(キンセンカの涙、番外編のお話です)
こんにちは、モブAの私です。
今日は私のクラスメイト、みょうじなまえについて述べさせていただきます。
さて、まずはみょうじなまえさんの外見の特徴についてお話します。
ぶっちゃけると顔は普通です。
彼女より可愛い子は学校の半数存在しますし、彼女より可愛くない子も半数存在します。
つまり、みょうじなまえさんの容姿は【The 平均】というわけです。
ちなみにスタイルも普通ですが、最近二の腕が太くなったと嘆いているようです。
そんな彼女はとても大人っぽいです。
決して、クールで一匹狼な感じではありません。彼女も人並みにクラスの皆と騒いだりしています。
けれど、なんとなく大人の余裕を感じさせるのです。
それはクラスメイトとして一緒に過ごしてきて、おそらく大半の人が感じているのではないのでしょうか。
とくに多感な女子はみょうじなまえさんの独特の雰囲気にすぐ気づきました。
彼女はいつも黒子テツヤ君と話しています。
黒子君とは、彼女の席の隣にいる極端に影の薄い男子生徒です。
未だにクラスの誰もが彼の存在に驚かされます。みょうじさんも例外では有りません。
けれど、休み時間には大抵二人で話しています。
そんな仲の良い二人に噂が立つ事は…ありませんでした。
むしろ、みょうじさんと付き合っているのではないかとクラス中思っているのは、彼女の後ろの席にいる巨人の方です。
その巨人の名前は紫原敦君。私は未だに彼と喋った事がありませんが、いつも寝ているかお菓子を食べています。
何故か昼休みになると、みょうじさんと紫原君は一緒に売店に行きます。毎日です。
もう皆、あの二人は付き合っていると思ってます。
みょうじさんは否定するのですが、説得力が全然ありません。
なぜなら最近、みょうじさんと黒子君が喋っていると、紫原君が眉間に皺を深く寄せて二人を睨んでいるのです。
私が思うに、黒子君は紫原君が睨んでいる事に気づいてますが、話をやめようとしません。
恐らくクラスの皆は信じてくれないでしょうが、三角関係が成り立っちゃっているんだなと思います。
みょうじさんに教えてあげようと思いましたが、面白そうなので止めておきました。
ちなみに、みょうじなまえさんをとりまく恋愛事情はそれだけではありません。
彼女には青峰大輝君という浮気相手がいるようです。
私は実際に見た事ありませんが、どうやら6組男子のようです。
6組といえば、いわゆるDQN組でして、他のクラスから恐れられています。
その中でも青峰君は中心的人物のようで、そんな人と浮気関係だなんて、つくづくみょうじさんって凄いなと思います。
そんな、何か特殊なフェロモンでも出てるんですかと問いたくなるようなみょうじさんですが、女子に僻まれる事もあります。
紫原君と青峰君はかっこいいです。二人とも規格外の身長ですが、運動神経も抜群で、おまけに顔も良いですからモテないはずがありません。
黒子君も影が薄いので表立った噂は立ちませんが、可愛らしい顔をしています。
そんな男子達と噂になっているみょうじさんですが、ついこの間、女子に呼び出されているところを発見しました。
私はとても心配になり、急いでその後を追ったのです。
テンプレ通り、校舎裏まで連れてこられたみょうじさんは、女子から理不尽な事を言われてました。
「紫原君といつも一緒にいて目障りだ」
「青峰君までたぶらかすな」
「調子に乗るな、1人だけ出しゃばるな」
「バスケ部マネージャーなのも男目当てなんでしょう」
「誰もお前みたいな平凡な女を相手にしない、馬鹿なのかお前は」
とりあえず、要約すると彼女達は『羨ましい』と言っているようです。
みょうじさんは取り乱す事無く(いえ、本当はちょっと焦っていたようですが)笑顔で対応しました。
「ならば、マネージャーになればよい」と。
そんな話してるんじゃねえよ!、と女子らしくもない暴言を彼女達は吐きます。
「なぜ?今は深刻なマネージャー不足だから大歓迎だ」とみょうじさんは続けます。
まわりの女子は口を閉ざしました。
無理も有りません、男子バスケ部マネージャーと言えば超スパルタで有名なのです。
廊下にはマネージャー募集のチラシが張ってあるのですが、そこに書かれてある事が
