方を睨んでいる。


「…おんどりゃあ、食べたのか」

「え、何をですか」

「ウミウミの実じゃあ!!!!」

「何ですかそのネーミングセンス…って、ちょ!!!?」


おじさんは右手を差し出し、何かドロドロとしたものを溢れさせた。

何だよこれ、ファンタジーかよ。

…何となく、熱気が此方に伝わってくる。あのドロドロ感からして、あれは…


「ま、まままマグマ!?」

「おんどりゃあ!そこでじっとしとれ!!」

「ひいいいいいい!!!!」


何故か銃よりも恐ろしく感じるそれから逃げようと、思わず海へと飛び込んだ…が、

「痛っ!!」


あろう事か、海に沈み込む事無く…まるでクッションの上に立っているような感触だった。
…どうやら、海の上に立っているようだ。

上の方を見ると、おじさんが此方へ向かってこようとしている。

もうファンタジーな事象にいちいち驚いている暇はない。一目散にそこから逃げ出した。



さてそこから、途中で船を出されて捕まるかと思ったが、どうやらシャボンに包まれていれば海に沈んで隠れる事ができ、なんとか見つかる事は無かった。

それから少し海の上を進んでいれば、2時間程で島へと辿り着く。


そこへ上陸すれば、西洋人っぽい人達を沢山見かけた。それよりも、またお腹が空いたので何か買いたい。

…けれど、ここは明らかに日本じゃないし、福沢諭吉は使えないだろう。どうしよう。


「おい、聞いたか」

そんな時に、小道の方から誰かの声が聞こえた。覗いてみると柄の悪い人達が居る。
…一番偉そうな人が大きな帽子を被っていた。まるでカリブ海の海賊みたいだ。

「なんですかい、船長」

聞き間違いだろうか、船長とか言ってる気がする。

「ついこの間、近くの無人島が海軍所轄になったのは知ってるだろう?」

「もちろんですよ。だからこの島からそろそろ引こうって話っすよね」

「まあまて、実はそれだけじゃあないんだよ」


男はニヤニヤと部下らしき人に笑いかける。


「あそこにあるんだよ」

「ある…というと?」

「悪魔の実だ」



その場の空気が一気に変わる。

待て待て待て。

…正直、おじさんのマグマっぽいものを出してきた瞬間から、もしかしてと思ったけれど。

まさか、ここは…あの初版発行数最高記録を叩き上げたあの世界だろうか。

それだけは絶対に嫌だ。



前の世界はまだ良かった。普通の日本だし暮らそうと思えば暮らしていける。
だけどここはどうだ。命の危機にさらされても可笑しくない世界だ。先程の事みたいに。


とんでもない事になってしまった…と頭を抱えていると、船長らしき人は話を続ける。



「しかもその悪魔の実、普通の実じゃないらしい」

「いやいや、悪魔の実ってぇだけで凄え話ですけど…何かあるんですか?」

「知ってるだろ?悪魔の実の能力者の弱点」

「確か、泳げなくなるんでしたよね」

うわあ…完全にあの世界だ。


「しかしよお、その悪魔の実ってえのはその弱点さえも克服しちまうんだよ」

「え!?本当っすか!?」

「何せ、噂じゃ海を操る能力だからな。ウミウミの実…海軍が血眼になって探してるって話だ」

「そ、それって…」


チートじゃん!!!!!!!!

思い出さなくったって分かってる。私はそれを食べてしまったのだ。

ただでさえ、とんでもない世界にやって来たっていうのに。あろう事かチート能力まで付与されるとは。

別に前の世界と同じように特別な能力つけなくったって良いのに!!
そして更にまずいのは厄介な人に目を付けられたという事だ。


どう考えても、あのおじさんは赤犬だ。三大将の1人のあの人だ。

死ぬ。普通に考えて死んでしまう。というか、こんな近い島に居て私は大丈夫なのだろうか。


これからの事を考えると、更に頭痛がしてきた。

…ちなみに、身体は最初の世界にいた頃と同じ、大人へと戻っていた。もう突っ込まないからな。

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キンセンカの涙 -if- もし夢主がopの世界にトリップしたら…
お待たせ致しました!父猫さん、リクエストありがとうございました。
若いキャラどころか、ルフィまで登場しないっていう…絶対に需要なさそうな内容になってしまいました。
でも書いてて凄く楽しかったです!!もう続きを書きたいくらい!!!
ルフィ一味はもちろんの事、いろんなキャラと絡ませたいですね。個人的にトラファルガーさん大好きなので、色々と話を考えては楽しんでいます。
チート能力も一度で良いから書いてみたかったんです。
海を操る能力ですから、能力者はひとたまりもないでしょうね。はははっ。
泳ごうと思えば、自分の身体の周りだけ海を反発させれば泳いでるように見えますし、能力者ではないって人の目を欺けられます。(妄想です)
そして必死で隠すんですよ。けれど海軍の能力者相手にすごいピンチになって、仲間も危機で、そんな時に力を使うっていう。
後は、赤犬が主人公を探して近くにいるってもんだから、黙って去ろうとした所で仲間に見つかるっていうね!激しい妄想が私の中で巡り回っています。
あとがきが長くなりましたが、ここまで読んでくださってありがとうございました。


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