1-4 「深瀬君ってこの高校に知り合いとかいるの?」 「何人かいるよ。予備校の友達とか、中学のとき部活の試合で知り合った奴とか」 深瀬は愛嬌のある笑顔で答えた。 やはりイケメンは顔が広いな。いや顔そのものは小顔なんだけども。 「いいなぁ。俺全然知り合いいなくてさぁ、結構緊張してる…。」 我ながら完璧なファーストコンタクトだ!人見知りの俺にしてはよく頑張ったぞ。 「そうなんだ」 「…。」 前言撤回。 やばい、ものの30秒で会話が終わった。ここから会話を広げられるコミュ力が俺にはない…。 自己嫌悪に陥っていると、担任の先生が教室に入ってきた。今日一日の流れを説明するらしい。 *** …眠い。 寝不足だったせいか、急激に眠気が襲ってきた。先生の話も全く入ってこない。 「福田君なんで変顔してんの?」 「俺が1人で変顔をするようなおちゃめな人間に見える?」 プリントを回すために後ろを向いた深瀬に話しかけられた。あいにく俺は変顔をしているのではなく、眠気を我慢していたら白目になってしまっただけだ。 というか今日初めて知り合った人の顔を見て変顔とか言うのは失礼すぎではないか…? そりゃあ、お前ぐらいのイケメンから見たら一般人なんて全員変顔に見えるのかもしれないが。 「なんでも良いけど、これ早く受け取って」 「あ、ごめん」 「ちゃんとプリント回せよ。よろちくね?」 深瀬は、いたずら好きな子供がするような笑みを浮かべてそう言った。 聞こえてたのかよ!少しでも良い奴と思った自分が悔しい。しかもこのタイミングで言ってくるとか相当イイ性格してるぞこいつ。 「見かけによらず意外と黒い部分あるね」 「ありがとう。人は見た目で判断しちゃいけないって言うしね」 いや褒めてねーよ。 徐々に本性を現しはじめた深瀬だったが、イケメンで完璧な彼よりもこっちの方が幾分か親しみやすいと思った。 なによりその爽やかなイケメンフェイスから出てくる悪い笑みがまた良い。 6 目次しおりを挟む |