【朝練・夕練毎日参加する事
選手より先に来て準備を済ませておく事
休みは月1
事前連絡無しに休んだら即退部
etc…】
遊びたい盛りの中学生には少し酷です。
影で女子を呼び出すような彼女達には、到底無理な内容でしょう。
みょうじさんも、それは分かっていたようです。
しかし残念ながら、女子達は更に言いがかりを言い始め、みょうじさんに平手打ちをかましました。
さすがにビックリです。
情けない事に、私はその場から立ちすくんで動けませんでした。
空気が最悪になり、彼女達はヤケになってさらにみょうじさんに殴り掛かろうとしていました。
その時、みょうじさんは携帯を取り出して、ボタンを三つ押し、何処かにかけます。
「お前、こんな時になにしてんだよ」と、女子の暴言をみょうじさんは無視し、口を開きました。
「あ、警察ですか?」
その場にいたみょうじさんを覗く全員が、ぎょっと目を見開きました。
「今、学校で暴力を受けています。助けてください。…はい、そうです。…はい」
「おい、てめえ何してんだよ!」
「すぐ来てくれるんですか!なるほど、近くにパトカーが…ありがとうございます!」
「!!!?」
女子の皆さんはパニックです。口をパクパクさせています。
「だ、大丈夫だよ。警察が学校に入れるわけないし」
「そんなわけないじゃないですか」
すかさずみょうじさんが口を開きます。
「学校は治外法権じゃないんですよ」
そう、にこりと笑ってます。
辺りに沈黙が漂い、「ねえ、もう行こうよ」と1人が言えば、そうだねと全員が同意しました。
「警察呼ぶとか馬鹿じゃねーの!先生にわざわざ怒られるとか!」
まるで捨て台詞のように、でも中学生らしい言葉で1人の女子生徒がそう言いながら去って行こうとしてました。
するとみょうじさんは携帯を操作し、女子達に見せつけるように前に出しました。
『あんた、調子に乗ってんじゃねーよ!』
「!!?」
『紫原君といつも一緒にいて目障りー』
『青峰君もたぶらかそうとしてさ!』
『調子にのんの止めてくんない?マジでうざい。1人で出しゃばろうとしてさー必死すぎてウケるw』
まさに、先程の彼女達の暴言です。どうやら録音していたみたいです。
「内申点が面白い事になりそうですね」
そう言うみょうじさんは最高にかっこよかったです。
女子達は怒るというより、絶望と言いますか、泣きそうな顔をしていました。
それに合わせて警察も来るのです。もう大変な事です。
するとみょうじさんは笑って言いました。
「もう変な言いがかりをしなければ、これを先生に聞かせたりしないんで大丈夫ですよ」
さて、女子達がいなくなった後で、やっと私はその場から動く事が出来ました。
すぐさまみょうじさんの元へと急ぎます。そして、助けて上げられなかった事に謝りました。
「いいよいいよ、あんな場面は誰だって怖いもん。私だって腰が抜けそうだった」
そんな、あんなに勇ましく対応していたみょうじさんが腰を抜かすなんて。
と、思っていたのですが、本当に彼女は腰を抜かしていました。
「ビックリしたーマジでビックリしたー!寿命が1年縮んだ!」
彼女はそう言って笑ってました。
ちなみに電話をかけた先は警察ではなく、時報だったようです。
以下をまとめると、とりあえずみょうじなまえさんは凄い人でした。
なんだか、私達子供の中に、大人が紛れ込んだような、そんな安心感がある人です。
来年も、この人と同じクラスになりたいな、なんてちょっとだけ思った私、モブAでした。
-----------------------------------
小松さん、リクエストありがとうございました。
キンセンカ番外編、別キャラ視点との事で、誰にしようかとても悩みました。
どの人にしても、ネタバレっぽくなってしまい、その結果、モブさん大活躍…。
小松さんごめんなさい、想像してたのと全然違うかもしれません。いや、絶対に違うでしょうね;
企画でのモブの活躍っぷりがヤバイです。
あんな格好良い男達を相手にしていたら、そのうち問題も起こるだろうなと思い、お約束の展開でしたが書いてて楽しかったです。
なんだか今回の話は主人公がちょっと格好良いですが、普段はこんな事できる度胸なんてありません。企画補正です。たぶん。