5-7 *** 「宮永さんがやってる琴って生田流?」 「そうそう!深瀬君詳しいね〜」 「実はばあちゃん家に琴置いてあるんだよね」 帰り道、俺の前を歩く2人は楽しそうに会話をしていた。話の内容が専門的すぎて、俺の入る隙なんてこれっぽっちも無い。 深瀬と宮永さんが不仲かもしれないと、少しでも考えた自分が馬鹿みたいだ。 なんか友達に友達を紹介したら、自分より仲良くなってしまったみたいな。そんな気持ち。 俺、すごい心の狭い奴みたいだ。 はぁ…。また自分の嫌な部分が出てきてる。 体調は悪いし、頭もクラクラしてきた。 …ん?本当にやばいかも。 視界が歪んでいる。冷や汗は止まらない。 朝から体がおかしいとは思っていたが、まさかこんな時に悪化するとは。 2人に怪しまれないように、フラフラになりながらも必死に歩いた。 あともう少し歩けば、3人が分かれる交差点に出る。そこまで我慢だ。 なんとかもってくれ… しかし俺の貧弱な体は限界だったらしく、一気に力が抜けて膝から崩れ落ちた。 「福田?…どうした?」 前を歩いていた深瀬が俺の異変に気が付いた。血相を変えて近づいてくる姿に少し嬉しいとか思ってるうちは、まだ大丈夫なのかもしれない。 「おい、大丈夫か…?」 「だ、だいじょぶ…。少しクラっとしただけ…」 「大丈夫そうに見えないけど…」 「少し、休憩してくから…先帰ってて…」 「はぁ?こんな顔色悪い奴置いていけるかよ」 「でも…」 心配してくれるのは嬉しいが、宮永さんもいるし迷惑はかけたくない。 顔を隠すように膝を抱えて俯くと、深瀬が目線を合わせるように隣でしゃがんだ。 背中に手を置かれ、下から顔を覗き込まれる。 「顔真っ青だな…。日も暮れそうだし、家まで送る」 「い、いいっ!大丈夫だから!」 俺が勢いよく顔を上げたため、深瀬は少し驚いた顔をした。 まずい。そんなことされたら、俺が施設にいることがバレてしまう。 44 目次しおりを挟む |